高速道路の無料化について

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(遅くなりましたが,こちらのコメントでお約束したとおり,意見交換広場に投稿します。)

民主党が「高速道路の無料化」をマニフェスト(政権公約)に盛り込む方針を打ち出したことをきっかけとして,マスコミをはじめ各方面で議論が盛り上がっています。賛成,反対の両方の意見が出されているようですが,日本の交通体系の根幹をなす高速道路の制度設計について,一般の人々を巻き込んだ議論が行われることは大変有意義と考えられます。

前2回の投稿は,特定の政党の動きを「一般記事」として紹介したものですので,コメントが難しかったと思います。そこで今回は,民主党のマニフェストを離れて[注1],「これからの日本の高速道路の料金制度はどうあるべきか」という観点で,皆さまの率直なご意見をお聞かせいただければ幸いです。

注1: 民主党も旧社会党系の議員などが反対し一枚岩ではないようですし,無料化の主張は自民党の議員や地方の首長にもあります。また,無料化の主張自体は決して新しいものではありません。したがって,「民主党のマニフェストに賛成か反対か」ということではなく,一般論として述べてください。

コメント

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高速道路無料化と言っても、財源は必要なわけで、一般論でということですが、財源は民主党案のように国民の税金でということになるでしょう。
税金で賄うとなると、効率的に物事を進めるインセンティブが働くのかどうか。
やはり、民営化の方が経営努力をしていただけるのではないかと思います。
既に多くのところで出ている意見ですが、高速道路を使用する人も使用しない人も一律、というの不公平感はぬぐえないですし。
ところで、高速道路の話になると必ず、日本は欧米に比べて高い、というステレオタイプの意見になりますが、山間地が多く、地形が急峻という地形的要因があまりにも違う条件で比べても・・、という基本的なところは国民に伝わっているんでしょうかね??
なんで東京の家は○○(一般に田舎と言われているところ)県と比べてこんなに高いんだ、って真剣に悩んでいる人はいないんじゃないんでしょうか。それと根本的には同じで、日本で「広大なアメリカ」と同じ道路を作れば高くて当然では。
道路公団のネガティブなところのみがクローズアップされ(改めるべき点は改めるのは当然としてです、もちろん)、基本的なところが国民に伝わっているのかが気になります。
驚くべきことですが、「北欧は福祉が充実しているかわりに消費税は25%とかである」ということを知らない大人もいるのが現在の日本の実状なので。ちなみに、こういう方々に「福祉を充実せよ」、と叫ばれ、かつ「消費税アップ反対」と叫ばれたら、たまったもんじゃないでしょうね。最後は話題がずれました。すみません。

ユーザー 宮田 卓 の写真

せっかくコメントをいただいたのに,レスが遅くなりすみません。

酒井さんのおっしゃることは,すべての公共部門の活動に共通して言えることで,ケースバイケースで国民にとって便益が最大,費用が最小となる方法を選択すればよいと思います。民営化もその有力な候補です。

ただ,道路事業の民営化と有料制は必ずしもセットではなく,イギリスにはPFIで無料道路を建設・管理し,交通量に応じて公共セクターが道路事業者にその費用を支払う「シャドウトール(shadow toll;影の料金)ロード」のような仕組みもあります。また,高速道路だけでなく一般道路についても,PFIやPPPを活用して建設・管理等のコストを下げることが可能です。

高速道路無料化の主張のポイントは,直接負担から間接負担に切り替えることによって,高速道路の稼働率を向上させ,道路システム全体の費用対便益を高めることにあります。日本では高速道路の料金が高いため,高速道路が十分に活用されず,その負荷が一般道路に及ぶとともに,国全体での輸送効率を低下させています。

なお,「高速道路を使用する人と使用しない人の不公平感」というのは,今日のようにあらゆる生活物資が高速道路を経由して運ばれている時代には,当たっていません。むしろ,政治家はきちんと国民に説明して納得してもらうべきでしょう。

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「高速道路の無料化」について,参考Webサイトをいくつかご紹介します。

今,サーチエンジンで「高速道路の無料化」というキーワードで検索すると,新聞報道や社説,個人サイト,掲示板に書き込まれた意見など,大量の情報がヒットします。多くの国民の関心が集まっているテーマなのでしょう。

