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前回の回答では、「接着系アンカー」と「先施工アンカー」とを比較してコンクリート部分の破壊形式が異なると申しました。

すなわち「接着系アンカー」ではコンクリートとアンカー材(鋼材)とを結合する役目の接着材がアンカー周囲に分布するため、引抜き耐力は?アンカー体と接着材との間の破断、?接着材とコンクリートとの間の破断、?コンクリートのコーン状破壊、?アンカー材の破断のいずれかで決まります。一方、「先施工アンカー」は接着材はありませんので、?コンクリートのコーン状破壊、?アンカー材の破断のいずれかで決まります。

コーン状破壊とアンカー材の破断は共通ですが、「接着系アンカー」の場合の?および?が「先施工アンカー」では存在しません。アンカー体とコンクリートの間の付着力も考慮しません。その理由は先施工アンカーではアンカー下部をJ型に曲げるか頭をつけるかして必ずコーン状破壊を生じさせるようにしているためです。ところが「道路標識設置基準・同解説」の設計例では付着力の検討のみ行なわれており、アンカーボルトの図を見ても曲げも頭も何もない真っ直ぐな丸鋼がコンクリートに埋まっているような設計となっているので、これはどういう設計思想だろうか、ということになるのです。

従って、ご質問の「先施工アンカーは、付着応力について検討し、・・・」とあるのは、誤りです。先施工アンカーでは付着応力は検討しません。

スポッと抜けるようなアンカーを設計するのはナンセンスですから、自由に設計できる先施工アンカーでは当然、より抜けにくいアンカー形状にします。一方、あと施工となる接着系アンカーでは真っ直ぐなアンカーにならざるを得ないので、付着も検討する必要があります。一般に接着材(樹脂)はコンクリートより強度が高く、コンクリートにある程度浸透するため結果として付着力(というよりせん断力という方が適切と思います)がかなり高くなります。

また、ご質問の「あと施工は引張力について検討している」という表現は良く理解できませんが、先施工アンカー、あと施工アンカーのいずれも想定しうる破壊形式について全て検討すべきで、各々の引抜き耐力の最小値がそのアンカーの設計引抜き耐力となります。

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