道路関係四公団民営化推進委員会での議論について

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ユーザー okadah の写真

学会誌2003年3月号に、道路関係四公団民営化推進委員会の委員として審議に参画された中村会員が同委員会における議論と先生の考えについて発表された。私としては、先生の基本的な考え方−路線の建設の必要性は可能な限り分析的に求めるべきであり、主観的或いは政治的な評価によってその継続や中止が決められるべきではない−には大賛成であり、具体的にそうのような評価が行われることととその一層の深度化が図られることを望むものであるが、この先生の発表についての会員の内外からの活発な意見がこの意見交換広場で行われることを期待したい。

コメント

ユーザー 匿名投稿者 の写真

道路関係4公団民営化論議に直接参加されていた中村先生の報告が掲載されたことは大変貴重なことと思いつつ、学会誌を読みました。
さて、本題についてですが、「分析的な評価方法を作り出し、その過程と結果を透明性高く示すという地道な途しかない」について、全くそのとおりであり、社会から期待されている土木への役割はまさにそのとおりだと認識しています。
また、「本州四国連絡橋については、短期間に巨費を投下して架橋したことは国民経済的に適切な資源配分であったとは言い難い」については、当時どのような需要想定がなされたのかは不勉強なためわからないのですが、一般的には、政治的にルートが設定されたとマスコミ報道により断定されているようです。土木側としてはやはりこのようなことは真摯に反省材料として受け止める必要があると思います。我々は土木界の中にいる訳ですが、土木のことをよくしらない立場から土木を見た場合を想像すると、土木計画学的に分析的に評価したとしても、少なくとも当面の間は「前もそんなようなことを言っていたじゃないか」というのが(データの精度・レベルを判断できないかもしれない)一般の方の素朴な反応ではないかと思います。世間から信頼を得るためには、時間はかかると思いますが、分析的な評価により、必要なものは必要、必要ないものは必要ない、を同じトーンで発信することが必要だと思います。前者を大きな声で、後者は小さな声で、では社会の信頼は得られないと思います。既に多くの公共事業について、計画中止などは報道されているところですが、これからも先生が書かれているように、政治的ではなく分析的評価に基づき判断していくことが重要と思います。

ユーザー 中川 義也 の写真

透明性高く示す、
というのは、どうすればいいんでしょうか?

私見をいえば、
一つの機関による需要予測で判断しないということだと思います。
また、需要予測担当者を土木系コンサルだけに依存せず、
証券会社や生保・損保系コンサル、あるいは新聞社も参画させて、
競争・討論させてみて、
最終的には、参加者の連名で予測結果を提示するのは如何なもんでしょう。

ユーザー 酒井 俊朗 の写真

「透明性を高く」というのは真面目に考えると本当に難しいと思います。私が、提起した首都機能移転テーマについて、私が紹介した本では、首都機能移転による経済効果が300兆、東京都の試算ではマイナス、であり、各々その算定根拠の詳細は不明です。かと言って、算定根拠を示せば判断できるか、というと、その算定根拠は種々の仮定から成り立っていると思われることから、その仮定の条件の確からしさまではなかなか判断できないと思います。順当に考えると、中川さんのおっしゃるとおり複数機関での検討によるということが妥当だと思われます。個人的には、道路で言えば無駄な道路は造らなくなったな、と国民が納得するように地道な努力を続けることかと思います。「トヨタのすごいところは、「トヨタの車は壊れない」というイメージをここまで国民が持つほどに「信頼性の高い車」をつくり続けることができたこと、いまどき、国産車はおろか、輸入車でもめったにトラブルは発生しないが、国民のイメージは現実以上に、信頼性についてトヨタを評価しており、それがブランド力である」、という記事を最近読みました。公共事業に対する批判についても、中川さん提案の方法などによるとしても、結果して無駄なことはしなかった、という時間はかかるでしょうけど、その積み重ねが大切だと思っています。中川さんへの回答にはなっていないですね。すみません。

ユーザー 中川 義也 の写真

いえいえ、でも、適当に改行しないと読みにくいです。

日本は手本にすべきいい企業があって良かったですよね。
自動車屋さんはみんなイメージ作りうまいですよ。最大の顧客が民間消費であるわけですし。
土木の最大の顧客はだれでしょうね。(なぁんて問題提起してみたりして...)

