建設業における生産性の定義が間違っていると思う件について

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「生産性」について下記の内容の論考の作って国交省に投書してみているのだが、付加価値を理解していない人が多くて、問題のヤバさが伝わらなくて困っています。
この件について皆さんの意見が気になるので自由にどう思っているのか記載して頂ければ幸いです。

建設業における「生産性」は一般的に産業間の比較で使用される付加価値労働生産性ではなく、(一社)日本建設業連合会の完工高や、国土交通省の生産量で図られている。
付加価値(売上-原価)で評価していないことによって、他産業とは異なり顧客の成功につながらない競争力のない製品が大量に作り出されている。
ICT施工のマシンコントロール及びマシンガイダンスが一番象徴的な例だが、競争⼒のない製品のため、将来的には早期に技術の陳腐化を引き起こし、それらが損失を⽣み、多くの企業が経営悪化に陥る危険性が⾼いと考えている。
※機械化すると一見、時間が短縮されて効率が上がっているように見えて、他業種と同じく付加価値で生産性を図ると、原価が大幅上昇しているため、実は付加価値労働生産性が下がっている事例が多い。

国土交通省が予算確保し続けられれば良いが、財務省からも導⼊から数年経つICT 施⼯(マシンコントロール及びマシンガイダンス)のコスト縮減がなされておらず、従来⼯法と⽐較して⼯費が⾼いままであることに対して、達成すべき指標が明確にされておらず、検証をしっかり⾏うべきという指摘がなされている。
将来的に投資を回収できる⾒込みがあればよいが、実は回収の⾒込みは限りなく低い(というか回収できないとみている)。
財務省にその仕組みがバレたら即予算停止される恐れがある。
※つまりは現在、国交省が普及させようとしているマシンコントロールなどの機器が価値があると思って買ってみたものの、いきなりごみになる可能性があるということ。

そもそも、こうした回収⾒込みのない事項に「投資」や「⽣産性向上」と称して予算を使⽤していることは国⺠の期待と負託に対する裏切りであり、「⽣産性」の定義が他業種と同じく付加価値労働⽣産性に是正されなければ、⼟⽊・建築問わず建設業全体が社会的な信⽤を⼤きく棄損することになると考えている。

コメント

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 「いいね」頂いてみてくださっている方がいるので追加で補足すると、付加価値(売上-原価)には自社職員の人件費は入っていないのです。つまりは付加価値の上げることが出来なければ、職員給与を上げることも生産性を上げるための設備投資も行うことができないということになります。それは他産業との人材獲得競争に敗れることに繋がり、業界全体の衰退を招くことになります。
 2019年時点の比較になりますが、建設業の付加価値労働生産性は製造業の1/2しかなく、製造業の取り組みの必死さと工夫に比べれば、はっきりいって建設業は素人同然のレベルのことしかしていないのが実情です。我々建設業はある程度地域性があってそれが障壁になっていますが、向こうは世界中何処でもが競争相手ということで、原価低減し、付加価値を上げることができない企業は自然淘汰されるため、必死さが全く違います。指標を早急に改めたとて既に相当のレベル差がありますが、先人たちが努力と工夫で紡いできた建設業界を我々の時代に衰退させ、それを次世代に引き継ぐのは現役世代の責任として避けなければならないと思っています。

この問題を広く議論して欲しくて、土木学会の事務局にも論考を送ろうとしましたが、どの委員会で預かるか決められないため、一旦この掲示板でということで投稿させて頂いています。
どなたか土木学会で立場があって、このことを問題だと思われて取り扱ってくださる方がいましたら、論考を改めて土木学会に送りたいと考えています。
※一般に公開しても良いですが、ICT施工の工費が従来工法より安くならない理由の考察が入っているので、まずは建設業界の中で何とかしたいと思っています。

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誤)付加価値(売上-原価)には自社職員の人件費
正)原価には自社職員の人件費

ユーザー 虹製品屋さん の写真

どれだけ技術や品質が優れていても、安価なものが選ばれますね。
真面目に(?)製品を作っても意味が無いです。

そして効率化の為にICTやCIMを導入する流れになっていますが、それなりの設備投資が必要なため中小企業にとっては、もう競争に参加すらできなくなるケースも出てきます。企業側からすれば、導入するために補助金がないと苦しいと思います。

