アジア・コードの制定は無意味か

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先日、学会の或る委員会の幹事会にオブザーバーとして出席する機会を得た。アジア・コードの制定について議論している際に、或る若い学会員から「アジア・コードの制定に尽力しても日本は取られるだけで得るものは何も無いから無意味でないか」という発言があった。私としては、地理的条件や社会的条件に共通点の多いアジアの国々と協力して統一技術基準の制定に尽力しないと、地理的条件や社会的条件が異なる西欧諸国の基準を鵜呑みせざるを得なくなり、これはアジア諸国のみならずに日本とっても不幸なことになると考えている。このことについて、会員諸氏の活発な議論を期待したい。
フェロー会員 岡田 宏

コメント

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ご指摘のとおり,アジアは,地理的,社会的,経済的状況が欧州や北米と異なります.コードの内容がこれらの状況に影響を受ける場合,このアジアの状況にあったものが必要です.それにもかかわらず,現状は,植民地などの歴史的背景から西欧諸国(特に米英)のコードがアジア各国で使われています.現在,コードの国際化がISOを中心に進められています.これも歴史的背景から欧州の影響力が大きくなっています.アジア,あるいは国際社会でアジアの声を反映するには,アジアが一段となって,欧州や北米と対抗できるように技術的,政治的に力をつけなければなりません.それを可能にするのがアジアコードのはずです.現時点での技術力からすると,日本が主導する形でアジアコードを作る必要があります.独・仏の国内規格のISO規格化,米国の国内規格の海外輸出の現状を見れば,日本の技術のアジアコード化は日本にとって喜ばしいことであり,取られるばかりで何も得ることはないというのは寂しい見方です.逆に日本の影響力の大きさから来る懸念材料の方が現実の問題でしょう.

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アジアコードと言っても人によって捉え方がずれている可能性があります.私自身あまり詳しくはありませんが,たとえば,JISで規定されている「試験方法」を機械的にISO化してしまうと,今まで日本で蓄積してきたデータが使えなくなるといった弊害が起こる可能性もあり,細心の注意が必要だと思います.次に設計基準についてですが,土木学会にはISO対応特別委員会があり,日本の設計基準の考え方や研究成果をISOへ反映させていこうという取り組みがなされていると理解しています.たとえば,ISO23469(Basis for design of structures-Seismic actions for designing geotechnical works)は,日本の先生方が主導権をとって制定にご尽力されていると伺っています.このようにISOという国際標準の枠組みの中で,日本が持つ技術を取り入れることで国際貢献していくというのが現実的な対応だと思います.私は,台湾で設計施工のプロジェクトを10年以上担当してきましたが,台湾新幹線の設計では,道路橋示方書の液状化検討方法,鉄道構造物等設計標準の群杭効果の評価方法は使いました.それは,いわゆる国際標準には明確な規定がなかったり,これらの設計基準の技術的な内容が優れていたからです.このように,日本の設計技術力をどんどんISOへ反映させていく分野はあると思います.台湾の設計コンサルは,AASHOTOやACIを熟知しているので,今更アジアコードを見せられてもおそらく使おうとはしないでしょう.マレーシア・シンガポール・ベトナムあたりの設計コンサルも似たり寄ったりだと思います.東南アジアで実務を経験している土木学会会員も多いですから,そのような学会員を集めて「アジアコードの必要性」について討議してはいかがでしょうか?

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ISOに対してアジア・コードを提案し採用されるなら良いのですがが、現実には問題があります。

土木でも各分野の規準で事情が異なるでしょうが、アジア・コード化以前に、WTO/TBT協定を批准した国では、海外での取引では勿論、海外企業の国内市場参入による国内取引やODA等においてもISOを適用しなければならなくなるのではないかということです(純粋の国内取引は別にして)。これは過去日本の基準が適用された実績があっても今後はどうなるかはわかりません。

またそれでなくとも日本の基準は海外で歓迎されない場合が少なくないと聞いていますので一般的には日本の基準を基本としたアジア・コードを作り適用するには余程の配慮・準備と政治力が必要と考えられます。

なお日本の規準やアジア・コードをISOで認めてもらうには、ISOのしかるべき委員会で承認が必要で、そのためには高い技術水準と規準の妥当性、及び相当な説得力とロビー活動が要求されるようです。ISOは欧州各国の主導で作られつつありますが米国は戦略的に米国なりの対応をしているようです。

たとえば当方の専門分野の日本の鋼橋規準(主として設計基準)は芳しくない状況にあります。というのは世界の主流は限界状態設計法を基本にしているのに対し、日本は許容応力設計法を基本にしているので日本の鋼橋基準は海外からは全く認められないと思われるからです。

以上ご参考まで