ところで,小泉政権が道路四公団民営化の方針を打ち出したときには,マスコミやWebサイトでは「道路族議員,国土交通省,道路公団,ゼネコンはけしからん」,「タヌキとクマしか通らないような高速道路ばかり造っている」,「不採算の高速道路は即刻建設を中止せよ」といった,非常に感情的な発言が横行していました。しかし,最近の議論は,これからの日本の高速道路の仕組みを一体どうしようかという,グランドデザインを志向した建設的な議論に変化しつつあり,この「高速道路の無料化」もそうしたプロセスの中で,代替案の一つとして登場したものです。

昔の土木屋さんなら,「素人の議論じゃないか」と片付けてしまうところですが,素人が国土・交通政策に関心をもって,さまざまな発言をするようになったところに,「新しい土木」の時代の到来を感じます。
■政治家

高速無料で景気刺激を 試算表:道路四公団の長期債務償還計画(案) (衆議院議員 岩國哲人氏)

「日本中の有料道路を明日から無料にする,その費用は年間わずか2兆円。どこまで走ってもタダ。そうなれば,自動車を買おうかと思う,田舎に遊びに行く,JRや飛行機も対抗上,値下げや家族旅行優遇などでサービスが向上する。(中略)これを構造改革と言わず,生活革命と呼ばず,なんと言うのか。」
民営化は何に向けての一里塚? (高知県知事 橋本大二郎氏 知事のメールマガジンNo.37)
「高速道路も本来は一般の道路と同じ様に無料であるべきですから,この際,高速道路の無料化を提案して,実現していくのが本当の意味での構造改革だと思います。」
高速道路はシビルミニマム 都市と地方の格差縮小へ全国ネット不可欠 詳細版 (新国土形成研究会
平松守彦・前大分県知事のシンポジウムでの発言が掲載されています。
「日本の場合は高速料金が有料だというところに問題があります。ドイツやイギリスの高速道路は無料です。高速道路の国費率は17%ですが,空港は4〜5割,整備新幹線や都市鉄道では8割が無利子のお金です。高速道路はシビルミニマムですから,国費を投入し料金をそんなに上げないで整備していく必要があります。」
■ジャーナリスト

Mainichi INTERACTIVE 嶌信彦のホームページ
・平成13年11月26日 [111]明日の予測 高速道路を無料化せよ!
・平成14年 7月26日 [135]民営化は道路改革か?
・平成14年12月 9日 [148]高速料金は無料,公団・道路財源は廃止し,一般財源で建設を
Googleで「site:www.mainichi.co.jp 嶌信彦 高速道路」を検索して表示可

ハイウエーからフリーウエーに (萬晩報 中野有氏,伴武澄氏ら)

■掲示板

高速道路の無料化 (livedoor BBS)

今後の道路政策のあり方について (国土交通省道路局 道路政策モニターホームページ

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(岡崎康生さんのご意見高速道路の無料化は理解できないへのコメントをこちらに投稿します。)

本トピックが,もともと民主党がマニフェスト(政権公約)案に「高速道路無料化」に掲げたという報道を元にしていますので,ややこしい話になっているようです(土木学会でこのテーマを扱うと,蜂の巣をつついたようになることは想像していましたが)。

まず,私は直ちに全国の有料高速道路をタダにしたらよいとは言っていません。私の問題提起は,「償還主義を根拠として高速道路に課金することは,もはや限界ではないか」という点にあります。過去のコメント「一般記事に投稿しておきました」でも述べましたが,これからは課金の目的を,建設費の償還から交通需要マネジメント(TDM)にシフトすべきだと考えます。

その意味で,岡崎さんのコメントの主旨には大筋で賛成です。シンガポールやロンドンのロードプライシング,ドイツのアウトバーンのトラック有料化など,先進国ではTDMやモーダルシフトのための課金が進みつつあります。その背景には,地球環境への関心が高まったこと,日本の新幹線の成功に倣い欧州で自動車から高速鉄道への回帰が進んだこと,そして情報通信技術の進歩により容易に車両単位の課金が可能となったことなどがあります。こうした考え方は世界に広がり,やがて日本にも導入されるでしょう。東京都でもロードプライシングの検討が行われています。私もTDMを目的とした課金自体には賛成です。

参考:TDM〜東京の交通をもっとスムーズに〜(東京都)

