石灰系固化材を使用して土質改良

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石灰系固化材を使用して土質改良を行うのですが、その日その日ごとにストックヤードに堆積してある土を改良する前に含水比を確認しろと技術員から指示がありました。
必要があるのでしょうか。何の目的があるのでしょうか。室内試験が意味をなさないのではないでしょうか。

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 生石灰(酸化カルシウム、CaO)は石灰石(CaCO3)を式(1)の様に、1000~1200℃で焼いて製造され、
CaCO3→CaO+CO2・・(1)
土木では土質安定処理にcementと同様に用いられる。生石灰は式(2)の様に、水(H2O)と発熱反応して消石灰(Ca(OH)2)と成る過程で一時的に土の含水比w=mw/ms(ここに、mw:間
隙水の質量、ms:土粒子の質量)を低下させるため、短期的に施工性を向上させる。
CaO+H2O=Ca(OH)2+65.3kJ/mol・・(2)
 固化材に石膏(含水硫酸カルシウム、CaSO4・2H2O)が配合されている場合、改良土に含まれる消石灰は、土壌中または固化材中のアルミナや石膏と水が反応し、針状のettringiteを生成
する。
3Ca(OH)2+Al203+3CaSO4+29H20→3CaO・Al203・3CaSO4・32H20・・(3)
 土壌中または固化材のシリカ、アルミナと水が式(4.1)、(4.2)の様に反応し、それぞれ、硅酸カルシウム水和物、アルミン酸カルシウム水和物が生成され、土粒子間が固定される。
Ca(OH)2+SiO2+nH20→CaO・SiO2・(n+1)H20・・(4.1)
Ca(OH)2+Al203+nH20→CaO・Al203・(n+1)H2O・・(4.2)
 長期的には、生石灰は、式(5)の様に土壌中の二酸化炭素(CO2)と反応して安定する。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O・・(5)
 石灰安定処理を行う目的は、a)建設機械のtrafficabilityの確保、b)路体、路床、路盤、基礎地盤の強度または支持力の改善、c)埋戻し、裏込め等に用いる土質材料の圧縮性の
低減、d)建設発生土を改良することによる再利用化等である。これらを評価する指標として、一般にcone指数、California Bearing Ratio、一軸圧縮強度(qu)[kPa]が採られる(文献3)。
 強度は、対象土質や含水比、石灰系固化材の種類とその添加量等に左右される。従って、通常、室内土質試験(配合試験)を行い、所定の目標強度を満たす最適石灰系固化材の
種類と添加量を決める。試料土の性状は、含水比、湿潤密度(ρt)[Mg/m^3]、乾燥密度(ρd)=ρt/(1+w)[Mg/m^3]をparameterとする。
 改良土のpHは以下のcementを用いた場合と同様、Ca(OH)2が生成されるためアルカリ性を示し、改良土からの表流水や浸透水によって植生等周辺の環境に影響を及ぼす可能性も
有るため、改良土の周囲に覆土または敷土を設けるか中性化剤を加える石灰複合系固化材の研究が求められる。

 cementにH2Oが作用して凝結・硬化を生ずる水和反応は式(6)~(9)で並列的に進行し、各水和物を生成する。
3CaO・SiO2+H2O→xCaO・ySiO2・zH2O(C-S-Hと総称x/y=1.2~2.0,y/z≒1.5以下)+Ca(OH)2・・(6)
2CaO・SiO2+H2O→xCaO・ySiO2・zH2O+Ca(OH)2・・(7)
3CaO・Al2O3+H2O→4CaO・Al2O3・13H2O→3CaO・Al2O3・6H2O+CaSO4・2H2O→3CaO・Al2O3・3CaSO4・(31~33)H2O(ettringite)→3CaO・Al2O3・CaSO4・12H2O(モノサルフェート)・・(8)
4CaO・Al2O3・Fe2O3+H2O→4CaO(Al,Fe)2O3・xH2O→3CaO(Al,Fe)2O3・6H2O+CaSO4・2H2O・・(9)

 土にcement系・石灰系の材料(粉体またはmilk状添加)を混合することで土の工学的性質を改良する工法は、建設工事で多く採用されている。工事に先立って現場の土を用
いた室内配合試験が行われ、目標とする強度が得られる様にcement等の添加量の設計が行われる。cement混合工法において、現場強度と室内強度の比(quf/qul)、即ち、土と
cementをmixerで十分に混合した場合の強度と施工によって出来たcement混合土の強度の比は、現場cement添加量の設計にとって重要である。有明粘土地盤での生石灰深層混
合処理の工事でのquf/qulは、0.25~1.1であった(文献5)。

 私は技術職員時、作業をされる方に目的を説明し、当試験には乾燥密度、pHの測定項目が足りないと私は判断し、あなたも自学され技術職員に上記の目的を確められば宜し
いのではないか。
参考文献
1)土木学会;土木用語辞典、技報堂
2)小関 宣裕・桐山 栄・木戸 健二;石灰および石灰複合系固化材による地盤改良、Journal of the Society of Inorganic Materials,Japan 12,pp512-515、2005.
3)日本石灰協会編;石灰安定処理工法設計・施工の手引、p.1、2004.
4)小林一輔;最新コンクリート工学第5版
5)久保 博;セメント・石灰系固化材による土質改良のメカニズムと品質管理技術に関する研究、芝浦工業大学博士学位論文、平成31年3月
6)三浦哲彦、古賀良治、西田耕一;有明粘土地盤に対する生石灰を用いた深層混合処理工法の適用、土と基礎、Vol.34、 4、pp.5-11、1986.

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室内試験というのは、JISで規定される所謂本国のルールに則り行われる試験方法です。室内試験の特徴としては、理想的な条件下(養生温度、養生期間、養生方法)での、供試体強度から、セメント添加量を算出する方法になっています。
したがって、現地条件は上記の理想的な条件と一致することはまず無いはずです(当たり前)。

現地材料の含水比から、セメント添加量を補正しようとしているのかもしれませんが、技術員の方の目的は直接聞いてみたほうが投稿者様の理解にもつながるかと思います。