土木系の構造物は、税金を投じての建設です。議会で審議して、「万全」を期する「基準」があります。その技術基準をクリアしなければ、予算の獲得すらできないのです。建設するためには、「安全・安心」を獲得するのが社会的使命ということで、「わずかな破壊確率・あるいは超過確率」も、絶対安全といわなければ、反対者が存在するので、土木施設は、万全を期する「神話」がはじまります。阪神大震災の時には、「万全」な「ハズ」の「橋梁」が、あっけなく破壊され、TV画像で放映されました。多くの市民は、頑強と考えた橋梁をぶち壊す地震があり、大地震は、基準を上回るものがあると理解されています。解析手法も、より事実に近いであろう動的な解析で、非線形の効果を取り入れて、塑性ヒンジ位置を分かるようにします。塑性ヒンジは、すなわち破壊部位なので、そこで、地震のエネルギーを吸収することになります。橋梁全体系では、必ず、どこかが被害を受けるので、その位置を明瞭とすれば、軽微な修繕で済むようです。
これまでの設計手法は、その基準以内で、「破壊しないように設計」するもので耐震設計と呼ばれます。しかし、地震の津波のように、その基準を上回る場合があるのですから、これからは、「どのような被害が発生するのか?」「どの位置を破壊させるのか?」「破壊の波及する影響は?」など、基準を上回る地震に遭遇した場合の「減災」といった手法や「防災設計」といった方法になるのでしょう。
今回の大地震は、想定以上で済まされない、様々な問題を抱えています。つまり、土木における「耐震設計」の根本を壊し、「どのように壊すのか?」それは、基準を上回る外力まで想定することになります。壊れる位置や壊れ方を基礎にした「防災設計」に転換することです。もう、これまでのように「壊さないように設計する」というのは、今回のように、多くの犠牲者を生み出し、繰り返すことになります。勿論、エンジニアの端くれとして、ダメッジフリーへと邁進したいのですが、そこにも「マサカ」という破壊もあるでしょう。
万全というのは、ウソつきです。万全でなかったのです。
市民の皆さんの多くが、このようなウソを指摘する時代になっています。在来の「簡便な耐震設計」というのは、ウソつきなので「やめる」以外に手立てがありません。そのことにより、「万全」な「ハズの神話」が一人歩きして、越流するような津波が来ても、避難の足が動かなくなります。
構造物設計は、大地震により、どのような位置で壊し、破壊する間に避難ができるように・・・万全な構造物の神話にならないように・・・