海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

トピックス: 質問 意見交換
| タグ: 防潮林
ユーザー 萩野裕章(独立行政法人 森林総合研究所) の写真

私の勤務先は独立行政法人森林総合研究です。
所属する研究室では、これまで海岸防災林の防風や飛砂抑止等の機能評価、本数密度調整などの管理技術、
加えて津波に対する抵抗力の実験的な評価も実施してきました。

そこで土木に関わるみなさまに、ご要望やご意見を伺いたく投稿します。
具体的には、東北太平洋岸にもクロマツを中心とする海岸防災林が存在し、今回の津波の勢力を減衰させた場合もあれば、
根こそぎ流され流木となって被害を大きくした可能性もあります。

・海岸の砂丘地にある海岸林に対して今後求める、要望されるデータは何でしょうか?
・流木化して大きく失われた海岸林地帯には、被災前と同じ規模(林帯幅や樹高・密度)の海岸林の再生が適切でしょうか?

私自身は日本海岸林学会という比較的新しく小さな学会の広報委員も担当し、
学会内で今回の津波災害に関して
私どもが調査して公表すべき成果は何であるかを議論している最中です。
個人的なご意見お考えで構いません。
海岸林を対象にする技術者・研究者に要望されることをお知らせいただけると、
私どもの仕事もより被災地の再建に貢献できると思っています。
また連携・協力できることがあれば幸いです。

以上よろしくお願いします。

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#40 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 石野(大成建設) の写真

私は、谷底河川(岐阜・三重の宮川)の洪水後の樹木を調査し、ケヤキが比較的他の樹種に比べて流出が少ないとの結果を公表しています。今回の被災地の樹種をネットで概観すると松が主体と考えられますが、樹種・年齢によって、流出の具合が異なるかの調査結果がほしいところです。以前のネットでは、秋田の海岸で、理由は不明ですが、ケヤキを主体とした植林も実施されています。以上、連携・協力も可能です。今後ともよろしくお願い申し上げます。

#41 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 萩野裕章(森林総研九州支所) の写真

コメントありがとうございました。
不勉強でケヤキが水の勢いに対して抵抗が強かったという報告を知りませんでした。
調査公表されている数値は今後参考にさせていただきます。

・松が全国各地で海岸防災林の樹種に選ばれるのは、日常的な飛来塩分や砂地での乾燥に強いためです。
・秋田県ではマツノザイセンチュウ病で多くのクロマツが枯れました。その対策の一環として広葉樹のケヤキが選ばたと思います。
・海岸林の中でも汀線側の飛来塩分が多い範囲はクロマツ、内陸側の塩分が下がった場所はケヤキに樹種を変えることも一つの案だと思いました。

#42 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 匿名投稿者 の写真

私は海岸林の津波防災効果に関する研究者ではありませんので机上の理屈で恐縮ですが、一言意見を述べさせてください。
まず調査を進められるときは、2003年頃以降の土木学会海岸工学論文集をご参考にして的を絞られたらいいと思います。樹林の密度、幅、樹木の直径と抵抗力の関係などが述べられています。
しかし、今回なぎ倒されたものの写真を見ると、折れたのでなく、根こそぎ抜き取られたものも見られます。今回の津波の流速は従来のものよりも、速くかつ継続時間が長かったように思います。したがって、根の張り具合と洗掘の競争があったと思います。現地で倒れた樹木の根の長さ、残った樹木の剛性(可撓性)、折れた樹木の割合なども調べられたらよいと思います。
2番目のご質問に直接の答えではありませんが、引き波の時、もし樹林が健在なら人が引っ掛かって助かる可能性が増すこともありました(日本海中部地震津波)。

