ひびわれ注入工のエポキシ樹脂注入材種類について

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橋梁補修の修繕設計を行っている、設計コンサル担当者(4年目)です。

■質問事項
ひびわれ注入工のエポキシ樹脂の注入材の選定方法について教えてください。
ほとんど進行するおそれがないひびわれについて、「土木補修用エポキシ樹脂注入材1種」が適当だとされています。[コンクリートのひび割れ調査、補修・補強設計指針2013 P128より]
しかし、業者に注入材の見積りをお願いしたところ、1~3種について単価、施工性に違いはないと回答を得たため、念のため、伸び率が考慮されている2種を採用したほうが良いのではないかと考えました。
そこで、以下について教えていただきたいです。
・注入材の選定理由として、次が妥当であるかどうか。
選定理由:発生しているひびわれは、今後進行する可能性が低いため、「土木補修用エポキシ樹脂注入材1種」が適当だが、材料費、施工性に違いはないため、同等の性能に加えて伸び率を考慮した「土木補修用エポキシ樹脂注入材2種」を採用する。

・[コンクリートのひび割れ調査、補修・補強設計指針2013(P121、128)]以外にも注入材の選定フローの根拠・出典などもありましたら示して頂けましたら助かります。

■背景
対象橋梁(RCT桁橋、1982年竣工)の桁部分に発生しているひびわれについて、
【外観調査】
・~0.4mm程度のひび割れ幅が、約10cm間隔で橋軸と直角方向に各桁全体的に発生している。
・桁側面に多く発生し、桁下面にも存在するが桁側面から桁下面にかけてのひびわれは貫通していない。
→発生特徴からASRの可能性は低い。

【コンクリートコア試験】
・塩分濃度は、鉄筋発生限界濃度を下回っている。
・中性化もほとんど進行していない。
→塩害、中性化の影響は低い。

【その他】
・補修履歴なし
・現行指針の耐荷力を構造計算すると、主桁の曲げ、せん断について許容応力を満たす。
→疲労、過積載車両通行による影響は低い。

これらより、進行性のひびわれではなく、施工時の乾燥収縮等による初期ひびわれと考えられる。
ただし、幅員方向の両端の桁下面には、うき・剥離が発生している(おそらくひびわれからの水、酸素等の侵入により発生していると考えられる。)ため、ひびわれに対しての対策を必要と判断し、対策工法として注入工法を選定した。[コンクリートのひび割れ調査、補修・補強設計指針2013 P121より]

コメント

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まず初めに、前段にある橋梁点検での見立てはどうであったかが一つのポイントで、その所見から大きく外れるようなことは相応の論理が必要となるということ。
また、1度の点検ではなく複数回の点検がなされてると思うので、それらからひび割れ進行度を推し量る事。
2つ目に0.4mmのひび割れが10cm間隔に発生しているものを、初期乾燥収縮ひび割れと結論付けるにはひび割れ数がちょっと多すぎやしないかと言うこと。
また、橋長が分からないので判断できませんが、既成桁なのか現場打なのかで、考えるエリアも変わると思います。

なお、浮きや剥離に対してはハンマーによる点検で落とすのが良いのか、落さなくても良いのかの判断が必要で、ひび割れ補修とはまた違う考え方が必要です。
水侵入で浮きがあるならば、鉄筋錆び進行度合いも考える必要になってきます。

これらを判断する基礎資料として、橋の構造、橋梁点検、塩害地域か積雪寒冷地か否かなどを明確にする必要がありますが、それがないなかでの雑駁な経験論ですが、
表面塩分濃度が低いからと言って、鉄筋は錆びていないというのは推測にすぎませんし、中性化と部分的な鉄筋サビは必ずしも直結しないものです。
なぜなら、初期ひび割れがあったとするなら、そこだけに塩分残留する可能性はありますし、そこだけ錆びることがあるからです(水に漬かっている鉄は必ず錆びる)。
この辺が整理できたうえで、エポ種の選定に入らないと、念のため伸びにも対応してるから良いでしょと言う好みの論理になります。

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ご指摘ありがとうございます。

基礎資料を補足させてください。

■諸元
 橋長16.8m
 幅員12.8m(1路線2車線+両端歩道)
 上部工:RC現場打ちT桁橋(5本)
 下部工:逆T式橋台(護岸で覆われ、一部露出の状態から推定)
 塩害地域:A-Ⅱ区分
 積雪寒冷地:否
 交差条件:河川
 竣工年:1982年
 活荷重:1等橋

