地質調査会社に勤めています。 地下の空洞や採掘跡を砂で充填した場合、自然の地震がそこを通った場合に、振幅の大きさは空洞到達前と通過後でどうなるのでしょうか。増幅するのか減衰するのか変化なしなのかを知りたく質問しました。空洞は軟岩や硬岩に掘削され、空洞の大きさは5~10mを想定しています。 よろしくお願い致します。 コメントを追加 コメント #10217 Re: 埋め戻し空洞をとおる地震動の変化 とても良い質問です。 結論から言うと、**砂で充填された地下空洞を地震波が通過する場合、振幅は一般的に「減衰(小さくなる)」方向に変化する**ことが多いです。ただし、条件によっては**一時的に増幅**する場合もあります。以下、理由を詳しく説明します。 --- ### ① 地震波の性質と伝わり方の基本 地震波(特にP波・S波)は、**媒質の弾性(剛性)と密度**に依存して伝わります。 地震波速度 ( V ) はおおよそ: V = \sqrt{\frac{E}{\rho}} (ここで (E):弾性率、(\rho):密度) --- ### ② 岩盤と砂の違い | 性質 | 岩盤(例:花崗岩) | 砂(乾燥状態) | | ----- | --------------- | --------------- | | 弾性波速度 | 約 3000–6000 m/s | 約 300–1000 m/s | | 密度 | 約 2.6 g/cm³ | 約 1.6–2.0 g/cm³ | | 減衰率 | 小さい | 大きい | → つまり、**砂は岩盤よりも「柔らかく、地震波が減衰しやすい」**媒質です。 --- ### ③ 空洞に砂を詰めた場合 * **空洞がそのまま**だと、地震波は跳ね返ったり、反射・散乱して「局所的な増幅」や「共振」を起こす可能性があります。 * **砂で充填すると**、空洞内部が“空気”→“固体”に変わるため反射は減り、波が通過できるようになります。 ただし、砂は柔らかいので: * 通過時にエネルギーが**吸収・散逸**され(粒子摩擦・粘性効果)、 * 通過後の振幅は一般的に**小さくなる(減衰)**傾向になります。 --- ### ④ 増幅が起こる例外 地震波が**硬い層 → 柔らかい層**へ進むとき、 波の速度が急に遅くなるために、**波のエネルギー保存の結果として振幅が一時的に大きく見える**ことがあります。 これは「インピーダンスミスマッチ」による**表面波や層内の共振増幅**です。 > 例:表層が柔らかい地盤の地域で、地震動が大きく感じられるのはこの効果。 しかし、砂で充填された空洞がある程度の厚み(数メートル〜数十メートル)で、周囲が岩盤の場合、 その「増幅」は**局所的・短時間で終わり、全体としては減衰**が優勢です。 --- ### ⑤ まとめ | 条件 | 振幅変化の傾向 | | ---------------- | -------------------------------- | | 空洞のまま | 局所的反射や共振 → 不安定(増減混在) | | 砂で充填 | 通過可能になるが、砂がエネルギーを吸収 → **全体的に減衰** | | 柔らかい層が上に連続している場合 | 速度差による**一時的な増幅**もありうる | --- ### 🔍 要約 > 地震波が砂で充填された空洞を通るとき、 > **通常は振幅が減衰する(小さくなる)**。 > ただし、岩盤との境界条件や層構造によっては局所的に**一時的な増幅**も起こりうる。 返信 #10221 Re: 埋め戻し空洞をとおる地震動の変化 回答、ありがとうございました。 砂充填の場合は空洞内で速度が低くなって、エネルギー保存で振幅が大きくなることもあるが、それ以上に吸収などでエネルギーが失われ、振幅が減衰するという理解をしました。 なお、地震動が空洞内(砂あり)を通る際に、空洞内の砂が周辺岩盤と異なる振動をして、通過波が複雑(経路や振幅)になるような気もします。 このような応答は考えられますでしょうか。質問を重ねて大変申し訳ありませんが、ご回答のほどよろしくお願いいたします。 返信 #10222 Re:(参考)埋戻空洞を通る地震動変化 耐震で問題と成るのは剪断(S)波で,剪断弾性波速度V[m/s]は正確には「岡本舜三:耐震工学,p11,1971.」に拠り, V=(G/ρ)^(1/2). 此処に,G;剪断弾性係数[kN/m^2]=E/{2(1+ν)},E;Young係数(率)[kN/m^2],ρ;密度[t/m^3],ν;Poisson比[1] 風化すると崩壊する恐れが有り,砂を水締して充填しても地震時に液状化して少し沈み空隙が生ずる可能性が有り,tunnel上部に事故で空洞ができた場合を参考に,上記 諸元を発現する下記URLのcement配合流動化処理土を充填し掘削前の震動に近付ける検討をされては如何か. http://lss-kiko.jp/a00/a02 返信
