2003年度土木学会認定技術者資格審査の認定者発表

平成15年2月18日に韓国大邱市地下鉄における列車火災事故を記憶されている方も多いと思う。JSCE.jpサイトにもこれに関連した投稿が2件あったように思います。
この事件を受けた回答が、国土交通省より「地下鉄道の火災対策検討会検討結果概要」(総務省消防庁)として、平成16年3月29日付けで同省のホームページに公開されました。
この中で、基本的考え方として「地下鉄道の不燃化を進めるとともに、万一火災が発生した場合に、旅客が地上まで安全に避難できる対策を総合的に講じることを基本とする。なお、今回の検討に当たっては、これに加え、消防活動を支援するとの観点も考慮した。」、また、想定火災として「現行の基準では、車両床下機器からの出火やライターによる放火等を想定しているが、これに加え、列車内や売店等でのガソリンによる放火(大火源火災)を想定」を上げ、以下の3つの視点から「車両の火災対策」、「地下駅・トンネルの火災対策」、「旅客の避難誘導等に関する対策」具体的な方策を定めるとともに、駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、駅と消防機関が共有や定期的に、両者が連携した訓練を実施することを定めている。
具体的な内容は、国土交通省の発表資料を参照されたい。
独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦
1.プレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工法
大保ダムにおける沢処理工はCSG工法で施工され、その堤体表面はプレキャストコンクリート型枠で施工されていることを前回紹介した。今回はこれについて詳細に説明したい。実は、誰にでも考えつきそうなことではあるが、プレキャストコンクリート部材を堤体表面の型枠として利用して、その背後に堤体コンクリートを打設して両者を一体化し、プレキャストコンクリート部材も堤体の一部として使用することは、「ダムにおいて」及び「大規模に」という枕言葉をかぶせれば、かなり珍しいことなのである。先例としては宮ヶ瀬ダムの副ダム(堤高34.5m)において下流面に景観向上を兼ねて特殊な形状をしたプレキャストコンクリート型枠を使用したものがある。しかしさらに「汎用化」という枕言葉をかぶせれば私の知る限りにおいて本邦初演なのである。この工法は内閣府沖縄総合事務局ほかが開発したもので現在特許申請中と聞く。
2.プレキャストコンクリート型枠の形状等
プレキャストコンクリート型枠はL字型でダム軸方向に長さが3m、高さ1m、幅0.55m、重量は1.56tで施工中のダム堤体上からクレーン、バックホー(移動式クレーン仕様)等で容易につり込み、据付けが可能である。もっともこの形状は今回の沢処理工に関して決定されたもので、ダム毎にL字型の傾斜角度も含めて変更できる。据付けは、ダム軸方向、上下流方向、標高の三方向に正確かつ容易に行われるよう、各種の工夫が行われている。L字型型枠の背後に保護・遮水コンクリートを打設し、その背後(下流側)にCSGを打設している。
このサイトでは、図や写真が表示できないのが残念であるが、沢処理工に関しては沖縄総合事務局北部ダム事務所のホームページを参考にされたい。
3.プレキャストコンクリート型枠を採用する利点
(1)施工の安全性向上
従来、コンクリートダム堤体の表面部分は、木製又は鉄製の型枠を設置し、そこに堤体コンクリート(耐久性、遮水性に優れた外部コンクリート)を打設していた。このため、型枠の設置、取り外しに多大の手間がかかるとともに、堤体の外部における作業も必要となり危険な要素を含んでいた。プレキャストコンクリート型枠では、そのようなことが無く施工の安全性が大幅に向上する。
(2)施工が容易、施工時間の短縮
