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TDMの目的で高速道路・一般道路を問わずロードプライシングを行うことは,合理的な金額の範囲内であれば賛成です。また,その収入を道路整備(環境対策を含む)に充当することにも賛成です。しかし,ロードプライシングの必要性がある地域は大都市圏のみです。日本の大部分の地域では,無料か,現在よりもはるかに安い通行料金を設定した方が,巨額の投資によって建設された高速道路の稼働率が高まり,そのことによって一般道路の交通環境が大幅に改善します。

さて,前回のコメントでは触れませんでしたが,岡崎さんのコメントにある「わが国の道路の整備水準は欧米先進国に比べて著しく低く,今後も高速道路の整備を続けなければならない」という主旨にも,全く同感です。私は日本の国土の広さや経済規模からいって,最終的に11,520km,いや14,000kmの高規格道路を整備するとしても,欧米の水準と比べて贅沢でもなんでもないと思っています(ただし,規格が現状のままでよいとは思っていません)。

例えば,主要国の道路総延長に占める高速道路総延長の割合(1998年)[注1]は,ドイツ1.7%,米国1.4%,フランス1.1%,イタリア1.0%,イギリス0.9%に対し,日本はわずか0.6%です。ここまでを聞いた人は大抵,「欧米には勝てないよ」といいますが,何とお隣の韓国は2.4%だというと,「韓国よりも低いのか」と驚きます(韓国の皆さんごめんなさい)。韓国の「東名・名神」に当たる京釜高速道路は8車線ですが,日本には8車線の高速道路は,首都高速道路の合流部を除いてまだありません。日本の道路財源は年間約12兆円(一般道路9.3兆円,高速道路2.6兆円)と世界最高水準にあり,道路延長も欧州諸国を超えていますが,高速道路の整備状況では明らかに遅れを取っています。

ところが,国民の意識はこうした客観的なデータとはかなり乖離があります。平成15年7月に道路四公団民営化推進委員会が実施した世論調査の結果では,「採算が合わない高速道路は建設すべきでなく,早く通行料金の値下げをすべきだ」との回答が76.8%を占めています。これを委員会や多くのマスコミは,「高速道路の建設に歯止めをかけるべきとの世論の表れ」と評していますが,やや短絡的な感が否めません。

なぜなら,この調査の前提として,多くの回答者に「高速道路は有料であり,全国料金プール制で建設するもの」という暗黙の了解があるからです。もし高速道路の無料化を選択肢として与えたら,まったく違う結果となったのではないでしょうか。

この調査結果は非常に示唆に富んでいます。高速道路の利用頻度では,「年に数回程度利用している」が53.5%,「まったく利用していない」が20.7%です。高速道路の料金については,「高い」が50%,「やや高い」が25.1%という結果が出ており,通行料金が高く,高速道路が有効に活用されていない実態が浮き彫りになっています。

参考:高速道路の建設に関する基準等世論調査・単純集計結果速報(道路関係四公団民営化推進委員会事務局)

日本の高速道路整備に有料道路制度が果たしてきた役割は大きいですし,今日その成果は誰も否定しないでしょう。しかし,国民の支持を得ながら今後も同じ手法で高速道路を造り続けることは,もはや困難です。多くの国民の支持を得て高速道路整備を続けるには,高速道路を誰もが気軽に使える身近なインフラとして生まれ変わらせ,稼働率を向上させることが不可欠でしょう。そのためには,高速道路の料金制度の議論は,避けて通ることができません。

[注1] 出典:World Road Statistics 2000

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