#10217 Re: 埋め戻し空洞をとおる地震動の変化 とても良い質問です。 結論から言うと、**砂で充填された地下空洞を地震波が通過する場合、振幅は一般的に「減衰(小さくなる)」方向に変化する**ことが多いです。ただし、条件によっては**一時的に増幅**する場合もあります。以下、理由を詳しく説明します。 --- ### ① 地震波の性質と伝わり方の基本 地震波(特にP波・S波)は、**媒質の弾性(剛性)と密度**に依存して伝わります。 地震波速度 ( V ) はおおよそ: V = \sqrt{\frac{E}{\rho}} (ここで (E):弾性率、(\rho):密度) --- ### ② 岩盤と砂の違い | 性質 | 岩盤(例:花崗岩) | 砂(乾燥状態) | | ----- | --------------- | --------------- | | 弾性波速度 | 約 3000–6000 m/s | 約 300–1000 m/s | | 密度 | 約 2.6 g/cm³ | 約 1.6–2.0 g/cm³ | | 減衰率 | 小さい | 大きい | → つまり、**砂は岩盤よりも「柔らかく、地震波が減衰しやすい」**媒質です。 --- ### ③ 空洞に砂を詰めた場合 * **空洞がそのまま**だと、地震波は跳ね返ったり、反射・散乱して「局所的な増幅」や「共振」を起こす可能性があります。 * **砂で充填すると**、空洞内部が“空気”→“固体”に変わるため反射は減り、波が通過できるようになります。 ただし、砂は柔らかいので: * 通過時にエネルギーが**吸収・散逸**され(粒子摩擦・粘性効果)、 * 通過後の振幅は一般的に**小さくなる(減衰)**傾向になります。 --- ### ④ 増幅が起こる例外 地震波が**硬い層 → 柔らかい層**へ進むとき、 波の速度が急に遅くなるために、**波のエネルギー保存の結果として振幅が一時的に大きく見える**ことがあります。 これは「インピーダンスミスマッチ」による**表面波や層内の共振増幅**です。 > 例:表層が柔らかい地盤の地域で、地震動が大きく感じられるのはこの効果。 しかし、砂で充填された空洞がある程度の厚み(数メートル〜数十メートル)で、周囲が岩盤の場合、 その「増幅」は**局所的・短時間で終わり、全体としては減衰**が優勢です。 --- ### ⑤ まとめ | 条件 | 振幅変化の傾向 | | ---------------- | -------------------------------- | | 空洞のまま | 局所的反射や共振 → 不安定(増減混在) | | 砂で充填 | 通過可能になるが、砂がエネルギーを吸収 → **全体的に減衰** | | 柔らかい層が上に連続している場合 | 速度差による**一時的な増幅**もありうる | --- ### 🔍 要約 > 地震波が砂で充填された空洞を通るとき、 > **通常は振幅が減衰する(小さくなる)**。 > ただし、岩盤との境界条件や層構造によっては局所的に**一時的な増幅**も起こりうる。 返信
#10221 Re: 埋め戻し空洞をとおる地震動の変化 回答、ありがとうございました。 砂充填の場合は空洞内で速度が低くなって、エネルギー保存で振幅が大きくなることもあるが、それ以上に吸収などでエネルギーが失われ、振幅が減衰するという理解をしました。 なお、地震動が空洞内(砂あり)を通る際に、空洞内の砂が周辺岩盤と異なる振動をして、通過波が複雑(経路や振幅)になるような気もします。 このような応答は考えられますでしょうか。質問を重ねて大変申し訳ありませんが、ご回答のほどよろしくお願いいたします。 返信
#10222 Re:(参考)埋戻空洞を通る地震動変化 耐震で問題と成るのは剪断(S)波で,剪断弾性波速度V[m/s]は正確には「岡本舜三:耐震工学,p11,1971.」に拠り, V=(G/ρ)^(1/2). 此処に,G;剪断弾性係数[kN/m^2]=E/{2(1+ν)},E;Young係数(率)[kN/m^2],ρ;密度[t/m^3],ν;Poisson比[1] 風化すると崩壊する恐れが有り,砂を水締して充填しても地震時に液状化して少し沈み空隙が生ずる可能性が有り,tunnel上部に事故で空洞ができた場合を参考に,上記 諸元を発現する下記URLのcement配合流動化処理土を充填し掘削前の震動に近付ける検討をされては如何か. http://lss-kiko.jp/a00/a02 返信