#43 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 萩野裕章 の写真

積極的にご意見いただきありがとうございます。

・実際の調査ができるときは、海岸工学論文集の内容を参考にして
調査成果が土木に関わる方々にも活用できるようにしたいと考えます。

・過去に同室の研究員がより精度の高い予測計算には樹木の枝葉部分の抵抗特性把握が必要と考え
実物のクロマツを用いて港湾空港技術研究所の水槽をお借りした実験をしております。
(日本森林学会大会学術講演集:http://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/120/0/847/_pdf/-char/ja/

以後データを整理して幹よりも枝葉部分の抵抗が10倍程度大きいと報告しました。
こういった成果を活用していただけると幸いです。

・海岸林が根こそぎ抜き取られたケースについては、私どもも流失した割合は明らかにするべき
調査項目と考えます。
また洗掘と根の張り具合の関係についてのご指摘は大変参考になりました。
根張りの大きさは抵抗に大いに影響すると思います。
 できるだけ流れない、倒れない林が理想的な海岸林でしょうか・・・。

・私どもの成果や海岸林の現地調査で明らかにすべきことについて
今後も情報交換を望まれる方がいらっしゃいましたら
メールでもお受けしたいです。(haginアットマークffpri.affrc.go.jp)
 ※アットマークに@を入れて下さい。
今後ともよろしくお願いします。

コメントいただいたみなさまありがとうございました。

#47 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 清野 聡子(九州大学大学院工学研究院環境都市部門) の写真

 海岸環境の保全・再生の研究をしております。
 海岸保安林のあり方、ゾーニング、樹種、治山事業についても、被災箇所の具体をもとに、是非とも再構築していただけるよう強く希望しております。
 また、海岸管理の現場では、林務と国土保全の部局の統合的な議論が行われにくいため、あるいは、それぞれが立ち入るとややこしくなるため放置されてきました。復興にあたっては、ぜひ、ご一緒の場をつくっていただけるようお願いいたします。

・侵食と治山事業
 海岸侵食→保安林の植物の枯死、生育不良→保安林自体を保全するための治山事業によるハードな構造物のの建設→海岸侵食の助長→構造物の度重なる被災→同じパターンでの災害復旧の繰り返し→海岸保全や治山事業の費用対効果がはなはだ疑問、という事態になっています。
(治山事業が地域経済に貢献するとしても、中身を見直す必要があります)

・環境上の問題
 このような海岸は、海岸利用が難しいので人目がありません。その結果、不法投棄の場所となっています。このたびの震災や津波でも、そういった不法投棄のゴミが陸側に打ちあがったり、海中に拡散している個所があります。

・保安林に植える樹種、保安林区域の埋立材料
 砂丘背後のラグーンだった場所にも、地下水位が高いため盛土をして、わざわざマツを植林されている個所が多くあります。ラグーンを埋め立てる砂はどこから持ってくるのでしょう?
 手近な、砂丘を削ったり、飛砂を砂浜に戻さず使うなどです。その結果、本来、砂浜や砂丘にあって海岸保全に役立ったはずの材料が消えてしまっています。

・保安林のゾーニング
 保安林のゾーニングの合理性の再評価が必要と思います。場合によっては、管理者間での「換地」も含めて考える必要があると思います。
 海岸管理の行政の現場は、1cmたりとも境界は譲れない、という気持ちで頑張ってこられたとお見受けします。(林務部に本当にそういわれたこともありますし、土木部がそう言っているのも聞いたことがあります。組織とはそういうものですから仕方ないとは思いますが、誰のために仕事をするのかを今こそ痛切に考える時代にはいったと思います)その結果、きわめて合理性が希薄な事業が、林務でも海岸保全でも多くみられます。
 同じお金があるのならば、林務と土木が本気で一緒に考えて、地域の防災や未来のためにも、ゾーニングを見直していただくことを希望します。
 
 昨今は、以前の画一的な事業に比べて、創意工夫や改善をしていただく保安林が増えてきました。これも林学分野もふくめた進展の結果とお見受けしています。
 
 どうぞよろしくお願いします。

#53 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 匿名投稿者 の写真

海岸ではありませんが、十勝川流域札内川などでは河川整備の際に河岸にヤナギを植えています。
海岸防災林に単一の樹木を植林するのではなく、ヤナギのようにしなりがある樹木を混合することにより、より効果があるのではないでしょうか。

