産経新聞「道路特定財源論」について

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 昨年12月23日付 産経新聞に、岩崎慶市論説副委員長の「道路特定財源論」が載っていました。大きな違和感を感じましたので投稿します。
 その内容は、岩崎氏の前回の「道路特定財源」に関する論説に対して、国土交通省の前技監 大石久和氏が反論したことについて、更に反論したものです。
 大石氏が、都市の道路の整備状況や、災害などナショナルミニマム論から、道路整備の必要性を説き、そのため、受益と負担の関係が明確な「特定財源」制度の有用性を論じているのに対して、岩崎氏は、「だれが見ても、ナショナルミニマムとしての道路は東京も地方も整備された。地方に行けば人影もない立派な道路が山や田畑を貫く。----- 道路特定財源の一般財源化は無駄な道路を阻止できるし、真に必要な政策にも使える。 ----- 国破れて道路あり にならないよう-----」と書いています。
 岩崎論説に対する私の反論は山ほどありますが、そもそも、「ナショナルミニマムとしての道路の整備は終わった」という基本認識を、産経新聞の論説委員たる方がしておられることに愕然とします。我が国の道路整備が極端に遅れていることは、諸外国(中国、韓国、東南アジアを含めて)と比較すれば明らかです。今は、その遅れを必死に取り戻さないと、この国の将来は大変なことになってしまうと思います。
 「道路なくて、国破れる」ことのないようにしたいものだと思います。 

前田建設ファンタジー営業部

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今年の書評の総括によれば、書籍のメディアミックス化が進んだといわれています。いわゆるネット発書籍(2004年8月30日付けITmedia記事)の登場であり、新しい読者層を開拓し、それが書籍の売上にも繋がっったようです。

表題の書籍もそのひとつ。前田建設WWWの名物コーナーである(らしい)ファンタジー営業部が書籍化されたものです。内容は、有名なアニメの中にでてくる秘密基地や建造物を、アニメの想定情報をもとに、実際に建設事業として計画してみたらどのように検討するのだろうか、というもの。さわりはファンタジー営業部web版をご覧ください。
(ちなみに、web版も見てみたが、書籍のほうが読みやすい。)

私がここでいろんなことを書いても土木関係者としての感想しかかけないので、いろんな評判をネット上で拾ってみました。以下、私の独断による抜粋。

・実際の建設会社が手がけたというのがユニーク
・公開当時見ましたけど結構まじめに考えてるんですよね。すごいなぁと感心してみてました。
・いいじゃんいいじゃん、すきだなぁ、楽しいよこういうの。
・今度うみほたるに行ったらば、シールドマシンの刃のモニュメントの前で記念撮影してこなくっちゃ(笑)。
・会社も本物、内容大マジ。いや、楽しませてもらいました。
・あれこれ専門家(実務の現役バリバリさん!)が繰り出してくるプランがゾクゾクするように面白かった。この本は「物理や化学、理科を学校で勉強して何の役に立つの?」という問いへのひとつの回答になると思います。
・(次回の)工事は発着用高架橋だそうで…こちらも楽しみ!

(googleで前田建設ファンタジー営業部として
 1ページ目だけに出てきたリンクを辿って集めたもの)

土木学会では「土木の社会化」というスローガンを掲げてさまざまな一般向けアピールに取り組んでいますが。社会化というのは、一概にやり方が決まっていないので、いろんな方法がとれて面白いとおもいます。

本書はそのいろんな方法のひとつであり、取りようによってはかなり極端なところにあるかもしれませんが、(上記のように)確実にこれまで土木に縁が無かった(と思われる)層に受け入れられた取り組みだなぁ、と感心しました。

中越地震「調査結果と緊急提言」の公表

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先日(2004年12月10日)、土木学会・平成16年新潟県中越地震災害緊急調査団のページ平成16 年 新潟県中越地震 社会基盤システムの被害等に関する総合調査「調査結果と緊急提言」I 報告・提言編(pdf)が公表されました。

中身を読んでみると、大規模な地すべり、新幹線の営業車両の脱線、低密度・高齢化地域の被災、行政・NPOの活動など、土木構造物に関する被災報告だけではなく災害マネジメントの状況まで調査してあり、緊急報告として網羅的な報告かつ充実した報告内容になっています。

2章では何がどのように壊れたか、どのように問題が発生しているのか、などがわかりやすく書かれています。テレビ・新聞で断片的に報道されるものよりもわかりやすく、また、今後の資料ではGIS情報として情報提供されるようです。
あわせて、3章では今後の設計における安全対策についての緊急提言がまとめられています。