あらかじめ製作しておいたプレキャスト型枠を設置するため型枠設置時間を大幅に短縮できる。これはRCD工法CSG工法など同一標高レベルに短時間に大量のコンクリートやCSGを打設する工法の場合、著しく有利になる。
(3)型枠経費の節減
プレキャストコンクリート型枠は専門の工場で製作されダム現場に搬入される。プレキャストコンクリート型枠を製作するための鋼製型枠は、繰り返し使用(100回以上)出来るので、他ダムへの転用が可能である。実は他ダムに鋼製型枠を転用することが重要で、このことにより型枠経費が大幅に削減されると見込まれる。ケーブルクレーン、クラッシャーなどで官貸与というシステムがあるが同じ発想により経費を削減するのである。
(4)コンクリート表面の品質確保
プレキャストコンクリート型枠は専門の工場で製作されるのでその品質の信頼性が高い。
(5)ダム建設コストの節減
以上のことより、ダム建設コストが節減されることが期待される。
4.プレキャストコンクリート型枠導入の経緯
このように良いことづくめの工法(多少の反論はあろうが)が何故、今まで導入されなかったのであろうか。過去に、ダムの堤体表面処理に手間がかかるため、従来の標準的な型枠工法に加え、次のような試みもなされたことがある。
(1)余裕幅工法
RCC工法による下流側斜面においては、特に米国において、数mの余裕幅を持って型枠なしでコンクリートを打設した。
(2)スリップフォーム工法
大型の走行車によりスランプの小さいコンクリートを高さ数10cmの壁状に自立するよう締め固め、型枠とする。
(3)特殊形状なプレキャストコンクリート型枠
宮ヶ瀬ダムの副ダムに見られたような例である。また外国では、プレキャスト型枠同志が固く連結されるよう工夫した例もある。
(4)ダム用自動式型枠
建設省の建設技術評価規定に基づき、昭和63年に10グループに対してダム用自動式型枠が認定されている。これは、内装された上昇装置により型枠自ら上昇できるとともに、油圧ジャッキにより型枠自ら脱型動作を行えるものであり、その操作は装置外より操作盤にて行うことができるものである。しかし、この装置は大型すぎて経費が高いことと、他ダムへの転用について明確な保証が無いので、ほとんど実用化されていない。
今回プレキャストコンクリート型枠が実用化できたのには、次のような理由があろう。
(1)プレキャストコンクリート型枠による通廊施工の経験
プレキャストコンクリートによる通廊の実施経験によりプレキャストコンクリート型枠への信頼感が向上した。
(2)プレキャストコンクリート型枠を長さ3m、L字型形状とすることにより小形化した。特にL字型にして、水平部を埋め殺すことで、据付けコンクリート打設時の安定感が向上した。
(3)堤体がCSGで築造されるため、特に大きな強度を必要としない。このためプレキャストコンクリート型枠とコンクリートおよびコンクリートとCSGの間の付着強度は特に問題となることは無い。付着強度については今後、ボーリング資料により検証することとしている。
この沢処理工における施工状況を検討したうえでの判定であるが、今後の台形CSGダムの表面型枠はプレキャストコンクリート型枠によることとなろう。いわばここではプロトタイプの試験を行っているのである。台形CSGダムでの経験が深まればさらに通常の重力式コンクリートダムへの適用も可能となろう。ダム建設コスト縮減の一手段として、この工法の今後の発展を期待しているところである。
この工法の導入にあたっては、プレキャストコンクリート型枠による通廊施工の経験が大いに役立っている。
国土交通省北陸地方建設局が建設した宇奈月ダムで採用されプレキャストコンクリート型枠による通廊施工法(北陸地方建設局、ほかの特許工法)は、その鋼製型枠の転用を通じて、平成12年以降、16ダムで採用されることとなり、標準工法化しつつあり、建設コスト縮減と安全施工に大いに貢献してる。
