プレストレス導入直後における曲げ圧縮応力度制限値について

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橋梁の設計条件においてプレストレス導入直後の曲げ圧縮応力度制限値を算出する場合平成29年度道路橋示方書ⅢのP22~23の記載内容を基に算出すると思うのですが、
その文言のなかで「プレストレッシング直後におけるコンクリートの圧縮応力度と圧縮強度の特性値との比が,曲げ圧縮応力度で1.4程度,軸圧縮応力度で1.7程度以上と
なるよう応力度の制限値を設定するのがよい。」とあるのですが、この圧縮強度の特性値とは設計基準強度ではなくプレストレス導入時の圧縮強度でよろしいのでしょうか。

基本的なことで申し訳ありませんがお教え頂ければ幸いです。

コメント

ユーザー 中筋 智之 の写真

 同書(文献1)の正誤表,質問・回答(文献2,3)を私が纏め割増係数を補った内容を以下に記す.

 設計基準強度に到達する前の各施工段階において安全性を検討する場合には,その段階に応じた材齢を考慮した圧縮強度や引張強度の特性値に基づき応力度の制限値を
適切に設定し,安全性を確認する必要がある.設計基準強度に到達する前の圧縮強度の特性値は,4.1.3の考え方を準用し,その材齢における試験強度に基づき,試験値を
下回る確率が5%となる値とすればよいと考えられる.また,このときのコンクリートの引張強度の特性値は,コンクリートの圧縮強度の特性値から,式(解3.4.1)により算
出することができる.
 σ_ct=0.23σ_c^(2⁄3)・・(解3.4.1)
 ここに,σ_ct:コンクリートの引張強度の特性値(N/mm^2)
     σ_c:コンクリートの圧縮強度の特性値(N/mm^2)
 制限値の設定に必要な安全余裕は,これまでの示方書によるものと同等となるように設定すればよいと考えられる.これまでの示方書では,打設日より28日後のコンク
リートの発現強度から定められたコンクリートの圧縮強度の特性値である設計基準強度を基に施工時の許容値が与えられていた.プレストレスの導入時においては,コン
クリートに生じる圧縮応力度と発現圧縮強度の試験値との比が1.7以上あることを施工段階において確認することが17.11で規定されており,これを前提として,,プレス
トレッシング直後におけるコンクリートの圧縮応力度と圧縮強度の特性値との比が,曲げ圧縮応力度で1.4程度,軸圧縮応力度で1.7程度以上となるよう応力度の制限値を
設定するのがよい.
 若材齢におけるコンクリート圧縮強度の推定については,実験等により推定精度が確認された方法による必要があるが,(中略)圧縮強度の特性値を仮定するにあたっては,
コンクリートの圧縮強度の特性値は,材齢 28 日における試験強度に基づき,試験値がその値を下回る確率が 5%となるように定められた値とする4.1.3の規定に準じ,適
切に圧縮強度のばらつきを考慮し,推定値から得られる圧縮強度を見直す必要がある.例えば,17.6.2の規定に従い,コンクリートが適切に打設されることを前提に材齢
が 28 日より少ない場合,発現強度の特性値は,この考え方を準用し,その材齢における試験強度に基づき,試験値がその値を下回る確率が 5%となる値として変動係数
を10%程度と想定し,推定式から算出される圧縮強度の推定値を1.2(≈1/(1-1.645×0.10))で除した値を圧縮強度の特性値とすればよいと考えられる.ただし,このように
して算定された圧縮強度の特性値が設計基準強度を上回る場合には,設計基準強度を特性値とする必要がある.

 「プレストレッシングを行って良いときのコンクリートの圧縮強度はプレストレスを与えた直後にコンクリートに起こる最大圧縮応力度の1.7倍以上でなければ成らない.
プレテンション方式では30N/mm^2(300kgf/cm^2)を下回っては成らない.」旨について標準示方書 施工編(文献4)及び道示は同じですが,材齢28日に達する場合のプレストレス
力について,後に発刊され道路橋を含む標準示方書 設計編(文献5)では「曲げモーメント及び軸方向力とプレストレッシング直後のプレストレス力に拠るコンクリートの
曲げ圧縮応力度の和及び軸方向圧縮応力度との和は,夫々検討時点のコンクリート圧縮強度の特性値(設計基準強度)の1/1.7の値及び1/2の値を超えてならない.」旨で,
道示に拠り材齢28日直前に発現強度を基に推定する圧縮強度の特性値が設計基準強度の場合,圧縮強度の特性値の1/1.4程度の曲げ圧縮応力度が生ずるプレストレスを作用
させると標準示方書 設計編に拠る1/1.7の値を超え,標準示方書 施工編で自重の占める割合が大きな部材等では更に安全度を高くするのが良いとされ,整合を取る様に私は
提案し,回答が有れば此方に報ずる予定です.
根拠文献
1)日本道路協会:道示Ⅲ,平成29年11月
2)同 正誤表p22 3.4.1(8)解説
https://www.road.or.jp/books/corrigenda/pdf/180509_3.pdf
3)同 質問・回答No.Ⅲ-3-2
https://www.road.or.jp/books/faq/pdf/20190607_03.pdf
4)2023年コンクリート標準示方書 施工編
5)2022年コンクリート標準示方書 設計編