被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、このような緊急提言をまとめられた会員諸氏のご尽力に敬意を表します。

市民参加の交通バリアフリーセミナー案内

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第22回福祉のまちづくり関西セミナーのご案内
■期 日  2004年12月11日(土)
■場 所  大阪市立大学 杉本キャンパス 全学共通教育棟
      (大阪市住吉区杉本3−3−138)
       JR阪和線杉本町駅下車徒歩5分
        または地下鉄御堂筋線あびこ駅下車徒歩15分
■内 容  
■シンポジウム(1) 10:30〜12:30
『市民参加の交通バリアフリー 〜人間工学と福祉のまちづくりのコラボレーション』
シンポジアスト・コーディネーター:新田保次(大阪大学大学院) 
シンポジアスト:藤村安則(中央復建コンサルタンツ?)

                   山岡俊樹(和歌山大学)   
       森 一彦(大阪市立大学大学院)
コメンテーター:三星昭宏(近畿大学)

福祉の交通まちづくりにおける市民参加の事例の紹介、市民参加をうま
く進める上での課題と、計画から実施までの継続的取り組みの必要性な
どについて議論します。
また、視覚、聴覚障害者がどのような情報を得ながら移動していくのか
を映像で紹介する予定です。

■参加費
上記のシンポジウムのみの参加希望者
福祉のまちづくり学会会員・学生 500円、 非会員 1,000円

■申し込み先(電話、FAX、Eメールにて)
日本福祉のまちづくり学会関西支部事務局 糟谷(かすや)
電話:078-925-9283、FAX:078-925-9284
Eメール:gakkai-west@assistech.hwc.or.jp
関西支部ホームページhttp://www.assistech.hwc.or.jp/gakkai-kansai/
↑ホームページからは簡単に申し込んでいただけます。

++++++++++++++++++++++++++++++++
以下は、日本人間工学会関西支部大会のシンポジウムですので、別途大
会参加費を申し受けます。大会参加される方は、参加費に、上記シンポ
ジウム参加費を含みます。

■シンポジウム(2)
『ユビキタス社会でユニバーサルデザインはどう変わるか?』    
(日本人間工学会アーゴデザイン部会との共催企画)    
シンポジアスト:森 博彦(武蔵工業大学)  
        柳田宏治(倉敷芸術科学大学)
        丸野 進(松下電器産業?) 
        高橋賢一(?ソフトディバイス) 
■特 別 講 演 
『居住環境の防災と安全 −人間行動や属性との関わりの視点から−』
講演:宮野道雄(大阪市立大学大学院) 
■研 究 発 表  50数件 
(プログラムは10月中頃に大会ホームページ(下記)にて掲載予定)
■懇 親 会
(会場:大阪市立大学 学術情報総合センター内「ウィステリア」)

■参加費と申し込み方法
◇人間工学会関西支部大会への参加希望者
(日本人間工学会会員と同額。なるべく事前に郵便振替をご利用ください)
<支部大会参加費(こちらの申込み者はシンポジウム(1)も含みます> 
11/26まで:正会員4,500円、非会員5,500円、学生1,500円
11/27以降:正会員5,000円、非会員6,000円、学生2,000円
<懇親会費>
11/26まで:一般3,500円、学生1,500円
11/27以降:一般4,000円、学生2,000円              
■郵便振替  
口座番号:00940-7-222395 
口座名称:日本人間工学会関西支部大会事務局
■申し込み先(電話、FAX、Eメールにて)
大会事務局:〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138 
大阪市立大学大学院生活科学研究科 岡田明研究室内
日本人間工学会関西支部大会事務局(渕上)        
電話&FAX:(06)6605-2823   
Eメール: sibutaikai@ergow.org 
大会ホームページ: http://www.ergow.org/

土木学会選奨土木遺産「晩翠橋」の趣意文について

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 はじめて投稿いたします。
 土木学会選奨土木遺産 2002に認定されている晩翠橋について、趣意文の中に、「わが国で2例しかないブレーストリブ・タイプのバランスト・アーチ」と記載されていますが、もう1橋は何処に有るのでしょうか。
また、ブレーストリブ・バランスト・アーチ橋の意味について,ブレーストリブは斜材を使って組まれたトラス構造のものだと分かったのですが、バランスト・アーチ橋については、詳しく記載されている文献を見つける事ができません。
それから、バランストなのかバランスドなのかどちらが正しい名称なのでしょうか。
宜しくお願い致します。

