自然電位測定の測定方法

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JSCE-E 601-2000 コンクリート構造物における自然電位測定方法について、質問があります。
4.1と4.2には、鋼材を電位差計のプラス端子に、照合電極を電位差計のマイナス端子に接続すると定められています。照合電極をコンクリート表面に接触させるから、コンクリート表面を電位差計のマイナス端子に接続することになります。これは、コンクリート表面の電位を基準(=0)としたときの鋼材の電位を測定していることになります。なぜこのように決めたのか理由を教えて下さい。
照合電極はコンクリート表面を移動させ、コンクリート表面のいくつかの点で測定

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コンクリート表面の電位を基準(=0)というより、照合電極を基準(=0)として計測するため、一般の電気で使用する電圧計では、マイナス端子を照合電極、プラス端子を測定対象である鉄筋に接続すると、計測される符号はそのまま鉄筋電位として表されます。

すなわち、飽和硫酸銅電極(略称CSE)をマイナス端子、鉄筋を+端子につなげば、例えば-0.150Vと電圧計に表示され、記録には鉄筋電位=-150[mVvsCSE]と基準に何の照合電極を使用したか明記します。

もし、マイナス端子を鉄筋、プラス端子をCSEに接続すれば、電圧計は+0.150Vと表示されますが、この場合、鉄筋を基準にCSE電位を計測したことになり、CSE電位=+150[mVvs鉄筋]ということになります。

なお、電気化学用計測器、電位差計では、マイナス端子に相当する端子はWE(WorkingElectrode)、プラス端子に相当する端子はRE(ReferenceElectrode)といい、WEを鉄筋、REを照合電極に接続し、計器内で符号を逆転させ、-0.150Vと表示し、-150[mVvsCSE]と記録します。

電気工学用も電気化学用計器も、プラス端子の方が入力抵抗を高くなっており、マイナス端子をアース側につなぐようになっています。
電気工学計測時には、いわばアース側、大地に接触しているアース線や、土木建築の基礎鋼材をアース、すなわち基準(=0)にして、100V、200Vの値を測定しています。
一方、自然電位は、本来アース側の鉄筋の電位を、照合電極というセンサーを基準(=0)
にして、-0.15V、-0.30Vの値を計測しています。
電圧計で測定するならば、マイナス端子を鉄筋に接続すべきですが、その場合は符号を逆転して読まねばなりません。

なお、電気工学では抵抗やコンデンサ、コイルといった電気・電子材料の電圧・電流を計測しますが、電気化学では金属と環境界面での物理化学的エネルギーを計測しています。金属はそれが接する環境により、その金属特有の電位(物理化学的エネルギー)を示します。高校化学で習うイオン化傾向がその例です。

CuやAg,Pt,Hgなどは、それが接する環境を一定のものにしてやると、極めて安定した電位を示すため、照合電極として使われます。
鉄などもある程度は電位が安定しておりますが、pHや塩分、溶存酸素濃度等々により電位が変化します。この現象をまとめたものが電位-pH図と呼ばれるものです。コンクリートのようなアルカリ環境では通常鉄筋電位は高く(貴に)計測されますが、塩分があると腐食して低く(卑に)計測されます。ただし、酸素濃度が低くなっても卑に計測されるため、自然電位が必ずしも腐食状態を反映しない原因となります。