また、エレベーターシャフト、機械室等にプレキャストコンクリート部材を使用する工法も普及しつつある。これらの工法の紹介は省略するがCSG工法とプレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工法の2つの工法の紹介によりダム建設において各種の技術開発が着実に実施されていることを紹介した次第である。
大保ダムを見学して(第2回)―CSG工法の紹介― (2004年3月30日付第2回記事)
大保ダムを見学して―沖縄の渇水と技術開発の紹介― (2004年3月22日付第1回記事)
施工編2.3表2.3.1コンクリート表面における塩化物イオン濃度C0について
高さ方向を海岸からの距離に変換していますが、根拠となるデータ等は
公表されているのでしょうか。その場合は出典先を教えてください。
構造性能照査編7.4.5 式7.4.6のDdを算出するときにひび割れ幅を
考慮していますがこれも同様に教えてください。
全国大会の応募締め切りも近いですが、職場班ニュース転送です。
支部行事が、中部、関西、四国しか載っていないが、
それでいいのか?他地区は? という気もします。
土木学会職場班メールニュース 第24号=====================2004/3/31
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土木学会職場班班長各位
土木学会職場班メールニュース第24号をお送り致します。
ご多用中恐れ入りますが、貴職場班メンバーにご紹介下さるようお願い申し
上げます。
土木学会員・支部部門
■トピックス■
1.平成16年度全国大会実施要領
期日・会場:9月8日〜10日・愛知工業大学および豊田スタジアム
講演申込締切:電子申込 4月2日17時
紙面申込 (郵送)4月1日消印有効・(持参)4月2日17時
詳細: http://www.jsce.or.jp/committee/zenkoku/h16/index_h16.html
2.16年度会費請求のご案内
2月末に会費請求書をお送りしました。
会費を滞納されますと、全国大会講演申込等に支障を来たす恐れがあり
ますので、お早めにお納め下さるようお願い申し上げます。
3.会員継続のお願い
昨年12月上旬に、本年3月卒業予定の学生会員宛に会員継続依頼の
ハガキをお送りしました。ご卒業後も是非会員を継続されるようお願い致
します。
ご回答いただけない場合は全国大会講演申込等に支障を来たす恐れが
ありますので、是非ご回答下さい。
詳細: http://www.jsce.or.jp/outline/admission/kaitou-s.html
4.会費・論文集購読料の自動引落のご案内
会費・論文集購読料のお支払には、便利な自動引落を是非ご利用下さい。
詳細: http://www.jsce.or.jp/outline/admission/member-d.pdf
5.土木学会の交流サイト
http://jsce.jp/
6.土木学会論文集定期購読者募集
http://www.jsce.or.jp/outline/admission/invite.html#ronbun
7.新刊案内
http://www.jsce.or.jp/publication/new/new2003.html
■土木学会誌叢書2 合意形成論−総論賛成・各論反対のジレンマ(3月発行)
■Concrete Library International No.42(1月発行)
■構造工学シリーズ14 FRP橋梁−技術とその展望−(1月発行)
8.継続教育制度
■土木学会認定継続教育(CPD)プログラムの申請手続きのご案内
http://www.jsce.or.jp/opcet/cpd/sinsei.htm
■土木学会認定継続教育(CPD)プログラムの実施予定
http://www.jsce.or.jp/opcet/cpd/cpdhpprogindex.htm
■Webによる学習サイト開設((独)科学技術振興機構)
http://www.jsce.or.jp/opcet/cpd/jst.htm
■ご案内■
1.本部行事