ただ,ここで注意すべきことは,前述のシンガポールやイギリスにおいて,高速道路は原則無料,つまり建設費の償還の目的で通行料金を徴収していないという点です。したがって,これらの国々では高速道路であれ一般道路であれ,混雑の回避や環境負荷の軽減のために最適な課金が可能です。

ところが日本の場合には,まずベースに高速道路の償還のための通行料金がありますから,必ずしも,高速道路を含めた最適な交通配分を実現するような,自由な価格設定ができません。例えば,次のようなことが起こります(話を単純化してあります)。

A市の市街地で慢性的な交通渋滞が発生しており,路線バスの遅れが恒常化し,住民のマイカー依存が高まる一方である。A市には市街地を通過する無料の一般道路と,海岸を通過する有料高速道路(料金1,000円)があるが,A市を通過するトラックの多くは高額な高速道路を敬遠し,市街地に流入し環境悪化を招いている。もちろん,環境負荷は高速道路の方が小さい。

ある時,A市では市街地におけるTDMを実現するため,市街地に入る車両にロードプライシングを行うことを検討した。調査の結果,一般道路で800円の課金を行えば通過車両の多くが高速道路を利用し,市街地の混雑が回避されることがわかった。

ところが,このロードプライシング案について,住民から反対意見が相次いだ。「800円では,不可避なマイカー移動の際にあまりにも高すぎる。これでは地域経済が停滞してしまう」と。

別の調査結果によれば,もし高速道路が無料なら,一般道路200円,高速道路300円の課金でも,十分に環境負荷を軽減し,市街地の混雑を軽減できることがわかった。これなら住民は負担できるというが,制度上無理だ。結局,ロードプライシングによるTDMは見送りとなり,代わりに高速道路に並行して無料の一般道路をもう一本建設するため,国の財源の手当てを受けられるよう,陳情に行くことになった。


もちろん,現行制度でも環境ロードプライシングは行われていますが(首都高速阪神高速),限定的です。同様の問題は各地にあるわけですが,一般道路を含めた道路ネットワーク上の交通量の最適化を同じ手法で解決しようとすると,財源の問題で矛盾が生じます。

土木学会誌 Vol.88 に,「阿賀野川ゆとり通勤大作戦」の結果が紹介されています。ご承知の方も多いと思いますが,新潟県の一般国道7号新新バイパス(無料の自動車専用道路)と日本海東北自動車道(有料の高速自動車国道)が並行する区間で,平成14年9月30日(月)〜10月4日(金)の5日間,日東道の通行料金を半額にする社会実験を行ったものです。この実験の結果では,日東道の交通量が倍増し,慢性的な渋滞に悩まされていた新新バイパスの渋滞が大幅に緩和しました。

参考:対談「地域の柔軟な発想が道の未来を変える」
(東京大学大学院の家田仁教授が,「道は使われてこそ,価値が生まれる」として,この社会実験の結果を評価しています。)

このような料金引き下げによる道路の有効活用は,新規道路の建設や拡幅による渋滞緩和という従来の手法に代わり,もっと注目されていくでしょう。財政難の時代にあっては,望ましいことと思われます。また,ETCのような情報通信技術の進歩により,柔軟な課金によって道路ネットワーク全体の利用効率を向上させることは,十分に可能となっていますし,そのための理論的分析も進んでいます。

参考:動的な限界費用に関する理論的分析 解説資料(東京大学生産技術研究所 桑原雅夫教授)

ただ,上記の社会実験には「料金が半額,交通量が2倍で,通行料金の減収はなかった」というハッピーエンドの落ちがありますが,同様の手法を実際に全国に適用した場合には,通行料金の減収が発生する箇所も当然あるでしょう。前述のロードプライシングの例も同様ですが,渋滞の緩和や環境負荷の軽減という外部経済効果を最大化するような価格設定が,必ずしも有料道路事業者の通行料金収入を最大化するとは限りません。その場合には償還主義の原則は成り立たず,税金の投入が必要です。

このことが,私が「償還主義の限界」を指摘する理由です。

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親コメント「償還主義がTDMを難しくする」で触れた,首都・阪神高速道路における環境ロードプライシングについて,読売新聞に社説が掲載されていますのでご紹介します。