コメント
#10217 Re: 埋め戻し空洞をとおる地震動の変化
とても良い質問です。
結論から言うと、**砂で充填された地下空洞を地震波が通過する場合、振幅は一般的に「減衰(小さくなる)」方向に変化する**ことが多いです。ただし、条件によっては**一時的に増幅**する場合もあります。以下、理由を詳しく説明します。
---
### ① 地震波の性質と伝わり方の基本
地震波(特にP波・S波)は、**媒質の弾性(剛性)と密度**に依存して伝わります。
地震波速度 ( V ) はおおよそ:
V = \sqrt{\frac{E}{\rho}}
(ここで (E):弾性率、(\rho):密度)
---
### ② 岩盤と砂の違い
| 性質 | 岩盤(例:花崗岩) | 砂(乾燥状態) |
| ----- | --------------- | --------------- |
| 弾性波速度 | 約 3000–6000 m/s | 約 300–1000 m/s |
| 密度 | 約 2.6 g/cm³ | 約 1.6–2.0 g/cm³ |
| 減衰率 | 小さい | 大きい |
→ つまり、**砂は岩盤よりも「柔らかく、地震波が減衰しやすい」**媒質です。
---
### ③ 空洞に砂を詰めた場合
* **空洞がそのまま**だと、地震波は跳ね返ったり、反射・散乱して「局所的な増幅」や「共振」を起こす可能性があります。
* **砂で充填すると**、空洞内部が“空気”→“固体”に変わるため反射は減り、波が通過できるようになります。
ただし、砂は柔らかいので:
* 通過時にエネルギーが**吸収・散逸**され(粒子摩擦・粘性効果)、
* 通過後の振幅は一般的に**小さくなる(減衰)**傾向になります。
---
### ④ 増幅が起こる例外
地震波が**硬い層 → 柔らかい層**へ進むとき、
波の速度が急に遅くなるために、**波のエネルギー保存の結果として振幅が一時的に大きく見える**ことがあります。
これは「インピーダンスミスマッチ」による**表面波や層内の共振増幅**です。
> 例:表層が柔らかい地盤の地域で、地震動が大きく感じられるのはこの効果。
しかし、砂で充填された空洞がある程度の厚み(数メートル〜数十メートル)で、周囲が岩盤の場合、
その「増幅」は**局所的・短時間で終わり、全体としては減衰**が優勢です。
---
### ⑤ まとめ
| 条件 | 振幅変化の傾向 |
| ---------------- | -------------------------------- |
| 空洞のまま | 局所的反射や共振 → 不安定(増減混在) |
| 砂で充填 | 通過可能になるが、砂がエネルギーを吸収 → **全体的に減衰** |
| 柔らかい層が上に連続している場合 | 速度差による**一時的な増幅**もありうる |
---
### 🔍 要約
> 地震波が砂で充填された空洞を通るとき、
> **通常は振幅が減衰する(小さくなる)**。
> ただし、岩盤との境界条件や層構造によっては局所的に**一時的な増幅**も起こりうる。
#10221 Re: 埋め戻し空洞をとおる地震動の変化
回答、ありがとうございました。
砂充填の場合は空洞内で速度が低くなって、エネルギー保存で振幅が大きくなることもあるが、それ以上に吸収などでエネルギーが失われ、振幅が減衰するという理解をしました。
なお、地震動が空洞内(砂あり)を通る際に、空洞内の砂が周辺岩盤と異なる振動をして、通過波が複雑(経路や振幅)になるような気もします。
このような応答は考えられますでしょうか。質問を重ねて大変申し訳ありませんが、ご回答のほどよろしくお願いいたします。
#10222 Re:(参考)埋戻空洞を通る地震動変化
耐震で問題と成るのは剪断(S)波で,剪断弾性波速度V[m/s]は正確には「岡本舜三:耐震工学,p11,1971.」に拠り,
V=(G/ρ)^(1/2).
此処に,G;剪断弾性係数[kN/m^2]=E/{2(1+ν)},E;Young係数(率)[kN/m^2],ρ;密度[t/m^3],ν;Poisson比[1]
風化すると崩壊する恐れが有り,砂を水締して充填しても地震時に液状化して少し沈み空隙が生ずる可能性が有り,tunnel上部に事故で空洞ができた場合を参考に,上記
諸元を発現する下記URLのcement配合流動化処理土を充填し掘削前の震動に近付ける検討をされては如何か.
http://lss-kiko.jp/a00/a02