http://www.jsce.or.jp/journal/kaikoku/
1)第50回構造工学シンポジウム
期日・会場:4月8日〜9日・日本学術会議(東京)
詳細: http://www.jsce.or.jp/committee/st/journal/h16-0408.htm
2)第6回地震防災技術懇話会
期日・会場:4月9日・土木学会講堂(東京)
詳細: http://donko.civil.tohoku.ac.jp/Multiph.html
3)日本学術会議第23回混相流シンポジウム
期日・会場:8月5日〜7日・岡山大学大学院自然科学研究科棟
詳細: http://donko.civil.tohoku.ac.jp/Multiph.html
2.本部委員会活動
http://www.jsce.or.jp/committee/frameset.htm
1)第32回環境システム研究論文発表会論文等の募集
期日・会場:10月30日〜31日・東洋大学白山キャンパス(東京)
申込締切:全文審査部門・4月5日
アブストラクト審査部門・7月2日
詳細:
http://www.jsce.or.jp/committee/envsys/new/2004bosyu/ronbun-2004.htm
2)応用力学論文集Vol. 7論文の募集
第7回応用力学シンポジウム
期日・会場:9月11日・名古屋工業大学
申込締切:4月16日
詳細: http://www.jsce.or.jp/journal/kaikoku/m200401/kobo/kobo08.htm
3)第29回情報利用技術シンポジウム論文等の募集
期日・会場:10月26日〜27日・土木学会(東京)
申込締切:5月21日
詳細:
http://www.jsce.or.jp/committee/cceips/sympo02/sympo29/29bosyu.html
4)第14回トンネル工学研究発表会論文・報告の募集
期日・会場:11月25日〜26日・土木学会(東京)
申込締切:5月27日17時
詳細: http://www.jsce.or.jp/committee/tun/jtunnel/index.htm
5)第41回環境工学研究フォーラム発表論文の募集
期日・会場:11月25日〜26日・JA・AZMホール(宮崎)
申込締切:審査付論文セッション・5月28日
企画セッション・5月28日
自由投稿発表セッション・6月25日
新技術・プロジェクトセッション・6月25日
詳細: http://www.jsce.or.jp/committee/eec/41forum.pdf
6)「建設マネジメント研究論文集」審査付き論文の募集
申込締切:5月31日
詳細: http://www.jsce.or.jp/committee/cmc/cmc_m/cmc28.htm
7)第18回風工学シンポジウム発表論文の募集
期日・会場:12月1日〜3日・日本学術会議講堂(東京)
申込締切:6月1日17時
詳細: http://www.cvg.ynu.ac.jp/jscewind/windsymp18.htm
3.支部行事
1)中部支部
★技術講座「道路構造物の維持管理を考える」
期日・会場:4月13日・名古屋市工業研究所ホール
詳細:
http://www.gifu-u.ac.jp/~kobat/jsce-chubu/road/ijikanri02.html
★技術講座「環境に関する技術講座シリーズ」(1)
建設リサイクルと土壌汚染対策
期日・会場:5月18日・名古屋市工業研究所ホール
詳細: http://www.gifu-u.ac.jp/~kobat/jsce-chubu/kankyo/envtech01.
html
★技術講座「環境に関する技術講座シリーズ」(2)
地球温暖化と自然再生
期日・会場:6月22日・名古屋市工業研究所ホール
詳細: http://www.gifu-u.ac.jp/~kobat/jsce-chubu/kankyo/envtech01.
