トンネル照明用アンカーボルトの現地引抜試験について

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トンネル照明用アンカーボルトの現地引抜試験について、試験値に関する質問です。

トンネル照明のアンカーボルトの引抜試験は、金属系の場合、アンカーボルトの降伏により決まる場合の数値とコンクリート躯体のコーン状破壊により決まる数値のうち、小さい方を引抜耐力として採用すると思います。(各種合成構造設計指針・同解説 日本建築学会)

そこで、長期許容引張力と短期許容引張力のどちらを採用すべきかについてお伺いします。
ボルトメーカーからは短期許容引張力での試験を推奨されましたが、トンネル照明は長期間吊り下げて使用されるため、長期荷重に対して設計されていると考えております。
そのため、試験値は長期許容引張力で行うのが適切ではないかと思っています。
また、落下防止用のアンカーに関しては、荷重が作用するのは短期間のため、こちらは短期許容引張力での試験が適切だと思います。
トンネル照明用アンカーに短期許容引張力で試験を実施しても問題はないとは考えますが、各部位に対する適切な引抜力の考え方を理解したく質問いたしました。

なお設計資料が手元にないため、アンカーボルトの施工条件から求めた引抜計算書の数値でしか検討ができない状況です。
どうぞよろしくお願いします。

コメント

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土木学会の「コンクリートのあと施工アンカー工法の設計・施工指針(案)」を使うんじゃないですか?

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「アンカーボルトの施工条件から求めた引抜計算書の数値(許容値)」>「必要引抜き力」を確認する必要がないですか。

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ご返答ありがとうございます。

「アンカーボルトの施工条件から求めた引抜計算書の数値(許容値)」>「必要引抜き力」を確認する必要がないですか。

こちらですが、土木学会のコンクリートのあと施工アンカー工法の設計・施工・維持管理指針(案)P.150の10.限界値の算定(1)(c)では、ri*Sd(349.2N) < Rd(1577N:長期) …ok で引張力の照査を行っていますが、この検討式と同様の考え方かなと思います。
現場で引抜試験を実施する際の引抜値としてどちらを採用するのでしょうか?
アンカー1本の性能を確認する場合は、Rd(=1577N)が適切かと思います。それとも施工条件を考慮したアンカー1本あたりの349.2Nの値で引抜試験を行うべきか、悩んでいます。

ユーザー 中筋 智之 の写真

 御承知の様に,土木学会指針(案)(文献1)に,金属anchorについて,main部を長期で,back up部を短期で設計する例が載っています.
 2012年に笹子tunnel天井板落下事故後,樹脂anchor boltの引張試験を行った結果,(短期)bolt降伏強度相当40kN引張抵抗力迄載荷後除荷した物が38%,引張抵抗力に達しない物が全体の62%,設計引張力12.2kNに
達しない物が9%でした(文献2).
 当事故後,日本のtunnel内天井板は殆ど撤去され長大tunnelの排気設備はjet fan方式に変更され(文献3),土研資料(文献4)で,jet fan据付時のturn buckle発生軸力計測値が,計算値より最大で5割程大きく,短期
cone状破壊耐力(T_c)計算値迄試験して実測値を求め,最大引張荷重が最小の芯棒打込み式は引抜き破壊してT_cより小さかった.
 吊り下げて長期荷重を受ける附属物の取付に用いる後施工anchorの点で,照明器具は天井板・jet fanと同様で,許容応力度設計法,限界状態設計法の違いは有っても応答値でなく耐力に対して試験する事に
成ります.1999年に山陽新幹線のcold jointで剥離した事も有り,concreteの圧縮強度として,設計基準強度のみならず現地の強度を確める事が適切と私は判断します.
参考文献
1)土木学会:concrete後施工anchor工法の設計・施工・維持管理指針(案) 道路トンネル照明器具設計例,2022.1
2)トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会:報告書,p22-28,2013.6
https://www.mlit.go.jp/common/001001299.pdf
3)橋本 綱太郎・菊川 滋・二羽 淳一郎:社会infra maintenance工学,pp.439,441-445,2015.1
4)(国研)土木研究所 日下 敦 等:後施工anchorの耐荷力特性に関する研究報告書-金属系後施工anchorの設計・施工・維持管理上の留意点-,pp.2-3・4,3-5・6,4-6・7,2023.3
https://www.pwri.go.jp/team/imarrc/research/tech-info/tec4436.pdf

ユーザー 匿名投稿者 の写真

ご返答ありがとうございます。
参考文献も添付していただき、大変参考になります。
応答値で試験を行った場合に問題ないとされても、事例(文献4)のような事例があるため、将来的な落下のリスクを考慮すると、ご指摘の通り耐力での試験が適切だと考えています。
また、アンカーの選定についても慎重に行う必要があり、コンクリートの圧縮強度についても現地試験の検討を進めていきたいと思います。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

続いて質問させていただきます。
応答値ではなく耐力に対する試験を行うことは理解しましたが、現状、長期耐力に関して現場試験ができない状況です。試験機が見当たらない、あったとしても施工時には片側通行や通行止めによる道路規制がほとんどで、開放までの時間にも制約があります。
そのため、現場での長時間の試験は困難です。
通常行っているのは短期載荷試験であり、短期耐力を求め、その数値をもとに短期載荷試験を行い合否を判定しますが、合格となった場合、長期耐力についても問題ないと判断してよろしいでしょうか。
また、問題ないと判断できる根拠があれば教えていただけますでしょうか。