ビデオ「土木の世紀 上巻・下巻」について

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10年程前に作成されたビデオ「土木の世紀 上巻・下巻」ですが,テ−プがくっついたのか巻き戻しが出来なくなりました。
・現在,発売されていますでしょうか。
・おいくらでしょうか。
・DVDにされる予定はないのでしょうか。
以上の3点についてお教えください。

土木学会会員名簿の流出

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「土木学会の会員名簿を見て電話をしている。」と、会社へのセールス電話が後を立たない。
 セールス電話は会社の5〜6人に集中してかかってきており、内容は、都心マンション経営斡旋や金融商品斡旋等で、勧誘のしつこさに業務に支障が生じている。なかでも、7月21日に電話をかけてきた金融商品斡旋業者のセールスマンは、「土木学会の方と関わりをもっている。」、「土木学会の方から、学会名簿を活用してくれと言われた。」と断言していた。
 学会の名簿は個人情報の一部を記載しており、本来第3者に流出すべきものではないはず。
 このままでは、各方面からの風評により、土木学会の信頼が揺るぎはしないだろうか。
 大きな問題に発展しないよう、何らかの対応が必要と感じている。

土木学会企画委員会のHP

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先日,ふと,土木の最近の話題を調べてみようと,土木学会のHPを見ていたのですが,部門/委員会活動の一覧に企画委員会というのを見つけまして,どんなことやってるんだろうとリンクをクリックしたところ,以下の文章が出てきました.

---ここから---
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---ここまで---

もしかして,パワーポイントか何かで作っていらっしゃるのでしょうか.IE以外のブラウザを利用しているユーザーはいらっしゃるでしょうに.かくいう私もNetscapeユーザーです.

内輪だけのページなら兎も角,情報を発信するという目的のページならば,アプリケーションに依存するようなページは作らない方が良いかと思います.一会員の意見です.

プロジェクトx挑戦者たち「羽田空港沖合展開事業」放送決定

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国土交通省関東地方整備局(旧運輸省第二港湾建設局)では昭和58年以来、みなさまのご協力のもと羽田空港沖合展開事業を進めて参りましたが、このたび日本放送協会(NHK)「プロジェクトX挑戦者たち」において、羽田空港沖合展開事業?期〜?期について取り上げられ放送される運びとなりました。下記の日程において放送されますのでお知らせ致します。

放送日 :2004年6月29日(火曜日)
時 刻 :21時15分から 正味約45分
タイトル:プロジェクトX挑戦者たち 「羽田新空港 魔のヘドロ地盤に挑め」
内 容 :一日800便もの飛行機が離着陸する東京・羽田空港。20年前、ヘドロの海から新空港開港にまでこぎつけた技術者たちの闘いを描く。1977年、増加する航空需要をさばくため、運輸省(当時)が決めた新空港建設予定地は、羽田沖の埋め立て地で、地盤沈下が予想される土砂処分場だった。
局・ch局:NHK総合
問い合わせ先:国土交通省関東地方整備局港湾空港部空港整備課 坂本 明
       電話045-211-7421 FAX045-211-0206

