軟弱地盤に対してセメント安定処理を施すと、土中の三価クロムが六価クロムに変わって流出する危険性が指摘されています。 セメント混合するとなぜ六価クロムが溶出するのでしょうか?化学式等で解説していただけると幸いです。 セメントでなく、石灰混合にすると六価クロム溶出の危険性は減りますがこれもなぜでしょうか?ご回答のほどよろしくお願いいたします。
セメント改良土から六価クロムが溶出するメカニズムは、土とセメントを混合し、固化する過程で、水和反応によりセメントから溶出した六価クロムが同時に生成する水和物で十分固定できなかった場合に発生し、火山灰質粘性土に代表される水和物阻害が著しい土を改良した場合に土壌環境基準を超過して溶出する場合があると考えられています。 土の中にも三価のクロムはありますが、三価のクロムは非常に安定したものなので、三価のクロムが六価のクロムになるためには大きなエネルギーが必要とされます。 セメントはその原料に石灰石や粘土などを使用するため、それら原料中にクロムが含まれており、製造過程において高熱で焼かれるために三価のクロムが酸化されて六価のクロムとなり、セメント中に含有されることになります。 通常のセメント改良では水和反応が十分に行なわれれば、六価クロムもセメントの水和物中に固定され溶出しないのですが、一部の土では、水和反応を阻害するものがあり、このような場合にセメント改良土から六価クロムが溶出する場合があるということです。 したがって、石灰の場合は、このような六価クロムを含んでいないのでほとんど溶出しないということです。 なお、セメント改良土からの六価クロム溶出に関する検討報告書「セメント系固化処理土に関する検討最終報告書(案)」が次の国土交通省のホームページに掲載されていますので参照してください。http//www.mlit.go.jp/tec/kankyou/kuromu.html
「セメント系固化処理土に関する検討最終報告書(案)」では阪本さんが指摘されてるメカニズムが示されていますが、データをよく見るとセメントの水和を著しく阻害するはずの腐植土でも六価クロムの溶出が激減しています。ということは、水和の阻害で六価クロムが出やすくなるが、そこに酸化されやすいものがあると、酸化剤である六価クロムが三価になって、六価クロムが減る、という現象も生じているように思えます。ですから、六価クロムが出るか、出ないかという現象はもうちょっと複雑だと思います。
なお、最近、土中の三価クロムが六価になったり、セメント中の三価クロムが六価になったりというような論文等を読むことがあるのですが、阪本さんのご指摘のように、そう簡単には三価が六価になることはないはずです。そもそも六価クロムが危ないのは、酸化剤としての力が大きいからであり、もし三価クロムを六価にするような物質があるとしたら、そっちの方がよほど危ないわけです。
確かに匿名さんのおっしゃるように六価クロムの溶出のメカニズムに関しては複雑だと思います。六価クロムが溶出するとされている土は、殆どが火山灰質粘性土の改良土です。報告書ではこのような土に関して溶出が起こるメカニズムに注目しているわけですが、六価クロムは還元されやすく、植物の腐植等を多く含む土等では、植物のフミン酸やタンニンなどが還元性を有しているため、このような腐植等により六価クロムが容易に還元され三価のクロムになってセメントの水和反応が阻害されても六価クロムの溶出が抑制されるようです。セメント改良土の六価クロム溶出抑制の一手法として高炉セメントB種を使用するのも、高炉セメントに含まれるスラグの硫黄分が還元剤として働くためだと考えられています。また、植物の腐植は重金属類と錯体を形成して不溶化する効果もあるという文献もあります。 いずれにしても、土の雰囲気が還元状態か酸化状態であるか、土の持っている有機物の腐植の状態、土粒子の吸着特性や還元性を有する鉄などの含有の有無、セメントの六価クロム含有量等様々な要因が絡まって溶出したり、しなかったりするもののようです。ですから、溶出しにくいとか溶出しやすいということは土と固化材の組合せで大体分かるのですが、どのような組み合わせにおいても100%溶出しないと言うことがいえないため、セメントおよびセメント系固化材で改良するときには事前に配合試験をして六価クロム溶出の有無を確認するようにしています。