国があれこれ指示するのは良いですが、末端も含め業界全体が変われるようにして頂きたいと思います。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

付加価値(売上-原価)と聞くと高くても売れるものっていう方に思いがちですが、原価低減して安価な値段で提供することも顧客にとって価値ある立派な付加価値です。
必要なものを最小の工数で達成するためにはどうすればよいのかっていうのを図るのが付加価値労働生産性っていう指標なので、過剰品質になっていないかということを考える必要がありますね。

>そして効率化の為にICTやCIMを導入する流れになっていますが、それなりの設備投資が必要なため中小企業にとっては、もう競争に参加すらできなくなるケースも出てきます。

ご指摘の点はこの問題の本質をついている非常に正しい見識だと私も思います。
効率化のための技術が総合評価等の加点要素になっていて、実質的に公共工事入札の参加条件になっているのも、深刻な問題です。
このことは言葉を選ばずに言えば、国交省の言うことを聞く企業以外生き残れなくなるということです。
しかし、生き残るのが付加価値労働生産性を上げた企業ではなく、国土交通省の言うこと企業というのが問題です。言うことを聞いて生き残ったとしても、現在の国土交通省の考え方では付加価値が上がらないため給与を上げることができず、将来的には産業間の人材獲得競争に勝てなくなり、建設業のうち特に官庁工事の割合の高い土木工事業が壊滅的な打撃を受けることになります。
弊社も含めて5,10年先に生き残れるかどうかは分かりませんが、少なくても生き残る企業は付加価値を高める工夫や知恵を持った企業でなければ結局のところ建設業界の衰退に繋がると私は考えています。
だからこそ生産性が上がっていないという事実を建設業界全体として真摯に受け止めないといけないと思っています。

ちなみに、ものづくり補助金も効果出ていないということで、がっつり財務省に目をつけらているので、適切にやっていないと首が閉まるというのが分かりますね。

ユーザー 虹製品屋さん の写真

何と言いますか・・・
昇格昇進するために上司にごまを擦るような風潮が、国の機関にもまだ残っているというのが残念でなりません。
根本的な所から変えないと何も変わりません。

特に若い世代は、労働力としてはもちろんですが、柔軟な考え方が出来ます。
長所としては知恵や工夫が出来る、短所は物事にドライで離職しやすい。
逆に中高年は、培ってきたキャリアや技術があります。
しかし先に申し上げました昔の風潮がまだ残っており、そして固定観念に囚われやすい。
上の人が「この方法でやってきたから」というものを下の人に押し付けてしまっているように感じます。
その方法は正しいのでしょうか?

お金の問題も人手不足も、声が上がっているのに知らない振りなのでしょうか。
現場の声(当事者たちの声)こそ尊重しなければならないと思います。

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論考の要旨にも書きましたが、倫理の基本は「知りながら害をなすな」です。
本来、それが守れない者はプロではないのですが、守られない事が多いのが非常に残念です。

固定観念のお話しは論考の中にも引用した鹿島守之助氏の事業成功の秘訣二十ヵ条が参考になると思います。
※超一流の経営者はこのレベルです。
参考)鹿島建設(株)HP 事業成功の秘訣二十ヵ条
https://www.kajima.co.jp/news/digest/nov_2021/hashtag/index.html

悪意はないと思いますが、このお話し実は日建連がかなり悪さをしています。
付加価値労働生産性でやるのが一般的だと知りつつ(※1)完工高を定義に設定したり(※2)、完工高を定義に定義にしているのに完工高が下がって利益率がさがっているのに利益控除後の生産性(完成工事原価ベースの生産性)が上がった(※3)とか訳の分からないことを平気で公に公表しているので、建設業界ってとんでもないなって思っています。
※まあ、公開してくれているからこうして私みたいな田舎者でも検証できてありがたいのですが、誰か止める奴がいなかったのかと言いたいですよね…。

※1 「生産性向上推進要綱(2016年4月28日)」
※2 「生産性向上推進要綱 2016 年度フォローアップ報告書(2017年4月)」
※3 「生産性向上推進要綱 2021 年度フォローアップ報告書(2022年9月)」

