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おっしゃるとおりだと思います。

小泉政権による道路改革の中で,最も(国民的な)議論が不十分だったのが,この「採算性のみで議論してよいのか」という点です。道路四公団民営化推進委員会の中では,他の多くの委員が「財務的効率性」のみに評価基準を置いたのに対し,ほぼ中村英夫先生だけが「経済的効果,財務的効率性,社会的効果を総合的に勘案して決定すべき」と主張しました。以後,この委員会では今井敬氏が委員長の職を辞し,中村先生も欠席しています。

参照投稿
意見交換広場:道路関係四公団民営化推進委員会での議論について

道路における「採算性」とは,通行料金による償還主義,もしくは営利企業による道路事業を前提とした場合の用語です。無料道路の場合には「採算性」という考え方は存在せず,費用対便益という表現になります。

もともと一般的な公共事業のパフォーマンスは,外部経済効果を含む費用対便益で測られるものでしたが,ワトキンス調査団に「信じ難いほど悪い」と評された日本の道路を緊急に整備する必要から「例外的に」導入されたはずの有料道路制度によって,いつの間にか「採算性」という尺度が一人歩きを始め,誰も疑わなくなってしまった,というのが昨今の状況だと思います。付け加えるならば,これは世界でも稀に見る状況ではないでしょうか。

しかし,小泉政権による道路改革の本質は,端的に言えば「高速道路の営利事業化」であり,民営化後の新会社は株式上場を目指すとしています。また,用語は削除されたものの,一時は「恒久有料化」の方針が出ていました。このような営利事業化を前提とすると,やはり「採算性」が最も重要な尺度になっても仕方がないでしょう。

例えば,皆さんが銀行から金を借り,友人から出資を受け,自分の家の前に細長い土地を買って(または借りて),通行料金を徴収する事業を始めるとしたら,真っ先に考えるのは「採算性」ではないでしょうか。もし料金を安くしたら,近所の混雑している道が空いて町内の住民に喜ばれるという現実があるとしても,町会費から補填してもらわなければ値下げするインセンティブは働かないでしょう。あるいは,川に橋を架ければ交流が盛んになって町が豊かになるとしても,通行料収入が増えないならやりたくないでしょう。儲けなければ銀行や株主から叱られますから。

民営化と採算性はセットです。民営道路会社による有料道路事業を前提とするならば,「採算性のみを基準にしない」という考え方は,突き詰めればどこかに矛盾があります。

その矛盾を巧妙に解決する現時点での落とし所が,「四公団民営化+国家による高速道路保有+新直轄方式による(無料)高速道路の整備」となったわけですが,「こんな複雑な制度にするくらいなら,高速道路はすべて直轄事業に切り替えて無料にしよう」という主張が出てきたのは,半ば当然の帰結といえましょう。

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