「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」の教訓

「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」(松浦晋也著)という本に大変興味深い事が載っていたので紹介します。
2003年11月29日H-IIAロケットが発射されたが、失敗に終わった。これまでにもH-IIロケットの打ち上げ失敗など、我が国のロケットはトラブルが続いた。筆者はこの原因として、「慢性的な予算不足からくる開発試験の不徹底」をあげている。H-IIロケットは開発に2700億円、その後継機であるH-IIAでは1150億円を要している。これとほぼ同規模のヨーロッパのアリアン5は5660億円である。これをもって「日本は工夫によって諸外国よりも安くロケットを開発できた」と理解してはならない、と述べている。むしろ足りない予算で工夫を重ねたが、どうしても完璧を期することが出来なかったと見るべきである。たとえば新しいロケットエンジンを開発する場合、世界的には累積燃焼時間が2万秒ぐらいの試験が必要だとされるが、H-IIの第1段ロケットエンジンは13,000秒で完成とされた。このエンジンは1999年11月の打ち上げ失敗の際のエンジンである。
道路公団民営化の議論のなかで、道路管理費3割削減が決定された。確かに従来の管理に無駄がなかったとはいえないであろうが、「予算を削減して改革の成果が上がった」と言いながら、何年後かにその付けが来ないとは断言できない。管理費を削減するということは、削減しただけ管理水準を低下させる、ということである。のり面の草刈りや清掃のように、道路利用者がある程度我慢できるものはまだしも、構造物の保全のように、将来取り返しが出来ないものまで削減してはいないであろうか。H-IIAロケットの打ち上げ失敗は土木技術者にも大きな教訓を与えてくれる。