自然電位計測に関しては、物理化学のなかでも、電気化学の分野になります。
簡単な電気化学の本を読めば、電位計測の原理は分かるかと思います。

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y.shinoda様
親切に説明していただき有り難うございます。が、未だ、良くわからない点があるので追加質問させてください。
御説明では、照合電極を自然電位測定の基準とすることを当然と考え、なぜ、照合電極を自然電位測定の基準とするのか、その理由を説明しようとしておられません。元の私の質問の主旨は照合電極を自然電位の測定の基準にする理由です。マイナス端子を鉄筋、プラス端子をCSEに接続すれば、電圧計は+0.150Vと表示されますが、この場合、鉄筋を基準にCSE電位を計測したことになり、CSE電位=+150[mVvs鉄筋]ということになります。それで良いではありませんか。そうすれば、測定された電位が貴の時に腐食している可能性が高くなります。それで良いではありませんか。私がこのように考える理由を、繰り返しになりますが、申し述べます。
自然電位の測定の結果、等電位線を描き、これを報告する場合があります。等電位線の意味を考えたとき、鉄筋を基準に照合電極の電位を計測する方が、合理的と思えます。照合電極をコンクリート表面を移動し、測定値の等しい点を連ね、等電位線とします。等電位線には-150mVと注記されます。等電位線上の任意の1点における自然電位が-150mVと言う意味ですが、この点における電位ではなく、この点を基準にした鉄筋の電位が-150mVです。測定に当たって、マイナス端子を照合電極、プラス端子を鉄筋に接続しますが、プラス端子を鉄筋表面上を移動することはありません。定点です。「プラス端子を測定対象である鉄筋に接続する」と説明され、鉄筋が測定対象と説明されていますが、等電位線を描く時、等電位線上の各点こそが測定対象であるべきと思います。
等電位線と言うと等高線を連想します。等高線に700mと注記したとすれば、等高線上の各点の高さが700mであることを意味します。等高線上の任意の1点が、平均海面を基準にして鉛直に測定したとき、高さ700mであることを意味します。各点の高さを平均海面を基準にして測定します。各点を基準にして平均海面の高さを測定することはありません。自然電位の測定における約束は、等高線に対して-700mと注記するようなものだと思います。この点を基準にして平均海面の高さを測定すると-700mである、と説明することになります。それで、違和感を感じて理由を質問しました。技術的な約束事は、等電位線と等高線のように異なっていても、連想によって類推することで理解が容易になるようにすべき、と思います。自然電位の測定における約束は、類推による理解を困難にしています。
等電位線を描いて報告することがなければ、電位の測定は相対的ですから、どちらを基準にしてもそれは約束であって、どちらを基準にするのが望ましいと言うことはありません。簡単な電気化学の本を読めば、電位計測の原理は分かりますが、照合電極を自然電位測定の基準とする理由はわかりません。
よろしく。

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照合電極は、標高測定における仮ベンチマークのようなもので、不動点です。
照合電極を基準に、色々な高さの鉄筋という山の標高を測量するわけです。

照合電極は、ある一定の電位を示すように工夫がされています。
基本となる照合電極は、標準水素照合電極(NHE:Pt/H+,H2)といい、これが標高測定における海面レベルとなります。NHEは非常に安定性がありますが、構造および機能上、実験室内での使用にしか耐えれません。そこで、多少安定性は劣りますが、実用上問題のない各種照合電極が使われています。
例:飽和硫酸銅電極(CSE:Cu/飽和CuSO4水溶液)=+316[mVvsNHE]
  飽和カロメル照合電極(SCE:Hg/Hg2Cl2/飽和KCl水溶液)=+242[mVvsNHE]
  飽和塩化銀照合電極(SSE:Ag/AgCl/飽和KCl水溶液)=+196[mVvsNHE]

一方、金属はその表面状態や設置環境(pH,溶存酸素濃度,塩化物濃度等々)により、色々な電位を示します。

そうした中でも、CuやHg、Agなどは表面状態と設置環境を一定にするとかなり安定した電位を示すため、上記照合電極として使われます。

しかし、鉄などの金属は少し安定性が悪く、表面状態や設置環境により色々な電位を示してしまいます。そこで、安定した電位を示す照合電極を基準に、色々な電位を示している鉄筋を計測するわけです。コンクリート中でも塩分濃度や鉄筋表面の腐食状態によって、鉄筋は場所場所によって違う電位を示しています。それを安定した照合電極で計測すると、ある程度鉄筋の表面状態や設置環境が類推するのです。

我々電気化学屋は、照合電極を海水や土壌中に漬けたり、挿したりして、鋼材の電位を測り腐食状態を調べたり、種類のわからない金属がアルミなのかステンレスなのか調べたりしています。照合電極は電気化学の世界では大切なベンチマークです。

