大保ダムを見学して―沖縄の渇水と技術開発の紹介―

独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦
1.はじめに
2004年3月12日、沖縄総合事務局が沖縄県国頭郡大宣味村に建設中の大保(たいほ)ダムを見学した。その時の見聞を混じえながら、沖縄の渇水とダム建設における最近の技術開発の例を紹介したい。3回に分けて、今回は沖縄の渇水、次回はCSG工法、第3回にプレキャストコンクリートによるダム堤体表面型枠工法について紹介することとする。
2.沖縄は現在渇水中
沖縄在住の人を除き、沖縄が現在渇水中であることを知る人は少ないであろう。実は私も今回沖縄に行くまで、知らなかった。
平成15年の水源地降雨量は平年値の71%で、平成16年に入っても現在まで少雨傾向で渇水となっている。
沖縄の水源はダムからの取水、河川からの取水、海水淡水化施設の生産水の三本柱となっている。2月の日平均給水量は約400,000m3であるが河川からの取水量は約89,000m3、海水淡水化施設の生産水は35,000〜40,000m3で取水の大部分はダムに依存している。
ダムは国管理6ダム(福地ダム等)を含め9ダムで総利水容量は74,850,200m3であるが、3月10日現在の貯水率は48.9%で平年値より27.8ポイント低い。9ダムの貯水率が59.6%となった1月23日に渇水対策協議会(第2回目)が開かれ、節水キャンペーンの実施が決定された。
沖縄地方3ヶ月気象予報(3月〜5月)では降雨量は「平年並」となっている。今年の降雨量が「平年並」の場合でもダム貯水率等水源の大幅な回復は難しく、今後の水事情は更に深刻になり安定給水の維持が困難になることが予想され、3月末から給水制限に入る予定という。
以上は北部ダム総合管理事務所のホームページからの資料の要約である。(http://www.dc.ogb.go.jp/toukan/index.htm)
沖縄タイムス(3月12日)によれば復帰後、本島での制限給水は延べ1030日。32年間で約3年は「断水」であったという。
沖縄の民家の屋上には、現在も大きな貯水タンクが必ず設置されていて、沖縄へ初めて来た人には珍しい風景となっているが、給水制限になっても、給水時間に皆、貯水タンクに貯水するため節水効果は少ないとも聞いた。私の記憶では沖縄の渇水は継続時間の長い経年型であることが特徴であり今後の経過を見守っていきたいと考えている。
3.大保ダムにおける技術開発
沖縄の水問題をどのように解決するかについては各種の意見があることと思う。ダムによる水資源開発による解決に限度があることは承知しているが、水資源開発の基幹施設としてダムが大きな役割を果たしていることも事実である。
次回、大保ダムにおけるCSG工法について紹介することとする。