ユーザー 中筋 智之 の写真

 例えば文献4 式(2.5)のcone状破壊に因り決まる許容引張力
 p_a2=φ_2・α_c・_cσ_t・A_c
 此処に,φ_2:低減係数(短期荷重用:2/3,長期荷重用:1/3)
の様に,短期耐力は一時的に作用する施工時やL1地震時に対する耐力で,長期耐力は常時に対する耐力なので,(長期耐力)<(短期耐力)を確認し,以下に提案したいと思います.
 長期耐力を試験で確かめれば短期耐力も問題無いかについて,降伏強度迄はほぼ弾性と見做され想定modeと同じならば推定できるが,芯棒打込み式の様に想定modeと違う場合,
推定できないので,笹子tunnelを教訓に,想定modeと成る様に試験で確かめて現場で再現できる様に削孔長等を管理する事が大事と私は判断します.
 照明は,spring lineからcrown間のcold jointが出来た恐れが有る箇所に設置され,crownでは脆弱なレイタンス,centre褄部にair抜きを設けず空洞が出来ている例が有り,非破壊試験で既設concrete
の圧縮強度を確かめ,空洞が有れば充填し,土研等の試験結果を援用する,又は,試験機を保有する組織で仕様の都合で実際よりも一回り小さなanchorで出来れば相似則を考慮して試験して
は如何でしょうか.既にされていると思いますが,照明として蛍光灯から,LEDの様に軽量で長寿命の物にする対処も,落下防止に繋がると考えます.

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ご返答ありがとうございます。
今回の質問は、長期耐力を試験で確かめれば短期耐力も問題無いか、ではなく、逆の 短期耐力を試験で確かめれば長期耐力も問題が無いか、という点についてでした。
想定破壊モードでの試験が適切と評価できるように、一連の施工サイクルの確認、穿孔長、穿孔径の管理が重要であることは理解しております。
解釈が間違っていれば申し訳ありませんが、設計耐力の計算結果が長期・短期共に同じ破壊モードの場合を条件に、短期耐力試験を合格した際には長期耐力もクリアしていると判断しても良いのではないかと考えます。
現在実施可能な試験では、こうした判断を下すことしかできません。
ご指摘の通り、照明設置箇所には脆弱な部分もあり、非破壊試験や補修も必要だと思います。こちらについては、設計段階での対応をお願いしたいところです。

ユーザー 中筋 智之 の写真

 御質問は,既設山岳tunnel concrete覆工に照明を設置する金属系anchorの長期引抜耐力を試験で確かめたいが道路の供用,試験機手配の為,難しく,又は,短期引抜耐力を試験で
確かめ,concreteのcreepやひび割れ,金属の腐食を考慮して長期耐力を保証できるかと私は解釈した条件で以下に提案します.
 御存知の様に,建築では,「日本建築学会:各種合成構造設計指針(文献5)」に,「経年に因るanchor bolt耐力の低下について,其の調査検討に長期間を要する為,関連資料は特に十分
でない.」と記され,2020年時点で建築基準法に拠り,後施工anchorに自重や積載荷重等の長期荷重を負担させる様な補強工法を適用する事が出来ないとされている(文献6).
 土木では,文献1の前2014年指針(1')では後施工anchorを「原則として吊り下げる付帯設備に使用しては成らない.母材のconcreteは設計基準強度が18N/mm^2以上で,ひび割れ
や豆板が無く健全な普通concreteとする.」として,2022年改訂ではback upを設計,施工,維持管理する事で吊り下げ目的にも適用できるとしている.
 90日持続引張荷重作用後に生じた変位量から50年後の変位量を外挿し,基準引張試験での破壊荷重時変位量よりも小さく安定しているのは金属系拡底式と報じられた(文献7).
 後施工anchorについて,私は,総合建設会社でshield tunnel接合時に仮設(短期)で剪断力が主の条件のみで用い,集合住宅では剪断抵抗する箇所に用いnut,washerは雨掛かり箇所
で錆び,掛からない箇所では錆びていません.
 拠って,cold jointが出来易かった打継目line及びbreedingを起こし易かったcrownを極力避け,照明自重に因る引張分力よりも剪断分力が主のspring lineより少し上で,金属系anchor
の内,想定modeに成る拡底式等で,コンクリート標準示方書(文献8)に拠り一般環境梁で鉄筋の耐食性を確保する最小被り30mmに準じ溶融亜鉛鍍金又はSUS製とし,漏水が掛から
ない環境に極力して気中のnut,washerを含めて定期点検・必要に応じ交換すれば,少なくとも短期耐力を試験室で確かめれば,shield工事用鉄筋concrete segmentの様に,供用長期耐力
を確保できる可能性が高く成ると考えます.
 山岳tunnelの現場打concrete覆工については,一部の団塊世代が加水した事が技術士会でも知られ,大学教員を通じ違法しない様に学生に警告され,前記の様にconcreteの健全を確
め,必要に応じ補修した上で対処せざるを得ない条件の可能性が有ります.
参考文献
1')土木学会:コンクリートのあと施工アンカー工法の設計・施工指針(案),2014. 5)日本建築学会:各種合成構造設計指針・同解説,p268,2010.
6)(公社)日本コンクリート工学会:技士・主任技士研修textbook,pp96,182,2024.
7)青木圭一・西田宏司・花島崇・高橋宗臣:後施工anchorに於ける長期持続引張荷重の影響試験について,コンクリート工学,2016.3
8)土木学会:コンクリート標準示方書[構造性能照査編],pp.119-121,2002.