“『脱ダム』宣言”に基づく具体策の混迷が象徴する長野県政

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 田中康夫長野県政象徴の“『脱ダム』宣言”に基づく、最初の具体的事例である浅川・砥川の河川整備計画の見直しが、信じられないほど無責任な内容と基本方針の変更の連続で、混迷の度を深めている。この宣言が発せられたのは3年数カ月前で、その後従来計画の数値目標を堅持し、その80%を河川改修で、20%を流域対策で対応するという、両河川の代替案の枠組みが発表されてからでも、ほぼ2年が経過している。やっと昨年夏に具体案なるものが発表されたが、実質的な裏付けがなくて、国土交通省へ認可申請もできず、最近では、基本方針の大変更を余儀なくされているが、説明の整合性に欠ける無責任なものとなっている。何れにしても、ほぼ2年前に発表した代替案の枠組みは幻で、虚構であったことが明白になっている。代替案があるというから、長野県民は出直し選挙で田中知事を選んだのである。それがなければ話は違う。県民は幻の代替案に惑わされたのである。
 このようになっている根本的な原因は、『脱ダム』宣言なるものが、科学的根拠に欠けた、単なる思い込みによるものだったところにある。先ずそのことを露呈させたのは、田中知事お気に入りの学者委員による、非科学的なご都合主義的な議論に基づく答申であった。すなわち、整備水準は当初計画通りとするものの、具体的な数値目標は科学的な根拠のない、単にダムを必要としないで済むように下げるというものであった。
 流石に数値目標を下げる理由に説得力がなく、田中知事はそのままにせざるを得なかった。ただしダムなしにするために、二割分を森林整備、遊水地、貯水設備などの流域対策で補うとした。ところが昨年7月末に発表された流域対策では、複数の河道内・外遊水地というものが主体で、この他にため池と水田(後に撤回したが)を利用するというものであった。しかも今年の3月には、堤防の高さが30m前後にもなる河道内遊水地は、県の責任者でさえダムと認めざるを得ないような、中小ダム群建設という実態が明らかになった。そのためこれまで県の方針を支持してきた人たちからも不信を買う事態になっている。さらに当初森林整備を挙げていながら、数値的には入っていないし、また遊水地の設置やため池の利用は、安全性や管理に大きな問題があり、その実現性が極めて疑わしいものでもあった。最近では、浅川については、ダム建設を前提にした従来計画での河川改修を再開する方針に変更したが、これを補う流域対策なるものが数値的に足りないというずさんなものである。砥川では、取敢えず安全度を下げたもので河川改修し、将来安全度を上げるという案で国交省と打合せるとしているが、将来の計画と辻褄を合わす必要があり、その見通しはついていない状況にある。
 前述したように流域対策なるものは主に河道内・河道外遊水地であるが、河道内遊水地はダムそのものによる河川改修であり、河道外遊水地も流域対策ではなく、機能上はダムと同じものである。流域から河川に流れ込む可能性のある水を対象にするのが流域対策である。河川に入ってしまった水を対象にするのは流域対策ではない。言葉の誤魔化しである。
 長野県の言う代替案(浅川:河道内外遊水地3箇所とため池2〜3箇所、砥川:河道内外遊水地15箇所の、何れも中小ダム群)は、環境・安全・費用の面で、一点集中のダムとする従前の案に優るとは言えず、むしろ劣っている。
 今の長野県政では常識ではとても考えられないことが平然と行われている。あるいは筆者の見方は偏っていると思われるかもしれない。それは世にある田中県政評価意見によっていると思う。このような意見の多くは、実態を正直に伝えた情報がほとんど得られない人たちによるもので、それに依存すると判断を誤る。中央紙の多くの記者が赴任して驚くのは、中央での田中知事の評価と現地の実態とのギャップである。本当のことを書いても、東京のデスクは中々採用してくれないと嘆いているのが実状である。最近では長野の地方紙や中央紙の長野版で、少しは田中批判記事が載るようになったが、依然として田中県政を手放しで評価しているものもある。それは知事から重要な情報がリークされるからで、ここにも「脱・記者クラブ宣言」の、田中知事の汚い本当の狙いの一部が現われている。
 以上の指摘に疑問のある方は具体的に田中県政の実態を、自らの目、耳、足を使って、虚心になって確かめてほしい。そうしていただければ、幾らでも予想に反する事実が見付けられるはずである。
 なお、詳しいことは、ホームページhttp://www.avis.ne.jp/~cho/や拙著「田中康夫長野県知事の虚像」に述べている。ご参照いただければ幸いである。
 会員諸氏の活発なご意見開陳を望む。もちろん、根拠ある異論は遠慮なくお述べいただきたい。

アジア・コードの制定は無意味か

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先日、学会の或る委員会の幹事会にオブザーバーとして出席する機会を得た。アジア・コードの制定について議論している際に、或る若い学会員から「アジア・コードの制定に尽力しても日本は取られるだけで得るものは何も無いから無意味でないか」という発言があった。私としては、地理的条件や社会的条件に共通点の多いアジアの国々と協力して統一技術基準の制定に尽力しないと、地理的条件や社会的条件が異なる西欧諸国の基準を鵜呑みせざるを得なくなり、これはアジア諸国のみならずに日本とっても不幸なことになると考えている。このことについて、会員諸氏の活発な議論を期待したい。
フェロー会員 岡田 宏

大保ダムを見学して(第3回)―プレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工法の紹介―

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独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦

1.プレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工法
 大保ダムにおける沢処理工はCSG工法で施工され、その堤体表面はプレキャストコンクリート型枠で施工されていることを前回紹介した。今回はこれについて詳細に説明したい。実は、誰にでも考えつきそうなことではあるが、プレキャストコンクリート部材を堤体表面の型枠として利用して、その背後に堤体コンクリートを打設して両者を一体化し、プレキャストコンクリート部材も堤体の一部として使用することは、「ダムにおいて」及び「大規模に」という枕言葉をかぶせれば、かなり珍しいことなのである。先例としては宮ヶ瀬ダムの副ダム(堤高34.5m)において下流面に景観向上を兼ねて特殊な形状をしたプレキャストコンクリート型枠を使用したものがある。しかしさらに「汎用化」という枕言葉をかぶせれば私の知る限りにおいて本邦初演なのである。この工法は内閣府沖縄総合事務局ほかが開発したもので現在特許申請中と聞く。

