太田論文に対する意見

太田論文に対する意見
不動建設株式会社 土木事業本部 藤本 博
土木学会誌2003年10月号に掲載された太田氏の論文に対して意見を申し上げます。
1.土木は消費者を意識していない。
・土木とは公共工事をさして言っておられると思うが、公共工事についての計画は
発注者である官が消費者(国民)の利益を長期的に考慮して決められるものであり、
その時点で消費者を意識していると考える。
2.倫理規定が必要なほど土木は倫理欠如
・土木(公共工事)の倫理観が欠如しているやに言われるが、土木技術者は契約書に ある仕様書に基づき施工しているのであり、一部の不適格業者を除き手抜き工事な
どありえない。筆者がいわれているマンション建築(民間)を例にとって土木の倫理
観が欠如しているというのは全く筋が違う。冒頭に市場論理の優位性を謳いながら、 その市場論理で購入したマンションの欠陥をもって土木の公共性を非難するには矛
盾がある。
3.建設会社は良い仕事をするインセンティブなし
・日本の土木技術は高度成長期以来、長足の進歩を遂げている。良い仕事をなそうと するインセンティブがなければ、技術力の向上などありえない。
4.90年代の事業拡大が公共工事の質を低下させた。
・筆者が何をもって質の低下といわれているのか記述がないので反論のしようがない。
5.倫理規定だけでなくシステム設計を
・手を抜くことが土木従事者の利益にあっている」といわれているが、そもそも手抜
き工事は業者(技術者)の信用を著しく損なうものであり、長い目でみれば非常な
不利益をもたらす。利益にあっているとはいかがなものか。
・また、最近、「性能発注」や「ライフサイクルコストを考慮した」案件が多くなっており、
システムとしても施工業者の責任・技術の向上が求められている。