阪本さんのご指摘されていたように,この問題の原因特定は難しいです。 私も,火山灰質粘性土の六価クロムの問題を扱っておりました。 正直,原因についてはわかりませんでした。すごく複雑で内部で化学反応が 天秤の釣り合いのように働いているのではと考えています。 一概に定式化や化学式は立てられないのではと思います。 参考までに釣り合いとは,セメントの水和反応,粘土鉱物の表面電荷等だと考えます。 釣り合いの崩れたところが,六価クロムの溶出につながると考えています。 ただし対策としては阪本さんのおっしゃっておられたように高炉セメントB種を 使うことによって火山灰質粘性土以外はある程度,対応が可能かと思います。 あくまでも私の経験ですが・・・ またセメントと石灰の違いなのですが,焼成温度が違うためにセメントのほうに 六価クロムが生成してしまうといった理由も言われています。 三価クロム(通称クロム)は自然界に当たり前のように存在しています。 三価クロムの存在しない材料を用いてセメントを作ることは不可能ですし, 焼成温度を下げることもできません。 そこでセメント協会は20mg/kg以下という基準を出し規制しています。
すみません質問に便乗させてください。某自治体文書に改良土の六価クロム溶出試験実施し、土壌環境基準を満足する事という一連の通達内容の他に、その地盤改良工に「使用するセメント・固化材自体の溶出試験を実施し、その結果が土壌の汚染に係る環境基準を満足する事・・・」という記述があり解釈に苦慮しております。土壌環境基準は「土」に適用されるのであってセメントなどの製品は範疇には含まれてしまうものなのでしょうか?。
国土交通省の通達では、セメントや改良材そのものを試験するようには規定していないはずです。あくまでも、改良した土質材料が対象のはずです。セメント単体で試験したら、多分全てアウトになるのではないでしょうか?
参考資料:土木学会コンクリートライブラリー111号 「コンクリートからの微量成分溶出に関する現状と課題」2003.05
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#793 セメント改良土からの六価クロム溶出について
セメント改良土から六価クロムが溶出するメカニズムは、土とセメントを混合し、固化する過程で、水和反応によりセメントから溶出した六価クロムが同時に生成する水和物で十分固定できなかった場合に発生し、火山灰質粘性土に代表される水和物阻害が著しい土を改良した場合に土壌環境基準を超過して溶出する場合があると考えられています。
土の中にも三価のクロムはありますが、三価のクロムは非常に安定したものなので、三価のクロムが六価のクロムになるためには大きなエネルギーが必要とされます。
セメントはその原料に石灰石や粘土などを使用するため、それら原料中にクロムが含まれており、製造過程において高熱で焼かれるために三価のクロムが酸化されて六価のクロムとなり、セメント中に含有されることになります。
通常のセメント改良では水和反応が十分に行なわれれば、六価クロムもセメントの水和物中に固定され溶出しないのですが、一部の土では、水和反応を阻害するものがあり、このような場合にセメント改良土から六価クロムが溶出する場合があるということです。
したがって、石灰の場合は、このような六価クロムを含んでいないのでほとんど溶出しないということです。
なお、セメント改良土からの六価クロム溶出に関する検討報告書「セメント系固化処理土に関する検討最終報告書(案)」が次の国土交通省のホームページに掲載されていますので参照してください。http//www.mlit.go.jp/tec/kankyou/kuromu.html
#801 もうちょっと複雑
「セメント系固化処理土に関する検討最終報告書(案)」では阪本さんが指摘されてるメカニズムが示されていますが、データをよく見るとセメントの水和を著しく阻害するはずの腐植土でも六価クロムの溶出が激減しています。ということは、水和の阻害で六価クロムが出やすくなるが、そこに酸化されやすいものがあると、酸化剤である六価クロムが三価になって、六価クロムが減る、という現象も生じているように思えます。ですから、六価クロムが出るか、出ないかという現象はもうちょっと複雑だと思います。