2.プレキャストコンクリート型枠の形状等
 プレキャストコンクリート型枠はL字型でダム軸方向に長さが3m、高さ1m、幅0.55m、重量は1.56tで施工中のダム堤体上からクレーン、バックホー(移動式クレーン仕様)等で容易につり込み、据付けが可能である。もっともこの形状は今回の沢処理工に関して決定されたもので、ダム毎にL字型の傾斜角度も含めて変更できる。据付けは、ダム軸方向、上下流方向、標高の三方向に正確かつ容易に行われるよう、各種の工夫が行われている。L字型型枠の背後に保護・遮水コンクリートを打設し、その背後(下流側)にCSGを打設している。
 このサイトでは、図や写真が表示できないのが残念であるが、沢処理工に関しては沖縄総合事務局北部ダム事務所のホームページを参考にされたい。

3.プレキャストコンクリート型枠を採用する利点
(1)施工の安全性向上
 従来、コンクリートダム堤体の表面部分は、木製又は鉄製の型枠を設置し、そこに堤体コンクリート(耐久性、遮水性に優れた外部コンクリート)を打設していた。このため、型枠の設置、取り外しに多大の手間がかかるとともに、堤体の外部における作業も必要となり危険な要素を含んでいた。プレキャストコンクリート型枠では、そのようなことが無く施工の安全性が大幅に向上する。
(2)施工が容易、施工時間の短縮
 あらかじめ製作しておいたプレキャスト型枠を設置するため型枠設置時間を大幅に短縮できる。これはRCD工法CSG工法など同一標高レベルに短時間に大量のコンクリートやCSGを打設する工法の場合、著しく有利になる。
(3)型枠経費の節減
 プレキャストコンクリート型枠は専門の工場で製作されダム現場に搬入される。プレキャストコンクリート型枠を製作するための鋼製型枠は、繰り返し使用(100回以上)出来るので、他ダムへの転用が可能である。実は他ダムに鋼製型枠を転用することが重要で、このことにより型枠経費が大幅に削減されると見込まれる。ケーブルクレーン、クラッシャーなどで官貸与というシステムがあるが同じ発想により経費を削減するのである。
(4)コンクリート表面の品質確保
 プレキャストコンクリート型枠は専門の工場で製作されるのでその品質の信頼性が高い。
(5)ダム建設コストの節減
 以上のことより、ダム建設コストが節減されることが期待される。

4.プレキャストコンクリート型枠導入の経緯
 このように良いことづくめの工法(多少の反論はあろうが)が何故、今まで導入されなかったのであろうか。過去に、ダムの堤体表面処理に手間がかかるため、従来の標準的な型枠工法に加え、次のような試みもなされたことがある。
(1)余裕幅工法
 RCC工法による下流側斜面においては、特に米国において、数mの余裕幅を持って型枠なしでコンクリートを打設した。
(2)スリップフォーム工法
 大型の走行車によりスランプの小さいコンクリートを高さ数10cmの壁状に自立するよう締め固め、型枠とする。
(3)特殊形状なプレキャストコンクリート型枠
 宮ヶ瀬ダムの副ダムに見られたような例である。また外国では、プレキャスト型枠同志が固く連結されるよう工夫した例もある。
(4)ダム用自動式型枠
 建設省の建設技術評価規定に基づき、昭和63年に10グループに対してダム用自動式型枠が認定されている。これは、内装された上昇装置により型枠自ら上昇できるとともに、油圧ジャッキにより型枠自ら脱型動作を行えるものであり、その操作は装置外より操作盤にて行うことができるものである。しかし、この装置は大型すぎて経費が高いことと、他ダムへの転用について明確な保証が無いので、ほとんど実用化されていない。

 今回プレキャストコンクリート型枠が実用化できたのには、次のような理由があろう。
(1)プレキャストコンクリート型枠による通廊施工の経験
 プレキャストコンクリートによる通廊の実施経験によりプレキャストコンクリート型枠への信頼感が向上した。
(2)プレキャストコンクリート型枠を長さ3m、L字型形状とすることにより小形化した。特にL字型にして、水平部を埋め殺すことで、据付けコンクリート打設時の安定感が向上した。
(3)堤体がCSGで築造されるため、特に大きな強度を必要としない。このためプレキャストコンクリート型枠とコンクリートおよびコンクリートとCSGの間の付着強度は特に問題となることは無い。付着強度については今後、ボーリング資料により検証することとしている。

