堤防構造と堤防定規断面の関係について

セクション: 
ユーザー まさひろ の写真

初めまして初めて投稿致します。
私は下請コンサルとして複数の会社の図面を見てきましたが、最近堤防断面について三面張構造で護岸勾配を立てた構造の図面を見るようになり、疑問に思うようになりました。
疑問に思う点を河川構造令を見ながら自分なりに整理しましたが、私の考え方で良いのか結論が出ませんので、出来れば意見をお聞かせ下さい。宜しくお願い致します。

堤防構造と堤防定規断面の関係について
河川構造令第19条では、堤防の材料と構造について示されており、区分すると下記に分けられる。
 ①土堤原則 
 ②パラペット構造の特殊堤
 ③自立構造の特殊堤
 ④三面張構造の特殊堤(自立式構造に該当しない)

 また第22条では、盛土による堤防の法勾配は2割以上とされているが、同時に「パラペットの部分」及び「護岸で保護される部分を除く」と書かれている。土堤堤防では天端幅・余裕高・法勾配が規定され、ゆわゆる「堤防定規断面」を確保する事により、堤防としての最低限の機能を満足させる考え方である。

 ここで堤防定規を大きく左右する護岸について着目すると、護岸の定義と分類は、第25条に示されており、「流水の作用から河岸又は堤防を保護する為に設けられる構造物であり、高水護岸・低水護岸・堤防護岸(高水護岸と低水護岸が一体)に分類出来る。裏法の堤脚部における土留めとしての擁壁機能も護岸に含まれる。」と記載されている。

 裏法の護岸は堤脚保護工として解説されており、説明図では定規断面の法先を起点とした図となっており、擁壁(空積)高さについても1m以下が望ましいとなっている。
この事から④三面張構造の特殊堤は裏法の護岸高が高く、第25条に示されている護岸には該当しないのでは?と疑問が生じる。

よって第19条の解説で述べられている三面張構造についての記載を調べると、第28条に「波浪の影響を著しく受ける堤防に講ずべき措置」として示されており「天端・裏法面及び裏小段をコンクリートその他これに類するもので覆う事。」となっており、護岸としての位置付けよりも、堤防法面を保護する被覆工としての意味合いが読み取れる。

ここで堤防材料と法勾配及び護岸工の関係を整理すると下記の組み合わせが考えられる。
 ①-1土堤⇒川表 法覆護岸1:2.0勾配
     ⇒川裏 土堤1:2.0勾配(堤脚保護H=1m以下)
 ①-2土堤⇒川表 護岸配置により1:0.5~1.5勾配選択可能
     ⇒川裏 土堤1:2.0勾配(堤脚保護H=1m以下)
 ②-1パラペット構造の特殊堤の土堤部分
     ⇒川表 法覆護岸1:2.0勾配
     ⇒川裏 土堤1:2.0勾配(堤脚保護H=1m以下)
 ②-2パラペット構造の特殊堤の土堤部分
     ⇒川表 護岸配置により1:0.5~1.5勾配選択可能
     ⇒川裏 土堤1:2.0勾配(堤脚保護H=1m以下)
 ③自立構造の特殊堤⇒規定無
 ④三面張構造の特殊堤(②のパラペットを三面張構造とした構造?)
     ⇒川表 護岸配置により1:0.5~2.0勾配選択可能
     ⇒川裏1 土堤1:2.0勾配にコンクリート等により被覆
     ⇒川裏2 土留擁壁配置により1:0.5~2.0勾配選択(構造令違反?)

 上記区分の①-1②-1では「堤防定規断面」を確保した上で、川表側に被覆護岸(HWL以下)を設置し、川裏側は張芝により保護する工法である。①-2②-2はもたれ式護岸等にする事により、川表側の法勾配を1:0.5~1.5とする工法である。⑤は天端幅・天端敷高・法勾配についての規定を受けない構造であるが、東京や大阪等の都市河川の高潮区間等において限定的に設けられている工法である。④は略②-2と同じ断面であるが、裏法を被覆する工法である。
 
 パラペットを採用する場合②又は④の選択となるが、従来の計画では②-1の採用例が多く、まれに②-2を採用し川表側を1:1.5のブロック張(練張)とする程度であった。近年の計画図面では、④を採用し、護岸勾配を川表1:0.5・川裏1:0.5又は1:1.0とした例を多く見るようになった。特に川裏の護岸は全高に配置し、流水による洗堀が無い為、法勾配を1:1.0として、控え厚10cm程度の平ブロック張としている例が多く、川裏の定規断面が確保されていない点や、盛土の安定勾配(1:1.5~1.1.8)を無視した法覆工となっている点など、問題点の多い計画が目につくようになった。

これは「護岸で保護される部分を除く」の適用方法に問題があるように思えてならない。単に護岸と言っても、特殊堤に含まれる自立構造の護岸・ブロック積等のもたれ式護岸・ブロック張(練張・空張・平ブロック)等の法覆工と、護岸の目的と構造により強度が大きく異なっている。このため三面張構造とした場合、護岸の組み合わせにより、堤防としての強度にかなりの幅が出来る事となる。また三面張構造では流水による洗堀のみに着目しがちで、堤防定規が縮小される事により、浸透水の影響・地震時の影響に対して、堤防としての機能が満足されているか?の疑問も生じる。

以上の事から「護岸で保護される部分を除く」とは自立構造若しくは、盛土の安定勾配を確保した被覆工において適用されるべき事項であると考えられる。

コメント

ユーザー 匿名投稿者 の写真

貴方がいわれるように 三面張構造は特殊堤であるので 状況に応じて河川管理者が判断するべきものです
同じような地域でも管理者により管理用基準の記述が違うのを見てもわかると思います
コンサルタンツは管理者に技術としての情報を与え管理者に行政判断の資料を提供することはできても 判断するのは管理者です
「国土総研」の河川管理の基準を担当している部署質問箱がありますから聞いてみるのも一つの手です

ユーザー 匿名投稿者 の写真

 前の回答者さんと同様な内容に近いですが、理屈では貴方のおっしゃるとおりだと思います。
 しかし河川法における土地収用法の適用が相当強いとはいえ、使える資源も時間も無限てな訳ではありません。現実に使える資源の中で上手く折り合いを付けるために現場では色々知恵を絞っていると思います。
 妥協と言われればそれまでですが、逆に原則に従えば破堤など絶対起さず、洪水も発生しないとは言えないと思います。それにチョット誤解を招きそうな考え方ですが、ただ強い構造物を作れば良いとも思えません。