・平成15年8月24日 読売新聞[注1] 社説 道路公害 環境対策の名が泣いている

内陸部の大気汚染の改善にほとんど役立っておらず,環境基準も達成されていないことを指摘しています。その理由として,値下げの対象をETC搭載の大型車に限定していること(大型車全体の2〜4%),値下げ幅が小さいことなどを挙げています。

注1: 「社説・コラム」一覧で平成15年8月24日付を選択して表示可

ユーザー 岡崎康生 の写真

小論「高速道路の無料化は理解できない」について、宮田卓さんの御賛同を頂き、有難うございました。
なお、「有料道路」の制度は、交通流をコントロールするTDMの方策としても、勿論有効ですが、その過程で得られる財源を、道路整備の拡充に充てることができる、という意味でも極めて有効だと思います。特に、欧米諸国に比べて、道路の整備水準が著しく劣っている我が国では、この財源を有効に活用すべきです。先の小論でも述べましたが、大都市圏で、高規格な環状道路が一本も完成していない国は、世界の主要国の中で日本だけですし、全国的にも、途切れ途切れで繋がってもいない高速道路ばかりです。
このようなインフラの整備水準では、いずれ我が国の経済活動は、国際競争に勝てなくなってしまいます。我が国は、資源も土地もなく、知恵と工夫で高付加価値のものを作って、生きていくしかない訳ですから、経済システムの効率で負けていたのでは、まず勝負にはなりません。
「償還主義」云々については、色々議論が有ると思いますが、とにかく、「有料道路」によって、TDMができ、その上、我が国の遅れた道路整備が改善されるという事であれば、大変よい事だと思うのですが、如何でしょうか。御賛同いただきたいと思います。

ユーザー 宮田 卓 の写真

TDMの目的で高速道路・一般道路を問わずロードプライシングを行うことは,合理的な金額の範囲内であれば賛成です。また,その収入を道路整備(環境対策を含む)に充当することにも賛成です。しかし,ロードプライシングの必要性がある地域は大都市圏のみです。日本の大部分の地域では,無料か,現在よりもはるかに安い通行料金を設定した方が,巨額の投資によって建設された高速道路の稼働率が高まり,そのことによって一般道路の交通環境が大幅に改善します。

さて,前回のコメントでは触れませんでしたが,岡崎さんのコメントにある「わが国の道路の整備水準は欧米先進国に比べて著しく低く,今後も高速道路の整備を続けなければならない」という主旨にも,全く同感です。私は日本の国土の広さや経済規模からいって,最終的に11,520km,いや14,000kmの高規格道路を整備するとしても,欧米の水準と比べて贅沢でもなんでもないと思っています(ただし,規格が現状のままでよいとは思っていません)。

例えば,主要国の道路総延長に占める高速道路総延長の割合(1998年)[注1]は,ドイツ1.7%,米国1.4%,フランス1.1%,イタリア1.0%,イギリス0.9%に対し,日本はわずか0.6%です。ここまでを聞いた人は大抵,「欧米には勝てないよ」といいますが,何とお隣の韓国は2.4%だというと,「韓国よりも低いのか」と驚きます(韓国の皆さんごめんなさい)。韓国の「東名・名神」に当たる京釜高速道路は8車線ですが,日本には8車線の高速道路は,首都高速道路の合流部を除いてまだありません。日本の道路財源は年間約12兆円(一般道路9.3兆円,高速道路2.6兆円)と世界最高水準にあり,道路延長も欧州諸国を超えていますが,高速道路の整備状況では明らかに遅れを取っています。

ところが,国民の意識はこうした客観的なデータとはかなり乖離があります。平成15年7月に道路四公団民営化推進委員会が実施した世論調査の結果では,「採算が合わない高速道路は建設すべきでなく,早く通行料金の値下げをすべきだ」との回答が76.8%を占めています。これを委員会や多くのマスコミは,「高速道路の建設に歯止めをかけるべきとの世論の表れ」と評していますが,やや短絡的な感が否めません。

なぜなら,この調査の前提として,多くの回答者に「高速道路は有料であり,全国料金プール制で建設するもの」という暗黙の了解があるからです。もし高速道路の無料化を選択肢として与えたら,まったく違う結果となったのではないでしょうか。