 この沢処理工における施工状況を検討したうえでの判定であるが、今後の台形CSGダムの表面型枠はプレキャストコンクリート型枠によることとなろう。いわばここではプロトタイプの試験を行っているのである。台形CSGダムでの経験が深まればさらに通常の重力式コンクリートダムへの適用も可能となろう。ダム建設コスト縮減の一手段として、この工法の今後の発展を期待しているところである。
 この工法の導入にあたっては、プレキャストコンクリート型枠による通廊施工の経験が大いに役立っている。
 国土交通省北陸地方建設局が建設した宇奈月ダムで採用されプレキャストコンクリート型枠による通廊施工法(北陸地方建設局、ほかの特許工法)は、その鋼製型枠の転用を通じて、平成12年以降、16ダムで採用されることとなり、標準工法化しつつあり、建設コスト縮減と安全施工に大いに貢献してる。
 また、エレベーターシャフト、機械室等にプレキャストコンクリート部材を使用する工法も普及しつつある。これらの工法の紹介は省略するがCSG工法とプレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工法の2つの工法の紹介によりダム建設において各種の技術開発が着実に実施されていることを紹介した次第である。

大保ダムを見学して(第2回)―CSG工法の紹介― (2004年3月30日付第2回記事)
大保ダムを見学して―沖縄の渇水と技術開発の紹介― (2004年3月22日付第1回記事)

大保ダムを見学して(第2回)―CSG工法の紹介―

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独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦

1.大保ダムについて
 現在、内閣府沖縄総合事務局北部ダム事務所により建設中の大保ダムは、沖縄北西部の治水と水資源開発を目的としたもので、完成すれば福地ダムに次ぐ沖縄で二番目に大きい貯水容量を持つダムになる。
 大保ダムは本ダムと脇ダムという大きな二つのダムが建設されるというちょっと珍しい計画となっている。
本ダムは、堤高77.5m・堤体積410,000m3の重力式コンクリートダムで大保川本川を締切るダムである。脇ダムは、このダムによる貯留水が分水嶺の低標高部より流域外に流出することを防止するためのもので、堤高66.0m・堤体積1,750,000m3のロックフィルダムである。
これらのダムにおいても色々な技術開発が行われているが、実は今回紹介するのは、この両ダムの構造物に関して直接実施されているものではなく、付帯する構造物に使用されている技術開発である。なお、当情報交流サイトのシステムでは図や写真が表示できないのが残念であるが、図等の詳細は沖縄総合事務局北部ダム事務所のホームページ(http://www.dc.ogb.go.jp/hokudamu/)を参考にされたい。

2.CSG工法
 CSG工法という工法を御存知であろうか。CSGとは、Cemented Sand and Gravelの略で、セメントで固めた砂礫を意味し、ダムなどの構造物を造る材料として最近注目されているものである。
 従来、ダムはその材料によりコンクリートダムとフィルダム(大規模なものは、一般的にロックフィルダム)に大別されていた。CSG工法では、コンクリートダムには使えないような低品質の材料に、若干のセメントに水を加えて固化させることにより、堤体材料として活用を図るものである。セメント量は、60〜100kg/m3の超貧配合である。
 日本が開発したRCD(Roller Compacted Dam Concrete)工法におけるセメント量(この場合、セメント+フライアッシュの合計である)で、110〜130kg/m3、普通の重力式コンクリートダムの内部コンクリートのセメント量は140〜160kg/m3(最大骨材寸法Gmax 150mmの場合)であるから、セメント量の少なさが理解できると思う。
 セメント量が少ないので当然、材料強度が小さくなる。このため、材料強度が小さい場合に適合する堤体形状として台形が提案されている。いわば、材料も形状も重力式コンクリートダムとロックフィルダムの中間なのである。

3.台形CSGダム
 台形CSGダムは、堤体材料としてCSGを使用し、表面には耐久性確保や遮水を目的として、上流側には遮水・保護コンクリート、天端および下流側には保護コンクリートを配置する。台形CSGダムは、弾性体として設計するため、堤体内に放流設備や監査廊、堤頂部に非常用洪水吐きなどを設置することが可能となる。