#54 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 匿名投稿者 の写真

ご参考まで・・・
横浜国立大学名誉教授 宮脇昭氏が提案している、「いのちを守る緑の防潮林つくり」があります。関連解説ビデオ: http://shokujuman.com/bochotei.html がれきを有効利用して、海岸に常緑広葉樹を幅50-100mで300kmの緑の長城をつくろうというものです。法律(廃棄物処理法等)の壁や予算の問題で国や行政はおよび腰ですが、是非進めてもらいたいものです。 ・報道1.大震災・安心の行方:「森の防波堤」急浮上 植樹に液状化土砂活用、強い街に /千葉 - 毎日jp(毎日新聞)(削除) 2.林野庁、防潮林に補正予算化 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20111005-OYT1T0149... 3.東日本大震災:南相馬のがれき防潮林、事業費一部補正予算に--大畠国交相 /福島 - 毎日jp(毎日新聞)(削除) 4.日テレ NEWSZEROやNHK エルムンド、TVK 佐藤しのぶの出逢いのハーモニーでも出演されています。5.最新刊:瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る 学研新書

#58 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 河口智志 の写真

2010年7月に日本沿岸域学会でのことです。私の発表後に、元建設省U氏が、日本の砂浜の侵食が危機的状況にあるのに、海岸林の研究なんかひつようなのか!と冒頭から厳しいご意見をいただきました。

今ある海岸林では、大地震による津波に対する効果は確かに厳しいものがあるかもしれません。先人の努力により、砂浜からの飛砂から家屋や畑を守ってきた砂防林や防潮林は、今、その役割の転換期にあるのかもしれません。課題は、林帯幅をどれくらい造れるか。海岸林学会としてどのような発信をされるのか見守りたいと思います。

#59 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 永井英樹(環境設計株式会社) の写真

まだまだ防災林については素人ですが、コメントさせていただきます。

当方も造園学会員として、陸前高田から亘理町あたりまでの防災林の被災状況を調査してみましたが、
防災林の津波に対する効果の検証等は非常に難しいテーマだと痛感しています。
ただ、現地で進む復旧工事や堤防築造工事を見て感じるのは、もっと一体的に考えるべきだということです。
特に留意しなければならないのは、貞山堀周辺にあった広大な松林が単に防砂や防風、防潮等の機能だけではなく、
海外からも観光客が訪れる貴重な景観資源であったことや、そこには地域の人々のコミュニティも形成されていたことなどです。

東日本大震災の津波で失った防災林を再度形成するためには、100年近くの年月が必要です。
後世に残す防災林を創造していくためには、防災林のことだけでも、堤防のことだけでもなく、
様々な視点での考え方を盛り込んだものにしていくべきだと思うのです。

遅いのかもしれませんが、
私が思うのは、造園や森林、土木等の分野の技術者が縦割り的な考え方でなく、
連携して、「これからの防災林のあり方」「今ある防災林への対策」を考えていくべきだと思います。

もし、可能でしたらそのような連携の場を作りたいです。
以上、乱文で申し訳ありませんが、
今後共よろしくお願い致します。

#60 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 河口智志 の写真

先日、2年ぶりに千葉県、九十九里浜の北部(匝瑳市、望洋荘)の海岸林を見てきました。かつての研究のフィールドでした。美林だった空間が無惨にも枯れて、ボキボキになっている様は、震災による津波のすごさを感じました。チガヤやその他の草などが地面を覆っていました。あたりは、クロマツの木を切り倒したあとが痛々しくも感じました。