この調査結果は非常に示唆に富んでいます。高速道路の利用頻度では,「年に数回程度利用している」が53.5%,「まったく利用していない」が20.7%です。高速道路の料金については,「高い」が50%,「やや高い」が25.1%という結果が出ており,通行料金が高く,高速道路が有効に活用されていない実態が浮き彫りになっています。

参考:高速道路の建設に関する基準等世論調査・単純集計結果速報(道路関係四公団民営化推進委員会事務局)

日本の高速道路整備に有料道路制度が果たしてきた役割は大きいですし,今日その成果は誰も否定しないでしょう。しかし,国民の支持を得ながら今後も同じ手法で高速道路を造り続けることは,もはや困難です。多くの国民の支持を得て高速道路整備を続けるには,高速道路を誰もが気軽に使える身近なインフラとして生まれ変わらせ,稼働率を向上させることが不可欠でしょう。そのためには,高速道路の料金制度の議論は,避けて通ることができません。

[注1] 出典:World Road Statistics 2000

ユーザー 岡崎康生 の写真

宮田卓さんから重ねて、的確なコメントを頂き、また、御賛同も頂き、有難うございました。
地方部の、利用の少ない高速道路では、料金を安くしたり、無料の高速道路にしたりといった、色々な工夫が必要であることは、宮田さんの御指摘の通りだと思います。しかし、再三申し上げている通り、また、宮田さんからもご賛同いただいた通り、日本の道路の整備水準は著しく遅れており、更に、道路は、全体が繋がったネットワークとなって始めて機能することからも、利用の著しい道路から得られる料金を活用して、ネットワーク全体の整備水準を上げるという、「有料道路」の仕組みは、やはり、どうしても必要だと思います。
料金を活用してネットワーク全体の整備水準を上げるという、「有料道路」の仕組みは活用しながら、TDMなど、料金のかけ方を色々工夫し、利用者の視点に立った整備を進めていく、という考え方が良いのではないかと思いますが、如何でしょうか。

ユーザー 宮田 卓 の写真

有料道路の仕組みがあることは,悪いことでも何でもありません。また,有料道路制度は,高速道路が無料である米国や英国,ドイツなどを含め,ほとんどの国にあります。問題は制度の使い方であり,道路整備特別措置法の精神に則り,あくまで特別措置として限定的に適用すればよいのではないでしょうか。

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検索エンジンでここにたどりつきましたが、まったくの素人の意見を言わせて下さい。

私は時たまアメリカ西海岸に数週間から数ヶ月出張することがあります。もうご存知の方も多いので知ったかぶりするつもりはないのですが、ここでは高速道路はフリーウェイという名称の通り無料です。だから、サンフランシスコあたりからサンノゼ近くまで食事に行ったりもっと遠くのギルロイのアウトレットモールに買い物に行くことも普通です。こういった都市間人々の交流がもたらす恩恵は計り知れないのではないでしょうか?こういう議論をしはじめると、USAとの道路整備状況の差だとかいい始める方がいらっしゃいますが、今の東京近郊の高速道路が全て無料だと考えるとどうでしょう?神奈川から埼玉またその逆の人の流れが商業的な活性化をもたらしませんか?

またどなたかが高速道路を無料にしたら両方混んで大変との議論も見ましたが、その逆で高速道路の通行料を節約するために深夜の一般道にあふれる大型トラックの問題についてはどう考えるのでしょうか?地域が活性化し危険なトラックの問題も片付くのなら自動車オーナーは年間1万程度の税金は出すと思いますよ。商用車も年3万ぐらい取れば1兆円程度の財源が確保できると聞きました。この財源でなんとか無料化出来ませんかね。

利用者の利便性の議論は絶対必要です。

ユーザー 宮田 卓 の写真

コメントをいただき,ありがとうございます。

「まったくの素人」とおっしゃっていますが,そんなことはありませんよ。通行料金を節約して深夜の一般道にあふれるトラックの問題は,正にそのとおりで,日本の高速道路が抱えている大きな問題の一つです。

次の資料に,高速道路の分担率の国際比較が出ていますが,欧米諸国では20〜30%の車が高速道路を利用するのに対して,日本では僅か11%です。同資料の23ページ以降には,高速道路の分担率を上げるための方策として,(1)ネットワークを充実させる,(2)インターチェンジの間隔を短くする,(3)全国一律の料金水準を止め料金を弾力化(割引や無料化など)する,の3つが提案されています。