資料のリンク
※1、※3
https://www.nikkenren.com/sougou/seisansei/
※2
https://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=258

ユーザー 匿名投稿者 の写真

大変興味深い投稿で参考になりました。
私自身、過去に製造業から建設業にUターン転職した経験を持ちますが、当時から今に至るまで建設業の根幹的な問題に苦悩する日々が続いています。特に地方の中小建設業者は資金的な制約もあり、他産業でいう生産性を向上するよりも政治力を利用して生き延びることを優先してきたツケが今まさに回ってきていると感じています。今後、建設業者間の資金面や技術的な格差が広がり淘汰が進むと予想されますが、減少傾向にあるといいながらも数多く存在する建設関連従事者にとって不幸な結果とならないような政策や企業の舵取りが期待されます。
こうさんの投稿については大変興味深く読せていただきましたが、差支えのない範囲で論考を公開していただけたらと思います。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

ありがとうございます。
国土交通省にも、(一社)日本建設業連合会にもかなり厳しいことを書いているので責任として記名のまま出します。
実は最初の投書から9か月は経っていて、国土交通省側の対応がないので全文でも良いと思いましたので、そのまま公開させていただきます。
※そもそもことの重要性に気付いていない感じがしていますが対応頂けない以上は仕方ありません…。

論考要旨
https://kkdoto-my.sharepoint.com/:b:/g/personal/tsuji002_kkdoto_onmicros...
論考本文
https://kkdoto-my.sharepoint.com/:b:/g/personal/tsuji002_kkdoto_onmicros...

実はこの問題中小企業もさることながら、大企業も相当ダメージを受けています。
付加価値労働生産性でガチの内容で勝負しているのは、様々な資料から推測するに鹿島建設くらいで、残りは国交省の取り組みにお付き合いして首が閉まっている状況です。
というか論考の中にも書いていますが、日建連でも理解している企業自体ほとんどおりませんので…。
中小企業も大企業も誰一人として得をしない仕組みが放置されているって何なんでしょうね…。

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いろいろ書きましたが、国交省にしても、日建連にしても悪意を持ってこのようなことをしているとは思っていません。
むしろ建設業の課題を解決しようとしてくれて、予算も獲得してくれたことには感謝しています。
ただ…少し方法論が良くなかったかなと思っています。

問題解決に対しては是々非々で取り組んで頂きたいです。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

論考の公表大変ありがとうございました。
論理的かつ的確な内容で大変参考になりました。また、財務省の認識・対応が危惧されるのは残念です。
政策が各省庁の利権で左右されるのは昔から見てきましたが、誠実に経営している企業の浮沈に関わるのは黙認するわけにはいかないですね。
健全な環境下で建設業者の淘汰が進むのであれば歓迎ですが、公共事業の傘の下では歪んだ構造はなかなか是正できないでしょうね。

ユーザー こう の写真

読んでいただいて感想まで頂いてありがとうございます。

>また、財務省の認識・対応が危惧されるのは残念です。

財務省の認識についてですが、私の指摘していることについては、ほぼ感づいているというのが正直な印象です。2021年4月の財政制度等審議会から財務省がコスト削減の必要性を指摘してきていましたが、2022年10月の財政制度等審議会では指標を示すように発言が変わってきていることから、財務省も私と同様に国土交通省がそもそも「生産性」という言葉を理解していないということに疑い持っていると考えています。
私は「定義」と表現しましたが、財務省の「指標」というのはほぼ同義であると思っています。ただ歩掛上の編成や点群データの問題などの細かい話までは分かっていないため決め手に欠いているという印象です。(そこまで分かっていたら逆に怖いが…)
したがって、財務省に国交省が仕留められるのも時間の問題かなという気はしています。
※補正で予算つけておいて執行率が悪くて執行できていないじゃないか!とか訳の分からないこと言うこともありますが、企業統計を押さえているといえ専門でもないのにここまで理解している財務省はやはり論理的な話においてはやっぱり優秀だなっていうのとよく勉強されているなと思いました。っていうか素直な感想として財務省の方が国交省よりも資料のレベル自体が高いです。(特に令和3年10月20日資料とか)

参考
歳出改革部会(令和3年10月20日開催)資料一覧
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fi...
歳出改革部会(令和4年10月19日開催)資料一覧
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fi...