■履歴など
 点検(今回)2017年:近接目視
   (前回)2013年:遠望目視で今回と同様のひび割れ確認(ひびわれ幅は不明)
 竣工図等は確認できず。

■今回実施した調査
 外観調査
  (前回投稿に加えて)ひびわれが1方向で規則的に発生している。
 コンクリートコア試験
 ・塩分濃度試験:0.3~0.7kg/m3(表面より深度方向3cm毎に5試料分析)
         鉄筋位置0.6~0.7kg/m3で最大となる
         深度方向に塩分濃度値を並べると凸型で外来塩分の影響は低いと考えられる。
 ・中性化試験(前回投稿)
 ・圧縮強度:当時基準強度21.0N/mm2を超えて健全
 はつり調査
  桁下面①(ひびわれ含む部分):日本コンクリート工学協会基準鉄筋腐食グレードⅠ
  桁下面②(うき・剥離部分):日本コンクリート工学協会基準鉄筋腐食グレードⅢ

■発生箇所
 上部工の桁下面、桁側面であるため、車両等の通行振動によりひび割れ幅が動く可能性がある。

これらとpen様ご指摘を考慮して選定理由を以下で見直してみましたが、いかがでしょうか。

選定理由:ひびわれについて、
     ・1方向に等間隔で発生している
     ・コンクリートコア試験により二酸化炭素、塩化物イオンによる影響は低い。
     ・ひびわれを含む部分の鉄筋腐食グレードはⅠである。
     これらのことから進行性の低い初期乾燥収縮ひびわれと考えられる。
     そのため、[コンクリートのひび割れ調査、補修・補強設計指針2013(P128)]より、「土木補修用エポキシ樹脂注入材1種」もしくは「土木補修用エポキシ樹脂注入材2種」が該当する(ひび割れ進行区分B(ひびわれが進行していない状態))。
     上部工部分に発生しているため、車両等通行時の微細な振動を許容できる伸び率が考慮されている「土木補修用エポキシ樹脂注入材2種」を採用する。

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A区分ということは沖縄かな?
それなら13m程度の橋の上部を現場打にした理由に合点がいきます。
そうなると、中性化、塩化物イオン、アルコツ反応などはバックデータとしての論拠程度を備えれば良い程度で、それ以上考えなくていいです。
ポイントは「10cm一定間隔(規則的直線ヒビ?)」だけです。
これが起こるのは温度ひび割れです。
原因は発熱温度の高いセメントを使ったか、生コン打設初期温度が高かったこと、もしくは型枠散水せずに外回り温度が高くなったことが原因です。
また、比較的初期(脱型後10日程度以内)に発生しています。
要は1982年のヒビが変状もせずに現在に至っているということで、私はこれを「安定ヒビ」と言ってます(勝手な造語です)
これへの対策が急務かと言われれば急務じゃありませんが、А-Ⅱ区域であることを考えると対策するに越したことはないとなります。

ちなみに乾燥収縮ひび割れについてですが、温度ひび割れと似たような傾向を示すこともありますが、その多くは方向性なくヒビが入ることが多いです。また、クラック位置は打設時点では型枠で覆われている桁下面と側面とのことですので、乾燥収縮は起こりにくいのです。
その確認方法としては桁上面を見ればわかります(構造上、見えないかもしれませんね)

次に対策ですが、10cm等間隔を注入するのは不合理です。
ポリマーセメントモルタルによる断面修復、要するに表面を塗りなおしてしまうのが良いような気もします。
この時、はつりを要するかどうかはヒビ深度も関係してくるので検討を要します。
さらに工費がどれくらいになるのかも重要ファクターで、これとの比較検討結果次第です。

少なくとも注入となったとしても、エポ樹脂2種を要することはないと思います。
ヒビの動きに追従するモノのメリットは確かにありますが、反面、デメリットも介在しているということに着目する事も大事です。

少々間違いはあれども、貴方の推測はなかなかいい線をついていると思います。
何を施してもその工法が大きな欠陥になることはほとんどないケースですから、理論追及のために今一度詰めてみると良いです。
こんなことを言うと問題ですが、公金を使った研究材料程度と考えれば良いのです。
頑張ってください。

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横からすいません。ひび割れ状況がもう少しわかるといいのですが。
・乾燥収縮ひび割れは、脱型後に桁下面や側面にも十分起こりえます。乾燥収縮ひび割れといっても、一般的には、初期の温度応力の影響もあります。しかし、当該ひび割れが、いわゆる温度ひび割れである可能性は低いと思われます。
・今の場合だと、乾燥収縮ひび割れは方向性があり、橋軸直角方向に生じるのが一般的です。
・エポキシ樹脂の選択ですが、補修後(注入後)の強度回復を期待するのかどうかということも考え合わせる必要があります。