参考:社会資本整備審議会道路分科会 基本政策部会資料(国土交通省)
自動車専用道路の分担率の諸外国比較
自動車専用道路の分担率を上げるための方策

読み物としては,過去のコメント「償還主義がTDMを難しくする」でも引用しましたが,東京大学の家田仁先生の対談が参考になります。

参考:対談「道は使われてこそ,価値が生まれる」(東京大学大学院・家田仁教授)

ただ,ご発言の「東京近郊の高速道路が全て無料なら」という箇所については,首都圏では環状道路を中心に高速道路の絶対量が不足しているため,必ずしも完全無料化が得策とは限りません。しかしながら,通行料金を引き下げることによって,交通の円滑性を確保しつつ,おっしゃるような人の流れや商業の活性化をもたらすことは可能であると思います。

今後とも,忌憚のないコメントをお寄せください。

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大変率直なご意見でよくわかります。しかし社会は複雑です。
私も絶対正しい意見を述べているとは言いませんが、多くのことを私たちは知らされていないと思いますし、できたら中立的な立場の専門家の御意見も賜りたいと思います。
1.高度成長時代の産業育成政策の名残で、トラックの税制や料金は他の先進国に比べても優遇されています。このため他の交通機関に転換すべき交通や、倉庫の活用、流通機構の改善により本来減らされるべきトラックの台数や交通量が増えたままになっている可能性があります。
なぜなら;
(1)現にトラックの割合は日本は約4割ですが、アメリカは2割弱、ヨーロッパは1割以下す。この原因には建設業が大きいという日本の事情も関連しているとは思いますが、数字は事実です。
(2)乗用車が主な対象となるガソリン税(53.8円/l)に比べて、主としてトラックが対象となる軽油税(32.1円/l)は約60%です。これはヨーロッパ諸国の税額の約7割程度以下と低い水準です。
(3)高速道路にとってトラック交通は問題を含んでいます。
 1)トラックは乗用車の約3倍から5倍の面積を占有し、舗装など施設を圧倒的に破壊し、またトラックなどの大型車両のためにガードレールや橋梁の強度を必要とし、またトンネル等の断面を大きくすることが必要です。
 2)道路環境問題の大部分はトラックになど大型車両に起因しています。NOXなどの排ガスは大部分が大型車のものです。また騒音も大型車の寄与が大きく、さらにトラックに起因する事故が一家4人死亡などの大事故につながり易いことも重大なことです。
 3)ところが、高速道路(JH)速通行料金は普通車(乗用車)の約1.7倍であり、さらに料金別納制度により2割以上の割引を受けて事実上乗用車の約1.4程度以下ときわめて低い水準に抑えられています。
 結局、現在でもトラックは十分な料金を払わないで高速道路を通行しているといえるでしょう。
2.問題は
(1)車種間の負担割合が適切か?トラックが適正な負担をすることによって、また建設産業の縮小などの経済変化によりトラックそのもの交通は減少するのではないか。
(2)有料道路の全体の料金水準を、税金投入などによって低くすることができるか、あるいは低くすべきか?
という二つの問題に分かれていて、前者は運輸関係者のキャンペーンもあってあまり話題とされないのです。
何しろ「トラックの税負担や料金負担が増えると物価が上がり、経済が悪影響受けますよ」という言葉は、政治家にとって反論の余地のないものですから。
3.以上から私の意見は、税制や料金体系を、適正化することがまず先決で、目先の利害に元ずく議論に惑わされないようにすべきである、ということです。
 そして具体的には、軽油の税水準を先進国並みに引き上げ、道路環境対策などに活用する。また高速道路料金の料金体系を見直し、普通車の水準の引き下げ、相対的に大型車の水準の引き上げを検討すべきだと思います。産業優先の時代は終わっています。
ただし高速道路の料金体系の見直しに当たっては、償還主義は残すとしても、時間帯や地域、路線別に自由に設定して環境政策や地域政策に貢献するように工夫することが必要でしょう。
森 靖之