html
★土木技術者・研究者による出前講座
詳細:
http://www.jsce.or.jp/branch/chubu/demae/03demae/03demaeinfor.htm
2)関西支部
★第77回通常総会
期日・会場:5月12日・建設交流館グリーンホール
詳細:
http://www.jscekc.civilnet.or.jp/secretaries/general/2003/sokai77.htm
★平成16年度関西支部年次学術講演会
期日・会場:5月22日・立命館大学びわこ・くさつキャンパス
詳細:
http://www.jscekc.civilnet.or.jp/secretaries/planning/nenkou/2004_rits/kaisa
i.htm
★講習会「歴史と地域に学ぶ川づくり」
期日・会場:6月14日・大阪市立大学文化交流センター
詳細: http://www.jscekc.civilnet.or.jp/class20040315/
★平成16年度施工技術報告会 主題「最近の建設技術と施工事例」
講演の募集
期日・会場:2005年1月21日・建設交流館
申込締切:7月9日
詳細:
http://www.jscekc.civilnet.or.jp/secretaries/seminars/2004/sekou040709.htm
3)四国支部
★環境建設フォーラム「社会基盤整備における大学の役割」
期日・会場:4月8日・松山全日空ホテル南館サファイアルーム
詳細:
http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~cee4/jsce.shikoku.ehime/h16kanken_forum.pdf
★高知県地震防災研究会・2003年度技術発表会
「南海地震に備える-?」-市民のためのやさしい耐震診断-
期日・会場:4月14日・高知工業高等専門学校視聴覚教室
詳細: http://www.netwave.or.jp/~doboku7/kizi/03004.html
★平成16年度通常総会
期日・会場:5月14日・三翠園ホテル
詳細: http://www.netwave.or.jp/~doboku7/kizi/03007.pdf
■会員課から■
1.住所変更はお早めに
学会誌等がお届けできなくなりますので、住所変更届(下記PDFファイル
をご利用下さい)に必要事項を記入の上、FAXにてお知らせ下さい。
http://www.jsce.or.jp/outline/admission/form.pdf
2.会員増強にご協力を
「個人会員・法人会員の特典」「学生会員の特典」を作成しました。
入会勧誘にご利用下さい。
http://www.jsce.or.jp/outline/admission/invite.html
3.土木学会インターネット入会申込受付サービスのご案内
入会申込には、インターネット入会申込受付サービスをご利用下さい。
http://www.jsce.or.jp/outline/admission/mem_p_f.html
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配信に関する手続き、ご意見等は以下のアドレスにお願いします。
<配信先変更・ご意見・ご感想、配信に関するお問合わせなど>
mailto:shokuba-mn@jsce.or.jp
[土木学会職場班メールニュース]
発行:土木学会 会員・支部部門
(〒160-0004 東京都新宿区四谷1丁目(外濠公園内))
独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦
1.大保ダムについて
現在、内閣府沖縄総合事務局北部ダム事務所により建設中の大保ダムは、沖縄北西部の治水と水資源開発を目的としたもので、完成すれば福地ダムに次ぐ沖縄で二番目に大きい貯水容量を持つダムになる。
大保ダムは本ダムと脇ダムという大きな二つのダムが建設されるというちょっと珍しい計画となっている。
本ダムは、堤高77.5m・堤体積410,000m3の重力式コンクリートダムで大保川本川を締切るダムである。脇ダムは、このダムによる貯留水が分水嶺の低標高部より流域外に流出することを防止するためのもので、堤高66.0m・堤体積1,750,000m3のロックフィルダムである。
これらのダムにおいても色々な技術開発が行われているが、実は今回紹介するのは、この両ダムの構造物に関して直接実施されているものではなく、付帯する構造物に使用されている技術開発である。なお、当情報交流サイトのシステムでは図や写真が表示できないのが残念であるが、図等の詳細は沖縄総合事務局北部ダム事務所のホームページ(http://www.dc.ogb.go.jp/hokudamu/)を参考にされたい。