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y.shinoda様
親切に説明していただき有り難うございます。が、未だ、良くわからない点があるので追加質問させてください。
次の部分が理解できません。
[y.shinodaさんの引用 始]
照合電極は、標高測定における仮ベンチマークのようなもので、不動点です。
照合電極を基準に、色々な高さの鉄筋という山の標高を測量するわけです。
照合電極は、ある一定の電位を示すように工夫がされています。
[y.shinodaさんの引用 終]
照合電極は、「一定の電位を示すように工夫されている」のでしょうか。私はそうは思いません。照合電極は、「測定点と電位差計の間に生ずる電位差が一定になるように工夫されている」と思います。自然電位の測定について勉強していて、そのように思いようになりました。その理由を述べます。
電位差計は2つの端子があり、2つの端子を押し当てた2点の間の電位差を測定する装置です。任意の点Aの「電位」は定義されず、任意の2点A、Bについて、点Aに対する点Bの「電位」が定義されます。点Bに対する点Aの「電位」も定義され、絶対値が等しく符号が逆になります。電位差計の2つの端子は−端子、+端子と区別され、測定値は−端子側の点Aに対する+端子側の点Bの「電位」が表示されます。
電極は金属製の電気導線で作られています。それで、測定点が電解液の中の点である場合には電極を測定点に押し当てたとき、電極表面で金属がイオン化する反応が起き、電極表面直近の電解液側の測定点Cと電極表面直近の電極内部の点Aに電位差が生じます。電位差計の−端子は電気導線で電極表面直近の電極内部の点Aに接続されますから、測定されるのは電極内部の点Aに対する+端子を接続した点Bの電位です。鉄筋コンクリートの鉄筋腐食に関連して自然電位を測定するとき、鉄筋が点Bです。点Cがコンクリート表面の点、点Aが照合電極表面直近の電極内部の点です。しかし、本当は[点Cに対する点Bの電位]を測定したいのです。このとき、次の式が成り立ちます。
[点Cに対する点Bの電位]=[点Cに対する点Aの電位]+[点Aに対する点Bの電位]
それで、[点Cに対する点Aの電位]が未知ではあっても標準化されていれば、測定された[点Aに対する点Bの電位]を[点Cに対する点Bの電位]の代替にすることが、技術的に意味を持つことになるのです。照合電極は[点Cに対する点Aの電位]を標準化するものであって、標準化のためには一定でなければならないわけです。[点Cに対する点Bの電位]を測定したいのでなければ、照合電極をコンクリート表面の点Cに押し当てる意味がありません。本当に[点Aに対する点Bの電位]を測定したいのであれば、照合電極である点Aは何処にあっても良く、照合電極をコンクリート表面の点Cに押し当てる必要はがありません。[点Cに対する点Bの電位]が測定することができれば、[点Bに対する点Cの電位]を測定することも可能です。絶対値が同じで、符号が逆の数値になります。等電位線を描いて報告する場合には、[点Bに対する点Cの電位]を測定する方が合理的だと、私は考えています。自然電位の測定に於いて、等電位線を描いて報告する場合、点Cの方を動かし、点Bは固定しています。照合電極である点Aが「不動点」ではないでしょう。点Cが動くとき点Aも動きます。照合電極の表面付近における[点Cに対する点Aの電位]が不動なのです。
仮想実験をしましょう。鉄筋コンクリートの1本の鉄筋について、腐食部分と健全部分が有るとして、腐食部分の鉄筋内部と健全部分の鉄筋内部に電位差計の端子を、コンクリート内の電解液の影響を受けないように押し当てることができたとしましょう。鉄筋は表面だけが腐食していて内部は腐食していないとしましょう。このとき腐食部分の電位が低いでしょうか。鉄筋は電気の良導体ですから、電位差は検出されないと思います。逆に、鉄筋の腐食部分に近いコンクリート表面と鉄筋の健全部分に近いコンクリート表面に電位差計の端子を、コンクリート内の電解液の影響を受けないように押し当てることができたとしましょう。このとき、鉄筋の健全部分に近いコンクリート表面に対して鉄筋の腐食部分に近いコンクリート表面の電位が高いでしょう。このことはコンクリート表面の両方に同じ材質の照合電極を用いることで実現できます。照合電極に関して、[点Cに対する点Aの電位]が2つ発生しますが、向きが逆で打ち消し会いますから、測定値がそのまま鉄筋の腐食部分に近いコンクリート表面と鉄筋の健全部分に近いコンクリート表面の電位差になります。
よろしく。

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何か大きく誤解されているようです。
通常の電気工学的な電圧測定と電気化学的な電位測定測定は、全く異なるものです。

電気工学的測定
鉄筋は電子伝導体であるため、1本の鉄筋の両端をワニ口クリップで接続し、電圧計で電圧を測れば0mVと計れます。
それでも、非常に長い鉄筋に、大きな電流を流すと、鉄筋自体にも電気抵抗があるため、多少の電圧数値は測れます。
金属内の電子伝導現象を測定するのが電気工学的測定。

電気化学的測定
1本の鉄筋の片橋をワニ口クリップ(+端子)ではさみ、もう片方に照合電極を当て(−端子)、電圧計で計ると、ある電圧、例えば−300mVなどど測定されるはずです。両方に照合電極をあてても、鉄筋表面の僅かな違いによりある程度の電圧、例えば+数mVと計れるはずです。
金属と環境界面の電子/イオンの化学的反応を計測するのが、電気化学的測定です。

