土木のこころ−夢追いびとたちの系譜

表題: 土木のこころ −夢追いびとたちの系譜−
著者: 田村 喜子
出版:山海堂(ISBN4-381-01446-4)
山海堂から20世紀が幕を閉じるにあたって、20世紀に活躍した土木技術者をまとめてみないかとご依頼のあったとき、人選の段階で心が迷った。結果的に昭和以降から戦後の国土の礎を築いた土木技術者を主に取りあげることとなった。・・・例外として、琵琶湖疎水の田辺朔郎と小樽築港の廣井勇を加えた。二人の活躍は19世紀末である。しかし彼らが築いた琵琶湖疎水と小樽港は百年以上の時を越えて、いまも現役のすぐれた社会資本たり得ている。明治維新に引き続き、日本の近代化の渦中で青年時代を送り、シビルエンジニアの道を歩いた男たちは、現在同じ道を選んだひとたちよりも、もっと真剣に「シビルエンジニアはいかに在るべきか」という問題に対峙していたように思われてならない。さらには土木には技術と同時に「土木のこころ」が伴わなければならないと私は思う。・・・
−まえがき より
本書では、20人の土木技術者を取りあげている。一つずつは、短編の作品であるが、単なる個人の業績の紹介に止まらず、その代表的プロジェクトを進める中で胸の内に秘める思いまでをも生き生きと描き出している。現在は社会資本整備が進み、何故この事業が必要なのかという本質を問うのではなく、単に経済性や事業性の議論が優先される時代において技術者が失ってしまいつつあるものを考えさせる一冊であると思う。