 この形式のダムが最初に使用されたのは、国土交通省中部地方整備局長島ダムの仮締切ダムにおいてであり、次いで富山県の久婦須ダムや国土交通省北海道開発局の忠別ダムなどの仮締切ダムで採用されたが、いずれも堤高は15m程度以下の小規模なものであった。現在では、貯水池内の貯砂ダムなどで採用されるに至っているが、まだ本川を締切るダムには採用され建設されている例はない。しかし、沖縄総合事務局の億首ダム(堤高39m)においては台形CSGダムの形式採用が承認され、北海道開発局のサンルダム(堤高50m)、国土交通省九州地方整備局の本明川ダム(堤高64m)での採用が検討されている。
RCD工法に続く、日本発の新ダム建設工法として世界的に注目を集めつつある。

4.CSG工法の特徴
 次のようなことが特徴となっている。
 (1)CSGダムは、コンクリートほど材料強度を必要としないので、河川砂利、風化岩や掘削廃棄岩を有効利用できる。
 (2)基礎地盤の強度や変形性に対して許容範囲が広い。
 (3)骨材製造過程を大幅に簡略化できるため、施工時の仮設備が省略できる。
 (4)全体掘削量や廃棄岩量が減少するので、環境への負荷が小さくなる。
 (5)以上のことより建設コストが削減される。
ダムへの反対運動は根強いものがあるが、その原因について私は、次のようなものがあると思っている。
 (a)自然環境の改変への反対(貯水池、道路、原石山、流況変化、水質変化等)
 (b)社会環境の改変への反対(水没家屋、農地、地域分断、人口減少等)
 (c)治水、利水計画への反対(必要性、効果の判定、代替手法等)
 (d)財政的負担(負担の大きさ、費用対効果等)
 (e)建設業界、特にゼネコンに対する反感
 (f)以上のことを踏まえて、ダム建設の是非に関する民意を直接的に反映させるシステムが無いことに対する不満
 CSG工法を用いて築造する台形CSGダムは、以上の原因のうち(a)と(d)の改善に寄与する。

5.大保ダムにおけるCSG工法
 大保ダムにおいては次の4ヶ所でCSG工法が使用されている。

表-1 大保ダムにおけるCSG工法ダムの諸元
―――――――――――――――――――――――――――――――
 名称    堤高(m) 堤体積(m3) セメント量(kg/m3)
―――――――――――――――――――――――――――――――
沢処理工    30   33,000    60
汚泥貯留堤   16    5,700    80
上流仮締切堤  14    5,200    80
材料山締切堤  13    3,600    80
―――――――――――――――――――――――――――――――

 ここで紹介する沢処理工は、小さな沢の低標高部から貯留水が流域外へ流出することを防止するためのダムで永久構造物としての、台形CSGダムの第一号ともいうべきものである。もっとも貯砂ダムでの施工で「こちらが台形CSGダム第一号だ」と主張される方もおられるかもしれないが。
 平成15年9月より沢処理工のCSGの打設を開始、外部からの見学者がダムと開く。

堤体表面にプレキャストコンクリートによる堤体表面型枠工が施工されている。次回は、この紹介をしたい。なお、CSG工法については、多くの論文があるが例えば次を参照されたい。

“藤沢侃彦、吉田等、平山大輔、佐々木隆:台形CSGダムの特徴と現在までの検討状況、ダム技術、No191、PP2〜23、2002年8月”

大保ダムを見学して―沖縄の渇水と技術開発の紹介― (2004年3月22日付第1回記事)

