軸力と曲げを同時に受ける腹起しの検討について

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仮設支保工の腹起しに軸力と曲げモーメント(水平・鉛直方向)が作用する場合に「道路土工 仮設工指針 照査式(2-6-1),(2-6-2)」による照査が必要となり、
この時の腹起しが座屈強度において鉛直軸(y軸)回りが弱軸となった場合の計算式について質問です。
 ※ 腹起し「H」の向きに対して鉛直方向=y軸(断面強度は強軸)、水平方向=z軸(断面強度は弱軸)とします

仮設工指針では道示橋に準じて「y軸回りが強軸」の場合についての記載となっており、
道示橋の条文では「その軸のまわりの座屈強度の大きい方を強軸としている。したがって,強軸,弱軸の決定とは,断面形状のほか各軸の支持点間距離も関係することに注意する」
とあることからy軸回りが弱軸になった場合は記載されている式を変更して照査することになります。

ここで、照査式のσbagyは横倒れ座屈を考慮し許容応力を低減した値であると認識しています。
横倒れ座屈はH形鋼の断面の強軸周りに荷重が作用した場合に圧縮力を受けたフランジが単体の板の様に座屈しようとするが
腹板で固定されているため座屈できず荷重面外方向(弱軸周り)にねじれた変形を起こすものと考え、断面の弱軸周りに荷重が作用したとしても横倒れ座屈は発生しないのではないかと考えます。

そのため、座屈強度でy軸周りが弱軸となった場合は、
σc/σcay + σbcy/(σbagy・(1-σc/σeay)) + σbcz/(σbao・(1-σc/σeaz))≦ 1
  ↑
 第一項の分母を座屈強度弱軸の許容応力度に変更  ( 他は変更無し )
という照査式になるという考えになるかと思いますがどうでしょうか。

所有している計算ソフトの計算式は
σc/σcay + σbcy/(σbao・(1-σc/σeay)) + σbcz/(σbagz・(1-σc/σeaz))≦ 1
          ↑                ↑
  第二項(y軸回りの計算項)の許容曲げ圧縮応力度が最大値 / 第三項(z軸回りの計算項)の許容曲げ圧縮応力度が低減した値   
となっているのですがこちらが正しいのでしょうか。

内容を考えていくうちにソフトの計算式に対し疑問が浮かんできたためこちらで質問させていただきました。
想定している仮設土留めはコの字型のアンカー支保を採用する場合です。
ご教示いただけると助かります。

コメント

ユーザー 中筋 智之 の写真

 腹起しは一般に切梁位置を支点として式(1)に拠り、単純梁として最大曲げmoment(M_max[kN・m])と最大剪断力(S_max[kN])に対して設計し、曲げmomentと剪断力を十分伝達
できる継手では連続梁として設計でき各基準を参考にされたい(文献1)。
 単純梁の場合:M_max=(w・l^2)/8 連続梁の場合:M_max=(w・l^2)/10 (1)
 S_max=w・l/2
 此処に、w:土留め壁の設計に慣用法又は弾塑性法を用いて求まる各段の腹起しに作用する土・水圧に因る等分布荷重[kN/m]
    l:span長(切梁間距離)[m]
 土留めに溶接するbracketに腹起しを載せて自重を支え、bracketが、褄部の土・水圧に因る軸圧縮力と腹起しの自重及び上を歩く工事関係者の自重に因る曲げmomentに因る
鉛直面内座屈に対する固定点には成り難く、同軸圧縮力と水平面内曲げmomentに因る座屈が主で、鉛直方向y軸が強軸と成る道示(文献2)の式(4.3.4)に拠ると私は考えます。
 σ_c/σ_caz + σ_bcz/{σ_bao・(1-σ_c/σ_eaz)} + σ_bcy/{σ_bagy・(1-σ_c/σ_eay)}≦1 (4.3.4)
 此処に、σ_c:照査断面に作用する軸方向力に因る圧縮応力度[N/mm^2]
    σ_caz:許容軸方向圧縮応力度[N/mm^2]
     σ_caz=σ_cag・σ_cal/σ_cao(3.2.1)
    σ_cag:表-3.2.2に示す局部座屈を考慮しない許容軸方向圧縮応力度[N/mm^2]
    σ_cal:4.2.2~4.2.4及び14.3に規定する局部座屈に対する許容応力度[N/mm^2]
    σ_cao:表-3.2.2に示す局部座屈を考慮しない許容軸方向圧縮応力度の上限値[N/mm^2]
    σ_bcy,σ_bcz:夫々強軸及び弱軸回りに作用する曲げmomentに因る曲げ圧縮応力度[N/mm^2]
    σ_eay,σ_eaz:夫々強軸及び弱軸回りの許容Euler座屈応力度[N/mm^2]
     σ_eay=1.2×10^6/{(l/r_y)^2},σ_eaz=1.2×10^6/{(l/r_z)^2}
    l:有効座屈長[mm]
    r_y,r_z:夫々強軸及び弱軸回りの断面2次半径[mm]
    σ_bagy:表-3.2.3に示す局部座屈を考慮しない強軸回りの許容曲げ圧縮応力度[N/mm^2]
     土留めとの間に間詰めconcreteを打つがflangeにconcreteと一体化する機構を施さなければ表(b)に成る。
 もし、y軸が弱軸に成る条件が有れば、貴殿に拠る腹板が切梁位置のstiffenerならば圧縮力を受け持つ間詰めconcreteと併せて横倒れ座屈を低減するのに寄与し、
式(4.3.4)のyとzを置換した貴殿のsoftwareが適切と私は考えます。
参考文献
1)土木学会:仮設構造物の計画と施工、pp141-143、2010. 2)(社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説Ⅱ鋼橋編、pp.169-173、2002.3