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#20 共に考えることの難しさ
東京電力の井上です。
私は、NPO的な活動はしたことがありませんが、葛野川の立ち上げにあたり、環境影響評価の地元説明や各種の用地交渉に説明役として参加したことがあります。
葛野川では、特に反対派がいたわけではないので、それほどの苦労はしなかったのですが、その中で印象に残っていることが一つあります。
環境影響評価書を説明し終えたとき、最後に質問とも意見とも付かない会話の中で下流に住む方から「環境基準を守っているといってもやはり水は変わるんだよね」とぽつりと言われたことです。その場では、そのまま終わってしまいましたが、確かにその当時は、環境基準を守れば、洪水時の濁水の濁りが多少長くても・・という甘さもあったと思います。
実際の施工では、当時建設省の担当官から水利願の許可条件として湛水池を迂回する水廻し水路をもうけることを指導され、設置しました。これにより下流には洪水終了後平常水量に戻り次第すぐに水を迂回することで対処する設備を設けたことにより、一般のダム放流水に見られる濁水の長期化は回避した形と成っています。ところが、この処置をすると湛水池の長期的水質を考えた場合、湛水池内の水の循環が阻害され、湛水池に洪水時の濁度がより長期化、不純物の蓄積が促進されることも考えられます。
果たして、どちらが本当に良いのか。本来計画時点で何らかの回答を用意しておくべき課題でると思いますが、葛野川の時は、そこまで深く追求する時間的余裕もなくすぎてしまったの実状です。この答えは、実際に池の運用という時間とデータの蓄積が無いと出ない答えですので、果たしてどちらが良かったのか、現時点では答えがでていません。
技術者として、最善は何か、何を選択すべきかという課題の重要性を考える良い経験をしたと思っています。