>誠実に経営している企業の浮沈に関わるのは黙認するわけにはいかないですね。

本当にその通りだと思います。国交省が成果の出ていない現況レベルのICT施工を都道府県と市町村に拡大しようとしているのは、はっきり言って狂気の沙汰です。多くの人が問題に気づいていないだけとは思っていますが、こんなことの片棒担がされることは地方公共団体にとってもメリットはないと思っています。っていうか国交省、本気で普及したらコスト下がるっていうので通すつもりなんですかね?論考でも書きましたが「正直それは無理筋じゃない?」っていうのが私の所感です。

>公共事業の傘の下では歪んだ構造はなかなか是正できないでしょうね。

昔から言いますが「義を見てせざるは勇無きなり」というように、能力の問題というよりは勇気(度胸)の問題なので難しいですよね。おまけにこの話自体理解するのに能力の問題も絡むため、勇気と能力と両方求められるのが非常に厄介ですね。

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最近、建設業の生産性について少々気になる統計データがありましたので情報共有させて頂きます。
公益財団法人日本生産性本部にて、月次で業界別の完工高ベースで物価変動を除いた実質の物的労働生産性を出しております。

2021年4月から最直近の2023年8月時点まで、一貫して対前年同月比が下落しております。
2021年は東京オリンピックがあり、2021年が2020年に比べて落ち込むのは分かりますが、2022年も大きく下落し、2023年も継続して下落傾向となっています。
前年同月比の比較のため、大きく落ち込んだ後は反発しやすい指標のはずですが下落を続けているということは大変よろしくないと思っています。

国交省にしても、日建連にしても一人当たり完工高を上げることが生産性の向上としておりますが、統計上はそのような結果になっておりません。
私が論考で指摘した内容は、「一人当たり完工高が上昇していたとしても、付加価値(利益)が伴っていなければ企業運営の継続に支障が出る」ということでしたが、統計上では一人当たり完工高すら改善がされていないという大変厳しい結果です。

労働投入量は上昇しておりますので、統計が正しいとすれば実際には供給能力が低下しており、人数と時間を無理やりかけて工事をこなしているというのが建設業の実態なのかなと感じております。
一人当たり完工高の傾向は、日建連の生産性向上要綱のフォローアップ報告書(2021年度)のデータの傾向とも一致しますし、供給能力の減少傾向は財務省が2021年10月の財政制度審議会で大手50社の手持ち工事量が増加傾向であるという指摘とも一致しています。
※主として、「土木」というよりは「建築」の影響が大きいとは思いますが、データ上はそのような傾向になっています。

建設業(官民含めて)では「ICT施工を行っているから生産性が向上している」という説明をすることが多いと思いますが、統計データ等を見ていれば、そうはなっておらず、いずれ露見するのではないかと危惧しています。

※統計の元情報については公益財団法人日本生産性本部HPのリンクを張っておきます。
https://www.jpc-net.jp/research/rd/db/#anc-01

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こうなっている原因について、私なりの考察ですが、自動化がうまくできていないことに起因していると思っています。

分業化でアウトソーシングや、建設ディレクターなどを活用すると、担当者の目の前からは仕事が減るため、一見効率化できているように見えますが、全体で考えると仕事が増加している場合があります。
たとえば2人で50日かかる仕事を、100人いたら1日できるかといえば、現実的にはできません。
何を作るかの仕様の共有や資料の読み込み、各部門間の成果物の調整、グループ毎の進捗管理など小人数時には生じない業務が発生するためです。

論考の中でも取り上げた元トヨタ自動車工業の大野耐一氏も指摘している通り、より少ない人数で生産体制を確立しようとするのが本来の生産性向上であって、人手不足を人員を増やして対応しようとしている限り、生産性は上がらない結果に繋がるのは当然かなと思います。
まして少子化で人員確保が困難である以上、情報通信技術を活用して自動化できる部分は自動化し、少ない人員で運営できる体制の確立が現在の建設業で求められていることではないでしょうか。

上記のことは分業化の罠だと思っているのですが、どうもその辺旨くできていないことが労働投入量の増加の一因になっているのではないかと思っているのですが、皆様の見解を聞かせて頂けると助かります。