津波によって、打ち上げられた砂は、新たな飛砂の供給源になっている箇所も見られ、砂浜と砂丘とクロマツの関係をあらためて垣間見ました。はたして、ここにまたクロマツの樹林はよみがえるのだろうかと、しばし呆然とその光景を眺めてしまいました。わずか2~3mの津波の破壊力もあなどってはならないことを知りました。

#63 Re: 海岸防災林に関わる技術者・研究者への要望を求めています

ユーザー 匿名投稿者 の写真

 農研機構の研究機関でチャの根系形成を扱ったことのある元研究者です。本年6月20日付けの朝日新聞に、防災林再生を考える上で、直根の形成が防災上、大きな意味を持つという記事が掲載されていました。樹木の倒壊を抑えるには深く伸びた直根が重要という考え方はその通りだと思います。
 チャの分野でも、茶園土壌の緊縛力はチャの根張りの広さ、深さと密接に関係していることが知られています。注意すべき点は、チャの根系分布は、実生苗と栄養繁殖苗とで大きく異なることです。実生苗の場合は、種子根が深くまで伸び、土壌を固定する力は大きいと言えるのですが、挿し木による栄養繁殖苗の場合、茎からの不定根は横方向へ伸びる性質があり、土壌条件に関係なく、根張りが浅くなります。根の伸張方向の決定には、伸長する根の重力屈性が最も大きく関わっています。チャでの観察結果では、種子根の根冠細胞内には、多量のアミロプラストが含まれ、敏感な重力センサーとして働きますが、挿し木からの不定根の根冠内のアミロプラストは存在しないか、わずかです。つまり、重力センサーとしての感度が低く、このため、横方向へ伸長する傾向が強いと思われます。アミロプラストの量には、発根、成長初期の栄養状態の違いが大きく影響すると考えています。実生苗では種子根が、挿し木苗では不定根が、その後の根系の骨格となるため、成木での根系分布に大きく影響すると思われます。検証は必要ですが、このような実生苗と栄養繁殖苗での根系分布の違いは、他の樹種でも同様ではないかと思われます。
 従って、現場で種を播いて実生苗を育てるのであれば、直根を持つ、深根タイプの根系形成が可能と思われますが、同じ樹種でも、栄養繁殖苗では、根張りを深くする何らかの工夫が必要と思われます。
 根張りの改善に関しては、記事にあった山寺氏の育苗方法も同じ発想のようですが、チャの分野では、挿し木苗の不定根を下方へ誘導するという考え方に基づいて、深型ポットの利用技術が実用化されています。
 また、資材メーカーの(有)グリーンサポートでは生分解性の不織布を利用した各種の製品を開発しています。この製品を使用すれば、育苗中の根巻を生じず、また、ポットのまま植え付けることができるため、移植時の植え傷みも防止でき、深根化にも役立つと考えられます。当該製品は、軽く、取り扱いも容易です。海岸という気象環境や土性にあった樹種を選んで、根系形成や土壌緊縛の効果を検証してはどうでしょうか。
 どなたかのコメントにあったように、効果的な防災林の再生には、造園や森林、土木、農学、生態学等の分野横断的な情報交換、資材メーカ-等との提携が必須だと思います。

 ご参考までに文献をいくつかご紹介します。ご参考になれば幸いです
1.山下正隆 1989.茶樹における根群の形成と断根後の根の再生に関する研究.野      菜茶試研報 D2:29-117.
 2.山下正隆2001.我が国におけるチャの根の生育、根系形成に関する研究史(その      1).根の研究9:123-129.
 3.山下正隆2001.我が国におけるチャの根の生育、根系形成に関する研究史(その      2).根の研究9:161-166.
 4.M Yamashita・N Itou 2012.Influences of root circling on the growth of Ligustrum      obtusifolium and Quercus myrsinifolia seedlings. Roots to the Future (8th   
    Symposium of the International Society of Root Research): 57.
 5.グリーンサポート.http://www.green-support.com/ 生分解性不織布資材メーカー。
   製品は、林業、園芸、環境、水産などの分野で幅広く利用されています。