九州新幹線開業に思う

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 3月13日に九州新幹線の新八代・鹿児島中央間127キロが開業した。いわゆる整備新幹線5線のうち、1997年10月の高崎・長野間、2002年12月の盛岡・八戸間に続き3番目の開業である。この開業により南九州の経済の活性化や観光事業の振興が期待されている。ただ、これまで新幹線の建設は、たとえば東京・新大阪がまず出来て、次に岡山まで、そして博多へと首都圏から順次伸ばしてゆくのが普通だったが、今回は博多・新八代を飛ばしての開業と言うことで、奇異に感じている方も多いことと思う。
 整備五線は全国新幹線鉄道整備法の規定により1973年に整備計画が決定された。ところがオイルショックとそれに続く総需要抑制策により着工の見通しが立たなかった。1970年代後半になって地域住民の方々やその代表者である知事・議員等からの早期着工の要望が強く出されるようになり、その建設の是非について1979年度に大掛かりな調査が行われた。その内容は、建設費の見直しやその低減策、需要予測、線区ごとの収支見通し、新幹線の開業が地域に与える経済的・社会的効果の程度、さらには沿線地域の振興策にまで及んだ。それぞれの結果をここに述べる余裕はないが、全体としての結論は、整備新幹線の地域に与えるインパクトは大変大きいが。建設費も大きいことからその資本費負担を軽減する方策が必要である。また地域の経済を活性化するには新幹線にだけ頼るのではなく、適切な地域振興策を同時に進める必要があるというものであった。
 整備新幹線の建設についての政府・与党申合せでは、この成果を大幅に取り入れ、着工の前提として、(1)建設費の財源を確保するため、国費の他に、本当に新幹線が必要と考える住民の意思を反映させて地方公共団体の負担も考えること、(2)新幹線と並行する在来線は新幹線の開業により大幅に輸送量が減るので、これまで通り運営することは問題があるから、廃止するか別の組織に移管して合理化策を考えること、(3)環境アセスメントを行って沿線住民の理解と協力を得るようにすること、などが示された。その後、財源の確保やJR各社との問題点を整理し、この条件がまとまったところから着工することになったものである。
 この新八代・鹿児島中央間も当初は、新幹線用の橋梁やトンネル、盛土などの構造物を造り、その上に在来線と同じ幅の軌間(ゲージ)の線路を敷いて在来線の特急列車を走らせるスーパー特急方式が考えられていたが、博多・新八代間についても条件が整って着工することになり、フル規格と呼ばれる軌間1435ミリの新幹線としたものである。博多・新八代間が完成するまでは、乗客の乗り継ぎを考えて在来線から新八代駅にアプローチ線を造って同じホームでの乗り換えができるようにしてある。
 いずれにしても、この新幹線が安全・大量輸送交通機関としての使命を果たし、地域の発展に役立つことを願うものである。

大保ダムを見学して―沖縄の渇水と技術開発の紹介―

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 独立行政法人 土木研究所 坂本 忠彦

1.はじめに
 2004年3月12日、沖縄総合事務局が沖縄県国頭郡大宣味村に建設中の大保(たいほ)ダムを見学した。その時の見聞を混じえながら、沖縄の渇水とダム建設における最近の技術開発の例を紹介したい。3回に分けて、今回は沖縄の渇水、次回はCSG工法、第3回にプレキャストコンクリートによるダム堤体表面型枠工法について紹介することとする。

2.沖縄は現在渇水中
 沖縄在住の人を除き、沖縄が現在渇水中であることを知る人は少ないであろう。実は私も今回沖縄に行くまで、知らなかった。
 平成15年の水源地降雨量は平年値の71%で、平成16年に入っても現在まで少雨傾向で渇水となっている。
 沖縄の水源はダムからの取水、河川からの取水、海水淡水化施設の生産水の三本柱となっている。2月の日平均給水量は約400,000m3であるが河川からの取水量は約89,000m3、海水淡水化施設の生産水は35,000〜40,000m3で取水の大部分はダムに依存している。
 ダムは国管理6ダム(福地ダム等)を含め9ダムで総利水容量は74,850,200m3であるが、3月10日現在の貯水率は48.9%で平年値より27.8ポイント低い。9ダムの貯水率が59.6%となった1月23日に渇水対策協議会(第2回目)が開かれ、節水キャンペーンの実施が決定された。
 沖縄地方3ヶ月気象予報(3月〜5月)では降雨量は「平年並」となっている。今年の降雨量が「平年並」の場合でもダム貯水率等水源の大幅な回復は難しく、今後の水事情は更に深刻になり安定給水の維持が困難になることが予想され、3月末から給水制限に入る予定という。
 以上は北部ダム総合管理事務所のホームページからの資料の要約である。(http://www.dc.ogb.go.jp/toukan/index.htm
 沖縄タイムス(3月12日)によれば復帰後、本島での制限給水は延べ1030日。32年間で約3年は「断水」であったという。
 沖縄の民家の屋上には、現在も大きな貯水タンクが必ず設置されていて、沖縄へ初めて来た人には珍しい風景となっているが、給水制限になっても、給水時間に皆、貯水タンクに貯水するため節水効果は少ないとも聞いた。私の記憶では沖縄の渇水は継続時間の長い経年型であることが特徴であり今後の経過を見守っていきたいと考えている。

3.大保ダムにおける技術開発
 沖縄の水問題をどのように解決するかについては各種の意見があることと思う。ダムによる水資源開発による解決に限度があることは承知しているが、水資源開発の基幹施設としてダムが大きな役割を果たしていることも事実である。
次回、大保ダムにおけるCSG工法について紹介することとする。

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