ユーザー 匿名投稿者 の写真

土木の顧客はもちろん、国民、納税者です。

ユーザー 酒井 俊朗 の写真

顧客=納税者、という理解で1点だけ気になることがあります。
小泉首相の「世論が必ずしも正解ではないことは歴史が示している」ではありませんが、社会資本の整備を考えてみた場合、顧客(=納税者)は現時点(自分の残りの人生程度のスパン)でのスコープしか持ち合わせていないのではないでしょうか?
その顧客の判断に100%委ねることが日本全体として見た場合、必ずプラスになるのか?が気になります。

社会資本の整備、については、国民の税金で行うことから、国民=顧客は当然としても、より時間軸の長い視野での判断、という部分も必要になると思っています。

このテーマの冒頭の問題提起にある、「政治的にではなく分析学的に」について、これは「政治的」をドロドロして胡散臭い雰囲気の、好ましくない言いまわしとして使用されていますが、社会資本整備については、よい意味、あるいは、本来的な意味で「政治的」に判断することも不可欠ではないかと思います。その判断をできるだけわかりやすく国民に伝えることが必要なのではないかと思います。

ユーザー okadah の写真

プロジェクトのアセスメントの中で最も問題が多いのは需要予測であることは疑う余地のないことです。需要予測の信頼性を高めるためには、具体的な完成プロジェクトについて、予測と実態の食い違いがどのような理由により生じたのかを追求することが有用であると思います。この事は予測をした人(機関)にとっては大変辛いことですが、それを避けていたのでは土木技術者が世間からの信頼を勝ち得ないと考えます。
中川さんの言われるように、多くの人の需要予測に参画して貰うことも大事なことでしょう。

ユーザー 宮田 卓 の写真

土木学会誌2003年3月号をお持ちでない方のために,中村英夫先生の論考の一部を引用します。

現在すでに供用されている高速道路の延長は約 7 000kmであり,それに加えて約 2 300kmの路線について整備計画が出され,そのうちの 2 000kmについては施工命令が出され,着工中の区間も多い。この約 2 300kmの路線のかなりの部分の建設は必要性は低く,建設中のものも進捗率の低いものは建設を凍結するべきである,との意見が何人かの委員より委員会で強く主張された。
筆者の考えは,これらの路線の建設の必要性は可能な限り分析的に求めるべきであり,主観的あるいは政治的な評価によってその継続や中止が決められるべきではないとするものであった。


また,「分析的方法」の内容として,次の3つの視点から道路計画を評価すべきであると主張されています。

 1.経済的効果
   利用者便益対費用を用いる。
   費用としては,残存建設費用を取り入れることにより,進捗率の高さが事業の
   継続か否かの評価に組み入れられるようにした。

 2.財務的効率性
   採算性を表す料金収入対費用(総建設費+維持管理費)を用いる。
   費用や効果は社会的割引率(4%)のもとで,現在価値に資本還元したもの。

 3.その他の社会的効果
   その他の計量し難い社会的効果。
   地域の広域連携への効果,生活や安全への効果,地域経済振興への効果に分け
   て表現する。
さて,「分析的方法により路線の建設の必要性を決める」ことについては,今日,一般論としてはほぼ異論はないと思います。

しかし,道路四公団民営化委員会で意見の違いが浮き彫りになったのは,他の多くの委員が民営化を前提とした「財務的効率性」に評価基準の中心を置いたのに対し,中村先生が「経済的効果,財務的効率性,社会的効果を総合的に勘案して決定すべき」とした点であったと思います。

この点について,土木屋であるか否かを問わず,日本の将来を考えて自分なりの意見をきちんと持つことが大切だと,私は思っています。

ここでは,もう少しこの「分析的方法」の中身を掘り下げてみましょう。

ユーザー 中川 義也 の写真

<他の多くの委員が民営化を前提とした「財務的効率性」に評価基準の中心を置いたのに対し,中村先生が「経済的効果,財務的効率性,社会的効果を総合的に勘案して決定すべき」とした点であったと思います。>

なるほど、他の委員との争点はそういうことだったのか、と感心しました。

なぜ、その他の委員は財務的効率性だけを見て、他の2者を嫌がったのか。
その理由は、経済的効果のベースとなる「交通量の予測」に対する胡散臭さ、
これに頼り切ってしまう危うさ、ですよね?

交通量の予測って、非常に興味を引く分野ですし、
一般の方にも数字で出てくるのでわかりやすいものです。
でも、アクアラインや本四では、ずれていた!と報道されました。
ずれていたら、やっぱり疑いは持つでしょう。

逆に、予測が少なすぎた(現状、多すぎる、即ち渋滞)という批判報道は聞きません。

交通需要予測、即ち経済的効果は過大に見積もられやすい、というイメージがあるのではないでしょうか?