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有り難うございます。
私の理解力が足りないので、未だに誤解が続いているようです。もう少し付き合ってください。
よろしく。
[y.shinodaさんの引用 始]
両方に照合電極をあてても、鉄筋表面の僅かな違いによりある程度の電圧、例えば+数mVと計れるはずです。
[y.shinodaさんの引用 終]
テキストファイルで記述していて、図を用いられないので説明がもどかしくなりますが、辛抱して、図を想定して読んでください。
前回のご説明では「照合電極が電位測定の基準である」と強調されていたように思います。「照合電極」が水準測量における「平均海面」に相当する、と述べていました。両方に照合電極をあてる場合、電位差計の+端子、−端子はどのように接続するのでしょうか。「例えば+数mVと計れ」た時、電位差計の端子の+と−の接続を入れ替えると、「−数mVと計れる」はずです。両方に照合電極をあてる場合、「照合電極が電位測定の基準である」と言う方法で、電位差計の+端子、−端子の接続を決めることは出来ません。両方とも照合電極ですから、両方とも−端子に接続する、と言うわけにはいかないでしょう。約束事ですからどちらでも良いのですが、等電位線を描くとすると、事情が異なってきます。片方を幾何学的な定点とし、他方を幾何学的に移動して、測定結果を整理して等電位線を描きます。幾何学的な定点とする照合電極を−端子に接続するのが合理的でしょう。
照合電極は、「一定の電位を示すように工夫されている」のではなく、「測定点と電位差計の間に生ずる電位差が一定になるように工夫されている」と私は考えていますが、「両方に照合電極をあてる」状況を考えると私の説明が、判り易いと思います。両方の照合電極が「一定の電位を示すように工夫されてい」れば、その間に接続された電位差計が0以外の数値を表示するはずが有りませ。この点については特に解説をお願いします。
[y.shinodaさんの引用 始]
通常の電気工学的な電圧測定と電気化学的な電位測定は、全く異なるものです。
[y.shinodaさんの引用 終]
電気工学的な測定と電気化学的な測定は異なると言うことなのですが、測定装置の主要部分である電位差計は同じ物であると理解しています。
測定対象が違いますから、測定対象の電位差の大きさの違いがら、電位差計の最大目盛や感度が異なることはあるでしょうが、電位差計の内部を流れる微弱電流に起因する電磁誘導で鉄針が動く様子から、電位差の向きと大きさを読み取る原理は同じはずです。また、電気化学的な測定では照合電極を用いる必要があることも異なります。
電位差計の最大目盛や感度が異なる可能性、照合電極を用いる必要、この2つの違いに注意すれば、測定装置の主要部分である電位差計は同じ物であると考えるべきです。異なる部分と共通な部分を認識して考察すべきであると思います。
電位差計が同じであれば、電位差計の端子の+と−の接続を入れ替えることを無条件に拒否することはないはずです。普通は、「点Aに対する点Bの電位」、「点Bに対する点Aの電位」の両方とも同程度の意味があり、どちらを選ぶかは単なる約束事です。ただ、等電位線を描くときには「合理的」な方法が存在します。
[y.shinodaさんの引用 始]
電気化学的測定
1本の鉄筋の片端をワニ口クリップ(+端子)ではさみ、もう片方に照合電極を当て(−端子)、電圧計で計ると、ある電圧、例えば−300mVなどど測定されるはずです。
[y.shinodaさんの引用 終]
この測定では、「鉄筋の片端」と「もう片方」の鉄筋の長さはどの程度と考えているのでしょう5cm程度と5m程度では状況が違います。5cm程度では、全体に均一で測定結果を整理して等電位線を描くことは意味がないでしょう。5m程度であれば、不均一もあり得て測定結果を整理して等電位線を描く意味があると思います。y.shinodaさんは「等電位線を描くこと」に注意を向けておられないように思います。
鉄筋コンクリートの腐食に関連して自然電位を測定するとき、「等電位線を描くこと」は重要です。等電位線を描くとして照合電極を鉄筋表面を移動させることを想定していますか、それとも、鰐口クリップを鉄筋表面を移動させることを想定していますか。移動しない方が幾何学的な定点で、電位測定の基準になるべきと考えています。私が電位測定の基準を論じているのは等電位線の意味を考えるためです。
また、「もう片方」の照合電極は鉄筋表面に直に接触させるのでしょうか。鉄筋コンクリートの腐食に関連して自然電位を測定するとき、照合電極は水を含んだコンクリートに接触させ、コンクリート中の水がCa+イオンやOH−イオンを多く含む電解液であることが、「例えば−300mVなどど測定される」原因の1つと理解していましたが、電解液無しでも、「例えば−300mVなどど測定される」のでしょうか。