ゆえに、高速道路は必要だ―ネットワーク日本、めざして―

表題:ゆえに、高速道路は必要だ―ネットワーク日本、めざして―
著者:四方 洋
出版:毎日新聞社(ISBN4-620-31612-1)
発行:2003年1月
価格:1,429円(税別)
料金収入による採算性のみに着目した「高速道路不要論」が高まる中で、多くのマスコミ報道とは異なる視点から、一石を投じる著書が出版されています。
本書は3章から構成され、第1章は「サンデー毎日」の元編集長らしく、各地の高速道路計画区間の現地ルポが収録されています。第2章は北川正恭・三重県知事のインタビューとして、民営化委への反論を掲載しています。第3章では、諸外国の高速道路の整備手法や我が国よりはるかに充実した国費投入の状況、道路事業と鉄道事業の性格の違いなどを論じたうえで、従来の報道に対して10項目の問題提起を行っています。
あとがきから
一昨年から昨年にかけて、高速道路はひんぱんにとり上げられました。テレビ、新聞、雑誌では「これでもか」といった調子でした。そのうち政府の4公団民営化推進委員会がはじまり、審議の模様が逐一、報道され、解説が載りました。この委員会が真摯に取り組まれたことは認めますが、作家の猪瀬直樹さんが前面に出て、彼の考えが終始強調されました
受け手として見聞していて、いくつか欠落していることに気がつきました。商品でいうと欠陥が目につく、とりかえてほしいという思いがする報道が多かったのです。一つは日本のつらい事情がわかっていない。一つは、JRとの混同でした。道路が持つ特別な性格がわかっていない。一つは高速道路を建設するに至るまでの仕組みがわかっていない。一つは道路公団、とりわけ日本道路公団の歴史や組織がわかっていない。そして建設している現場の人の声や、沿線の地域住民の声が届いていない。特にテレビ報道で感じたのですが、東京から出かけていって、高速道路の上だけをさっと走って、カメラをまわして、リポーターが叫んでいる。その声はいつも「ムダだ」というのですが、こんなワンパターンの、世論に迎合しただけの声に、日本の骨格がゆらいでいいのだろうか。営々と、黙々と現場を支えてきた人たちの思いがかき消されていいのだろうか。「ちょっとおかしい」と思ってまとめたのが、この本です。