2.CSG工法
CSG工法という工法を御存知であろうか。CSGとは、Cemented Sand and Gravelの略で、セメントで固めた砂礫を意味し、ダムなどの構造物を造る材料として最近注目されているものである。
従来、ダムはその材料によりコンクリートダムとフィルダム(大規模なものは、一般的にロックフィルダム)に大別されていた。CSG工法では、コンクリートダムには使えないような低品質の材料に、若干のセメントに水を加えて固化させることにより、堤体材料として活用を図るものである。セメント量は、60〜100kg/m3の超貧配合である。
日本が開発したRCD(Roller Compacted Dam Concrete)工法におけるセメント量(この場合、セメント+フライアッシュの合計である)で、110〜130kg/m3、普通の重力式コンクリートダムの内部コンクリートのセメント量は140〜160kg/m3(最大骨材寸法Gmax 150mmの場合)であるから、セメント量の少なさが理解できると思う。
セメント量が少ないので当然、材料強度が小さくなる。このため、材料強度が小さい場合に適合する堤体形状として台形が提案されている。いわば、材料も形状も重力式コンクリートダムとロックフィルダムの中間なのである。
3.台形CSGダム
台形CSGダムは、堤体材料としてCSGを使用し、表面には耐久性確保や遮水を目的として、上流側には遮水・保護コンクリート、天端および下流側には保護コンクリートを配置する。台形CSGダムは、弾性体として設計するため、堤体内に放流設備や監査廊、堤頂部に非常用洪水吐きなどを設置することが可能となる。
この形式のダムが最初に使用されたのは、国土交通省中部地方整備局長島ダムの仮締切ダムにおいてであり、次いで富山県の久婦須ダムや国土交通省北海道開発局の忠別ダムなどの仮締切ダムで採用されたが、いずれも堤高は15m程度以下の小規模なものであった。現在では、貯水池内の貯砂ダムなどで採用されるに至っているが、まだ本川を締切るダムには採用され建設されている例はない。しかし、沖縄総合事務局の億首ダム(堤高39m)においては台形CSGダムの形式採用が承認され、北海道開発局のサンルダム(堤高50m)、国土交通省九州地方整備局の本明川ダム(堤高64m)での採用が検討されている。
RCD工法に続く、日本発の新ダム建設工法として世界的に注目を集めつつある。
4.CSG工法の特徴
次のようなことが特徴となっている。
(1)CSGダムは、コンクリートほど材料強度を必要としないので、河川砂利、風化岩や掘削廃棄岩を有効利用できる。
(2)基礎地盤の強度や変形性に対して許容範囲が広い。
(3)骨材製造過程を大幅に簡略化できるため、施工時の仮設備が省略できる。
(4)全体掘削量や廃棄岩量が減少するので、環境への負荷が小さくなる。
(5)以上のことより建設コストが削減される。
ダムへの反対運動は根強いものがあるが、その原因について私は、次のようなものがあると思っている。
(a)自然環境の改変への反対(貯水池、道路、原石山、流況変化、水質変化等)
(b)社会環境の改変への反対(水没家屋、農地、地域分断、人口減少等)
(c)治水、利水計画への反対(必要性、効果の判定、代替手法等)
(d)財政的負担(負担の大きさ、費用対効果等)
(e)建設業界、特にゼネコンに対する反感
(f)以上のことを踏まえて、ダム建設の是非に関する民意を直接的に反映させるシステムが無いことに対する不満
CSG工法を用いて築造する台形CSGダムは、以上の原因のうち(a)と(d)の改善に寄与する。
5.大保ダムにおけるCSG工法
大保ダムにおいては次の4ヶ所でCSG工法が使用されている。
表-1 大保ダムにおけるCSG工法ダムの諸元
―――――――――――――――――――――――――――――――
名称 堤高(m) 堤体積(m3) セメント量(kg/m3)
―――――――――――――――――――――――――――――――
沢処理工 30 33,000 60
汚泥貯留堤 16 5,700 80
上流仮締切堤 14 5,200 80
材料山締切堤 13 3,600 80
―――――――――――――――――――――――――――――――
ここで紹介する沢処理工は、小さな沢の低標高部から貯留水が流域外へ流出することを防止するためのダムで永久構造物としての、台形CSGダムの第一号ともいうべきものである。もっとも貯砂ダムでの施工で「こちらが台形CSGダム第一号だ」と主張される方もおられるかもしれないが。