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「トラックの高速道路料金負担は低い」に関する補足
先の投稿#347で、トラックは低い負担で高速道路を走っているとの趣旨の事実を紹介したところですが、9月19日から20日にかけての新聞に「高速道路の別納割引廃止」が報道されました。
先にも書きましたように、トラックだけは別納契約によって、最大3割にも及ぶ割り引きがあり不公平との認識はありましたが解決できずにいました。このたび扇国土交通大臣が「別納割引を廃止する」と記者会見で発表したそうです。
この割引を廃止することによって、年間2200億円にも及ぶ財源が確保されることになるそうで、一般の料金を12%引き下げることも可能だとのことです。
不当に低いトラックの負担が是正されるのは画期的ですし、流通の構造や経済の仕組みが改善されることにつながって行けばいいと思います。
(森 靖之)

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山崎さんの論文は、一言でいって、机上の空論です。
その論点は、単純にいえば、「既存の高速道路の借金は、赤字国債を発行してチャラにし、新しく造る高速道路は、一般の道路整備の予算の中にメリ込ませる」というだけの話です。そうなれば、確かに、高速道路はタダになりますが、その結果、この国の経済活動や社会活動はどうなるのか、という検証は全く議論されていません。
我が国の物流の90%以上が、自動車交通に依存しており、鉄道や内航海運の分担率は、合わせて一割に満ちません。また、電気や水道などのライフラインも、大部分が道路空間に収容されています。即ち、私たちの日常生活も経済活動も、大部分が道路に依存しています。しかも、その道路の整備水準が、欧米諸国に比べて著しく劣っている我が国では、物流システムの非効率性が経済活動の大きなネックになっていることは、誰しも認めていることです。
同じような過ちを犯しかけた前例は、1980年代のアメリカです。8月21日の本サイトへの私のコメント「社会資本の評価は効率性のみではない」にも述べましたが、その当時のアメリカの地方議会の人達が、「荒廃するアメリカ」というレポートを出して、「これ以上公共投資を遅らせれば、アメリカは再び立ち上がれなくなる」と訴え、その結果、連邦政府も再び社会資本整備に積極的に取り組むようになり、日本を抜き返して立ち直ったのです。
当時のアメリカより、現在の日本の道路整備の水準は、はるかに劣っています。高速道路に関するさまざまな議論も、小説家や評論家の、責任の無い空論ばかりでなく、専門的知見に基づく、実態を踏まえた議論が、進められていくことを切に願っています。

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 雑誌を読んで居られない方のために山崎氏の論旨を要約し、コメントします。
 岡崎氏の意見の補強のようになりますが。。。
(論旨)
1.「4公団民営化推進委員会」の民営化は上場を目指すものであるが、これは本来無料であるべき道路を永久有料としようとするもので不適切。また現在でも国からの財政支援によって成り立つ公団は民間企業としては破綻しているのであって、新道路会社は国民負担なしには上場などできない。
2.現在の高速道路はプール制の採用によって事実上永久有料制になっており、かつ高速道路料金は世界一高い。このため地方では日常生活に高速道路を使い人は少なく、もっぱらトラック道路となっている。
3.この問題解決のためには、高速道路を欧米のように無料にするべきであり次の3点から対策を講じる。
?高い金利対策として、現在の高い金利の債務を低金利である現在の国債を発行して返済する。
?一般道路に使われている道路財源を高速道路にまわす。
?コスト縮減の観点から地方自治体に道路建設を任せる。
このことによって「高速道路が無料の生活道路になれば日本の社会が飛躍的に便利になる」と主張する。
(コメント)
1.民営化推進委員会の提案に矛盾があり、特に上場を目指すと有料会社の永続性が目的化され公共性と反するとの趣旨の指摘には賛成します。
 民営化がメリットを発揮するのは、例えばニュージーランドなどで行われているように料金収受や清掃などのサービスをできる限り外部委託する方法でしょう。今回のニューヨークの停電の遠因に、民営化によって送電線などの基盤に投資がされなかったことがあげられています。民営化すなわち善ではなくその使いようです。
2.次に有料道路は悪、無料道路が理想という主張は誤りでしょう。
むしろこれからは限られた道路を有効に使うため需要マネージメント(TDM)が必要です。高速道路はある程度需要がコントロールされて、可能な限り時間が読めるプレミアム道路であるべきでしょう。もちろん手法にはいろいろありETCなどを使えばまだ安いコストでインターチェンジも追加できて便利にもなります。ただし高速道路料金設定に自由度を持たせ、車種間のバランスを修正しまた全体として下げる事は必要でしょう。
3.また高速道路が無料化されたら生活道路になるというのはナンセンスです。
日本は先進国のなかで自動車台数のなかに占めるトラックの割合が飛びぬけて多い国で、大体アメリカの二倍以上、ヨーロッパの数倍程度です。戦後の産業政策の名残でトラック関係の税負担などが安かったことと、建設関連産業の割合が多いということも原因かと思います。トラック台数の多いままで無料化しても決して快適な高速道路にはならないでしょう。
また氏は現在、地方では高速道路がトラック道路になっていると主張されますが、無料化したらますますその傾向を助長するでしょうし、そもそもトラックが地域の生活と経済を支えているわけですから一方的に敵視するのもいかがかと思います。
4.肝心の政策提言部分ですが、岡崎氏のおっしゃる空論かどうかは別として全体として杜撰です。
 理由は、?有料道路を有効に活用することが国民にとって有利な面が多いのにその点の議論を捨象していること。
 ?財投の一括返済は、法律的な問題もさることながら、国家的には財投の運営を圧迫し国民につけが回らないかをチェックする必要があること。
 ?一般道路財源を高速道路にまわすことについては、現在でも国の直轄事業で構想道路建設を行うことが議論されています。どの程度までまわせるかは選択の問題であって一方的に、まわせば良いとは言えないし、そもそも道路の整備水準についての考察がなされていないのが致命的なこと等からです。
 文字数が多くなりましたので、私の主張は別の機会に譲りたいと思います。
(森 靖之)