なお、最近、土中の三価クロムが六価になったり、セメント中の三価クロムが六価になったりというような論文等を読むことがあるのですが、阪本さんのご指摘のように、そう簡単には三価が六価になることはないはずです。そもそも六価クロムが危ないのは、酸化剤としての力が大きいからであり、もし三価クロムを六価にするような物質があるとしたら、そっちの方がよほど危ないわけです。
#802 Re:もうちょっと複雑
確かに匿名さんのおっしゃるように六価クロムの溶出のメカニズムに関しては複雑だと思います。六価クロムが溶出するとされている土は、殆どが火山灰質粘性土の改良土です。報告書ではこのような土に関して溶出が起こるメカニズムに注目しているわけですが、六価クロムは還元されやすく、植物の腐植等を多く含む土等では、植物のフミン酸やタンニンなどが還元性を有しているため、このような腐植等により六価クロムが容易に還元され三価のクロムになってセメントの水和反応が阻害されても六価クロムの溶出が抑制されるようです。セメント改良土の六価クロム溶出抑制の一手法として高炉セメントB種を使用するのも、高炉セメントに含まれるスラグの硫黄分が還元剤として働くためだと考えられています。また、植物の腐植は重金属類と錯体を形成して不溶化する効果もあるという文献もあります。
いずれにしても、土の雰囲気が還元状態か酸化状態であるか、土の持っている有機物の腐植の状態、土粒子の吸着特性や還元性を有する鉄などの含有の有無、セメントの六価クロム含有量等様々な要因が絡まって溶出したり、しなかったりするもののようです。ですから、溶出しにくいとか溶出しやすいということは土と固化材の組合せで大体分かるのですが、どのような組み合わせにおいても100%溶出しないと言うことがいえないため、セメントおよびセメント系固化材で改良するときには事前に配合試験をして六価クロム溶出の有無を確認するようにしています。
#804 この問題は難しいですね。
阪本さんのご指摘されていたように,この問題の原因特定は難しいです。
私も,火山灰質粘性土の六価クロムの問題を扱っておりました。
正直,原因についてはわかりませんでした。すごく複雑で内部で化学反応が
天秤の釣り合いのように働いているのではと考えています。
一概に定式化や化学式は立てられないのではと思います。
参考までに釣り合いとは,セメントの水和反応,粘土鉱物の表面電荷等だと考えます。
釣り合いの崩れたところが,六価クロムの溶出につながると考えています。
ただし対策としては阪本さんのおっしゃっておられたように高炉セメントB種を
使うことによって火山灰質粘性土以外はある程度,対応が可能かと思います。
あくまでも私の経験ですが・・・
またセメントと石灰の違いなのですが,焼成温度が違うためにセメントのほうに
六価クロムが生成してしまうといった理由も言われています。
三価クロム(通称クロム)は自然界に当たり前のように存在しています。
三価クロムの存在しない材料を用いてセメントを作ることは不可能ですし,
焼成温度を下げることもできません。
そこでセメント協会は20mg/kg以下という基準を出し規制しています。
#815 Re:この問題は難しいですね。
すみません質問に便乗させてください。某自治体文書に改良土の六価クロム溶出試験実施し、土壌環境基準を満足する事という一連の通達内容の他に、その地盤改良工に「使用するセメント・固化材自体の溶出試験を実施し、その結果が土壌の汚染に係る環境基準を満足する事・・・」という記述があり解釈に苦慮しております。土壌環境基準は「土」に適用されるのであってセメントなどの製品は範疇には含まれてしまうものなのでしょうか?。
#816 セメントは対象外では?
国土交通省の通達では、セメントや改良材そのものを試験するようには規定していないはずです。あくまでも、改良した土質材料が対象のはずです。セメント単体で試験したら、多分全てアウトになるのではないでしょうか?
参考資料:土木学会コンクリートライブラリー111号 「コンクリートからの微量成分溶出に関する現状と課題」2003.05