平成15年9月より沢処理工のCSGの打設を開始、外部からの見学者がダムと開く。
堤体表面にプレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工が施工されている。次回は、この紹介をしたい。なお、CSG工法については、多くの論文があるが例えば次を参照されたい。
“藤沢侃彦、吉田等、平山大輔、佐々木隆:台形CSGダムの特徴と現在までの検討状況、ダム技術、No191、PP2〜23、2002年8月”
3月13日に九州新幹線の新八代・鹿児島中央間127キロが開業した。いわゆる整備新幹線5線のうち、1997年10月の高崎・長野間、2002年12月の盛岡・八戸間に続き3番目の開業である。この開業により南九州の経済の活性化や観光事業の振興が期待されている。ただ、これまで新幹線の建設は、たとえば東京・新大阪がまず出来て、次に岡山まで、そして博多へと首都圏から順次伸ばしてゆくのが普通だったが、今回は博多・新八代を飛ばしての開業と言うことで、奇異に感じている方も多いことと思う。
整備五線は全国新幹線鉄道整備法の規定により1973年に整備計画が決定された。ところがオイルショックとそれに続く総需要抑制策により着工の見通しが立たなかった。1970年代後半になって地域住民の方々やその代表者である知事・議員等からの早期着工の要望が強く出されるようになり、その建設の是非について1979年度に大掛かりな調査が行われた。その内容は、建設費の見直しやその低減策、需要予測、線区ごとの収支見通し、新幹線の開業が地域に与える経済的・社会的効果の程度、さらには沿線地域の振興策にまで及んだ。それぞれの結果をここに述べる余裕はないが、全体としての結論は、整備新幹線の地域に与えるインパクトは大変大きいが。建設費も大きいことからその資本費負担を軽減する方策が必要である。また地域の経済を活性化するには新幹線にだけ頼るのではなく、適切な地域振興策を同時に進める必要があるというものであった。
整備新幹線の建設についての政府・与党申合せでは、この成果を大幅に取り入れ、着工の前提として、(1)建設費の財源を確保するため、国費の他に、本当に新幹線が必要と考える住民の意思を反映させて地方公共団体の負担も考えること、(2)新幹線と並行する在来線は新幹線の開業により大幅に輸送量が減るので、これまで通り運営することは問題があるから、廃止するか別の組織に移管して合理化策を考えること、(3)環境アセスメントを行って沿線住民の理解と協力を得るようにすること、などが示された。その後、財源の確保やJR各社との問題点を整理し、この条件がまとまったところから着工することになったものである。
この新八代・鹿児島中央間も当初は、新幹線用の橋梁やトンネル、盛土などの構造物を造り、その上に在来線と同じ幅の軌間(ゲージ)の線路を敷いて在来線の特急列車を走らせるスーパー特急方式が考えられていたが、博多・新八代間についても条件が整って着工することになり、フル規格と呼ばれる軌間1435ミリの新幹線としたものである。博多・新八代間が完成するまでは、乗客の乗り継ぎを考えて在来線から新八代駅にアプローチ線を造って同じホームでの乗り換えができるようにしてある。
いずれにしても、この新幹線が安全・大量輸送交通機関としての使命を果たし、地域の発展に役立つことを願うものである。
第38回 空気調和・冷凍連合講演会
テーマ『冷凍空調システムの環境調和技術』
開催日 2004年4月14日(水)〜16日(金)
会 場 東京海洋大学 海洋工学部(東京商船大学) 越中島会館講堂
共催 空気調和・衛生工学会,日本冷凍空調学会,日本機械学会(幹事学会)
協賛 エネルギー・資源学会,化学工学会,可視化情報学会,計測自動制御学会,高圧ガス保安協会,低温工学協会,電気設備学会,土木学会,日本エネルギー学会,日本音響学会,日本空気清浄協会,日本建築学会,日本原子力学会,日本混相流学会,日本太陽エネルギー学会,日本鉄鋼協会,日本伝熱学会,日本熱物性学会,日本燃焼学会,日本ボイラ協会,日本流体力学会
開催日 2004年4月14日(水)〜16日(金)
会 場 東京海洋大学 海洋工学部(東京商船大学) 越中島会館講堂
〔東京都江東区越中島2-1-6 電話(03)5245-7300(代)〕
http://www.kaiyodai.ac.jp/Japanese/index.html
参加登録費 会員3,000円,会員外4,000円,学生 無料(当日会場にて受付)
講演論文集 定価4,000円(税込)
本行事終了後は講演論文集の販売をいたしませんので,入手ご希望の方は本行事に参加いただくか,開催前に予約申込みをしてください.