ユーザー 中川 義也 の写真

理想的な形として、以下の話をあげておきます。

一般銀行ベースのプロジェクトファイナンス的な道路建設をする。
通行量に応じて、融資が焦げ付くか焦げ付かないか決まります。
採算が見込めるなら融資は出るけれども、見込めないなら作らない。
社会に対するその他の効果はわかるけれども、そんなの一円にもならない。

逆に、交通量予測をやる銀行内部エンジニアも俄然やる気が出ます。
別に命を懸けるわけではないけれども、首がかかります。

今の予測や建設プロセスは、誰も責任を取らなくていいから、
ファイナンス側と建設側が一体となり収支のバランスが取れたいいものを作るというインセンティブが働きません。

有料道路限定の話です。

ユーザー 酒井 俊朗 の写真

土木学会JSCE.JPは興味があるけど、かたっくるしくきまじめな投稿ばかりでキオクレする、との意見を小耳に挟みました。まあそこらへんは主観ですけどね。
さて、需要予測ですが、通常、道路を設置したい人が需要予測をするから、ほっとくと多めになるのは世の常かな、という気もしますが。ところで、需要予測というのは理論に基づいた演繹的な方法で算定されているのでしょうかね?これだけ、日本中に道路があるわけだから、条件(人口密度、車密度、既存道路の混み具合などなどいろいろ・・)の似通ったところを複数選んで、エイヤーと乱暴に平均するなどの帰納法的な推算でも、あたらずしもとうからず、的な予想にはなると思うんですが。こんなに道路があるのに、「はずす」のも結構難しい気がしてます。手法をよく知らない乱暴な意見ですみません。

ユーザー 中川 義也 の写真

kakaku.comの掲示板は、割とまじめですよ。
私も適当にやっています。早くもっと客が来ないかな。

私見ですけど、需要予測は、
自然物理学的な法則の上で成り立っているものではなく、
経済学と心理学が基礎です。
演繹的か帰納的か、は、両方です。
理論に基づいて独自計算を行い、似たような地域の過去の状況と比較する
で、どちらからも齟齬が無いようにする、という感じでしょうか。

エイヤー、ってのは一番嫌いな表現です。
そうやる人はよくいますが、実際は一つ一つ積み上げます。
皆さんと一緒です。

「予測ビジネスで儲ける人々」って本の中にも、
交通需要予測ビジネスのことが書いてあります。悪口っぽく。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

中村先生のご見識は正論だと思いますし、賛成以外の何物でもありません。
そこで、他の委員と永田町方面での意見に対し意見を2つ。
1.ファミリー企業追求をなぜ急ぐのか?
早晩民営化されれば解決するのではないですか?
それとも私怨がおありなのでしょうか?
そもそも先輩のJRの松田さんにお聞きすればわかることでしょうに。
道路整備を進めるために、民営化された公団が道路整備にどうかかわるのかという喫緊の課題を十分に議論すべきでしょう。
2.JH分割反対論のなぞ。(これは中村先生も同意見でしょう)
永田町方面では分割反対のようです。
過大設計、入札方法改善、ファミリー企業問題、サービス向上等いずれも民営化と分割によって自ずから解決するでしょう。
分割は最低の2分割でも十分です。
我々は比較対照することができれば、いろんな事が見えてきます。
役員数が増えるとか、研究体制とかはJRの例が参考になるでしょう。
分割でサービスが向上することはJRで実証済みです。
路線が競合していなくても、比較されることが無形のプレシャーとなっているわけです。
土木学会の方々良く考えて、分割問題がどうなるかウォッチしていきましょう。
               (The Roadbuster)

ユーザー 中川 義也 の写真

ご投稿ありがとうございます。

たとえば
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/special/special50/special50_07.htm
などには、公正取引委員会によるJHファミリー企業改善要求報道が紹介されています。
急がなければいけない状況なのではないですか?

それとも、おっしゃるように民営化によってまとめて解決できるならば、
その場合のメリットはなんですか?

ユーザー 中川 義也 の写真

http://jsce.jp/comments.pl?sid=126&cid=218からコピー)

このスレで展開された、これまでの議論をまとめておきます。

・路線建設の必要性は可能な限り分析的に求めるべきであり、主観・政治的判断に委ねるべきではない。
 ・分析的な評価手法を作り、過程と結果を透明性高く示す。
  ・透明性を高く示すとは、どうすればいいのか?
   ・証券や生保・損保なども混ぜて、予測手法について討論してみては?
   ・トヨタ自動車のような「国民からの信頼性」を得るにはどうすればいいか?
 ・「政治的」でもいい場合もある。ようは、以下にわかりやすく国民に伝えるか、なのでは?

・これまでの反省(本四の資源配分など)は重要
・必要、不必要を同じトーンで表明していくべきだ。(これまで、不必要というのは言って来なかった事)

・分析的手法の基盤にある「交通量予測」には、これまでの報道で過大に見積もられたというイメージがあるのではないか?
 ・道路を作りたい人が需要予測をすれば、予測が大きくなるのは自然。

まとめれば、「中村先生の方向性に賛成する一方で、社会からの批判にはこのように応じたい、 という建設的な提案が2,3見られた」、というところでしょうか。