英文本の紹介 竹内邦良著、Integrated Flood Risk Management: Basic Concepts and the Japanese Experience

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英文の本のご紹介です。

竹内邦良、Integrated Flood Risk Management: Basic Concepts and the Japanese Experience、Taylor&Frnacis Group・Routledge、2022.11
著者は2006年に設立された茨城県つくば市にある土木研究所、水災害・リスクマネジメント国際センター (ICHARM)でセンター長そして顧問を当初から10年余されました。ICHARMでは、政策研究大学院大学(GRIPS)並びにJICAと共同して、博士課程・修士課程の学生の教育を行っており、2016年までに7名の博士課程、110名の修士課程修了者を育てられ、本書はそこでの講義がもとになっています。わたしもその半分ほどの学生さんにかかわっています。著者は、現在もICHARMでの講義を続けられており、卒業生の数は増え続けています。
前半で、開発と環境にかかわる国連活動を中心に、水資源、水防災の基本的考え方の変遷を概観し、後半では、その中での日本の貴重な経験を、歴史的文化的経緯を含めて解説し、将来展望にも触れています。水文気象の極端事象がますます激しさを増す中、日本の防災技術や政策には世界の期待が集まっており特に、水災害対策に関係した留学生や、海外研修生への講義を担当される方、海外プロジェクトを持つ方に役立つと思います。
ともすれば、水災害対策は、その性質上、局所的・庶務的な対応に傾倒しがちですが、国連など世界の大局に足場をとり、背景やビジョンからの記述は貴重です。グローカル(global+local)はICHARMのモットーの一つです。2011年には、東日本大震災の津波災害が起こり、2016年には、つくば市の隣、常総市で鬼怒川堤防が決壊し市内の40平方kmが浸水しました。表紙の写真は、2019年19号台風の時の千曲川の長野市穂保地先の破堤です。その時は長野新幹線車両センターが浸水しています。これらは、いままでの対応に固執することなく、柔軟に大所から総合的に戦略を立てる必要を示唆しており、昨今の流域治水にもつながっていると感じています。巻末では、つくば市に近い、栃木県真岡市桜町に本拠をおき活躍した二宮尊徳の事跡が、貧困地帯の災害復興、開発に欠かせない思想と経営手段を提供している祖と語られます。世界各地で活躍し始めた卒業生にも、その思いが十分に伝わっていること確信しています。
加本実(建設コンサルタンツ協会参与、元ICHARM上席研究員)
https://www.routledge.com/Integrated-Flood-Risk-Management-Basic-Concept...