懇親会 開催期間中,懇親会を予定いたしております.(会費未定)
問合わせ先 〒160-0016 東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館5階
社団法人 日本機械学会/第38回空気調和・冷凍連合講演会係
電話(03)5360-3502 FAX(03)5360-3508
E-mail:iio@jsme.or.jp(機械学会ホームページ http://www.jsme.or.jp/)
始めまして、小野と申します。
1850年以前、外国からの影響を受けない時代に作られた観音開きの木製閘門を捜しています。もしどこぞで保存されているものがあれば是非訪問したく思います。
150年もの昔、文化の交流のなかった日本と北米で閘門につきどのような技術的共通点があったのかを調べています。私の手元にはナイアガラの滝を迂回するウェランド運河の技術資料が集まっています。
どなたか同じ分野を研究されておられる方、情報交換をしませんか?
私のメールアドレスはshinio2000jp@yahoo.co.jpです、ご連絡お待ち致します。小野真一
独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦
1.はじめに
2004年3月12日、沖縄総合事務局が沖縄県国頭郡大宣味村に建設中の大保(たいほ)ダムを見学した。その時の見聞を混じえながら、沖縄の渇水とダム建設における最近の技術開発の例を紹介したい。3回に分けて、今回は沖縄の渇水、次回はCSG工法、第3回にプレキャストコンクリートによるダム堤体表面型枠工法について紹介することとする。
2.沖縄は現在渇水中
沖縄在住の人を除き、沖縄が現在渇水中であることを知る人は少ないであろう。実は私も今回沖縄に行くまで、知らなかった。
平成15年の水源地降雨量は平年値の71%で、平成16年に入っても現在まで少雨傾向で渇水となっている。
沖縄の水源はダムからの取水、河川からの取水、海水淡水化施設の生産水の三本柱となっている。2月の日平均給水量は約400,000m3であるが河川からの取水量は約89,000m3、海水淡水化施設の生産水は35,000〜40,000m3で取水の大部分はダムに依存している。
ダムは国管理6ダム(福地ダム等)を含め9ダムで総利水容量は74,850,200m3であるが、3月10日現在の貯水率は48.9%で平年値より27.8ポイント低い。9ダムの貯水率が59.6%となった1月23日に渇水対策協議会(第2回目)が開かれ、節水キャンペーンの実施が決定された。
沖縄地方3ヶ月気象予報(3月〜5月)では降雨量は「平年並」となっている。今年の降雨量が「平年並」の場合でもダム貯水率等水源の大幅な回復は難しく、今後の水事情は更に深刻になり安定給水の維持が困難になることが予想され、3月末から給水制限に入る予定という。
以上は北部ダム総合管理事務所のホームページからの資料の要約である。(http://www.dc.ogb.go.jp/toukan/index.htm)
沖縄タイムス(3月12日)によれば復帰後、本島での制限給水は延べ1030日。32年間で約3年は「断水」であったという。
沖縄の民家の屋上には、現在も大きな貯水タンクが必ず設置されていて、沖縄へ初めて来た人には珍しい風景となっているが、給水制限になっても、給水時間に皆、貯水タンクに貯水するため節水効果は少ないとも聞いた。私の記憶では沖縄の渇水は継続時間の長い経年型であることが特徴であり今後の経過を見守っていきたいと考えている。
3.大保ダムにおける技術開発
沖縄の水問題をどのように解決するかについては各種の意見があることと思う。ダムによる水資源開発による解決に限度があることは承知しているが、水資源開発の基幹施設としてダムが大きな役割を果たしていることも事実である。
次回、大保ダムにおけるCSG工法について紹介することとする。