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自民党総裁選への出馬が確実と見られる亀井静香氏は,小泉純一郎首相の公約である平成16年度通常国会への道路四公団民営化法案の提出について,「改革の名に値しない」と切って捨て,「高速道路の夜間無料化」を打ち出したそうです。

・平成15年9月3日 産経新聞[注1] 【壊す守る 自民党 2003総裁選】4候補,経済政策真っ向対立

注1: 投稿時点で検索不可

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この種の議論について、いつも残念に思うのは、以前に中央公論の山崎さんの論文に対する私のコメントでも述べましたが、「道路の必要性」に関する議論が、すっぽり抜け落ちていることです。最近のこの種の論文では、「この国の経済社会システムにおいて、道路ネットワークの拡充が必要か否か」という大前提の議論なしに、有料道路という事業の「経営論」ばかりが議論されるため、つまらない、薄っぺらな議論になってしまうのです。
 「経営論」だけからいけば、「道路」などというものは所詮採算が合うわけが無いのですから→借金が大きくならないうちに、国で引き取って税金で処理したほうが良い→それなら無料にできるから皆喜ぶ→しかし、税金が増えるのは困るから、国債でごまかすか→いやいや、PFIのほうが世間受けがいいぞ・・・という程度の議論にしかなりません。
 本サイトへの私のコメントで、再三述べさせて頂いていますが、我が国の道路の整備水準は、他の先進諸国に比べて著しく遅れています。我が国の物流の9割が道路に依存し、水道や電気、電話などのライフラインも、大部分が道路空間を利用しているのに、大都市圏の高規格な環状道路が一本も無く、地方部の高速道路も途切れ途切れという状況です。経済が苦しいからといってインフラ整備を放置すれば、今でも諸外国より遅れているのですから、将来、我が国の国際競争力は益々低下してしまいます。
 「経営論」などでなく、「道路の必要性」に関する客観的な議論をしっかり行った上で、我が国の遅れた道路整備を如何にしたら効率的に進め得るのか、という観点から考えれば、今後とも「有料道路制度」を最大限活用することが必要、という結論になるのは必然だと思うのですが、如何でしょうか。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

素朴な疑問。
我が国の国際競争力が諸外国より劣っているのは、インフラ整備の遅れが原因なのですか?
インフラ(土地・道路・電気・ガスなど)や税金、人件費などの高さによると思います。
インフラ整備の遅れが原因なら、アジア諸国などはるかに及ばないはずですよね。
国際競争力を高めるには、いわゆるインフラのコストを下げる方向に向かうべきだと思います。
その意味からは、民営化=有料化より無料化のほうが筋が通ってると思いますが。
土木も経営も素人の人間の戯言なのかな。失礼しました。