道路は採算性だけでは判断できない

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ユーザー sanaka の写真

高速道路建設についての昨年末の決着について、マスコミは無駄な道路の建設に歯止めが掛からなかったと批判している。民営化論議の最大のポイントは、債務の返済を何を差し置いても優先するか、債務の総額を注意深く制御しつつ必要な道路を建設するか、ということである。債務が膨れあがって道路公団が破綻し、いずれ国民負担に転嫁されるといった主張や、ファミリー企業の非効率な運営のような極端な議論に引きずられて、1キロでも道路を造るのは方向性としては悪い、という誤った先入観を国民に与えつつある。
道路は国土の基盤的社会資本であり、国民経済的な投資効率、地域経済への効果、事業としての採算性等を総合的に考慮して投資を判断すべきであり、事業の採算性のみで判断すべきではない。このあまりにも当然の議論が無視されて、基盤的社会資本を建設、管理する公団の民営化をあたかも一般企業の規範ですべて判断すべきであるとの考えは、国を危うくする議論である。無論、弾力的料金、サービスエリアの活性化、インター周辺の開発等、民間の知恵をもっと活用すべき分野が多数存在することは当然である。

コメント

ユーザー 匿名投稿者 の写真

民営化論議の最大のポイントは、どのようにして道路公団等の債務を返済するか、その目途がつけて国家的な見地で道路の新設をすべきである、ということである。

すでに債務が膨れ上がって道路公団が破綻している状態であり、債務が実質税金に転嫁され納税者の負担が異常に増加するのは明瞭である。それとも我田引水の政治家などを含む道路建設推進を唱える人達が40兆円を超える債務ととともにさらに増加すると予想される債務を返済してくれるのであろうか。道路は建設されたが、国家(財政)は破綻したでは済まない。

道路等の社会資本の建設を国家的見地で行い、事業採算性のみで判断すべきでないことはちょっと考えてみれば誰でも理解できる。しかし現在のような緊急事態に、都会の企業や住民が払った税金や預貯金・保険料等の積立金を、国家的見地という主張に悪乗りして税金もろくろく払っていない企業や住民のいる地域に、事業の採算性のみならず投資効率もない・地域経済の活性化にも寄与しないところに、道路などの社会資本を作る必要はない。

また現在のように経済が停滞しているときには、むしろ都会や都会周辺の社会資本に金を使うべきである。これによって都会の人や物流の往来が活発化することになり消費を促進し経済活性化する。短期的には地方に社会資本を建設するより事業の採算性は高く地域経済活性化の効果的である。

巨額の債務返済を行える目途をつけてから国家的見地で中長期的に道路等の社会資本を全国ネットワークで建設しても遅くはない。

ユーザー 匿名投稿者 の写真

久しぶりの公団民営化の議論で新鮮でした。
貴君の道路整備は採算性でのみ判断すべきではないというご指摘と大都市周辺への投資促進のご意見賛成です。
幸い品川や六本木など都市再生のプロジェクトは活気を帯びていますが、外環や圏央道などの遅れは首都圏の国際競争力の点からも生活や安全の面からも急がれます。
ただし、貴君のご意見には二つ確かめるべきものがあると思います。
1点は、道路公団は現在の供用路線に関する限りまったく優良企業で借金の返済は問題ないと思われることです。年間2兆円以上の収入があり、約8500億円を返済に充てることが可能です。また債務は実際は30兆以下です(HPによると、公団は特殊な会計を行っており債務は見かけ上40兆ですが、償還引当の準備金分を差し引くと負債は約28兆円(S14年)のようです)。
民営化のメリットはこれからの交通量のない路線建設や経営を引き受けないでもすむ事でしょう。
だだし高速ネットワークの完成はいずれ達成できたほうがよいわけで、コストを下げて直轄ででも行うというのは政府決定のとおりで納得できます。
2点目は「都会の企業や住民が払った税金や預貯金・保険料等の積立金をうんぬん」のくだりはわかりにくいですね。公団は主として郵貯を原資とする財政投融資からの借金で事業を行うわけで、郵貯からすると、すなわち国民からすると公団のような優良企業(今までのところ)に貸し出すことはいいことでしょう。いかがでしょうか?
公団の会員の方のご意見もお聞きしたいと思います。(森靖之)

ユーザー sanaka の写真

#439にあるような、公団の財政が破綻状態にある、というのが国民に与えられた誤った観念であると思う。#440にあるように現時点で高速道路の建設を中止し、供用中の道路を運営するだけであれば、公団はきわめて優良な企業となる。ただ、#440にある「交通量のない路線建設」を民営化会社が引き受けないというのは、企業経営としては正解であろうが、社会資本整備としては必ずしも正解ではないのではないか。債務の返済と新規建設をバランスをとりながら、運営していくのが、公的施設を整備・管理する機関としての責務ではなかろうか。 佐中 忠

ユーザー 匿名投稿者 の写真

森靖之です、#443佐中忠さんのご意見ごもっともです。
国鉄民営化して切り捨てられた赤字の生活路線のことが思い出されます。
ただし、従来の公団方式では、公団が「建設大臣の命令ですから」と、当事者責任を回避することも可能であることは問題ですが。
いずれにせよ有料方式の活用を最大化することが、国民にとっても良いのだということもポイントですね。
その意味から、道路会社が利潤追求を行なうことになる、「一部上場を目指す民営化」など論外で国民を愚弄する議論だと思います。

ユーザー 宮田 卓 の写真

一つだけコメントします。

大都市圏の社会資本に重点投資すべきことは全く賛成ですが,大都市の道路ほど建設費の高いものはありません。採算性のみで判断すると,便益は極めて大きいが採算性の低い,外環や中央環状線などが真っ先にストップをかけられます。

道路投資を採算性のみで判断していけないのは,地方も大都市圏も同じです。

ユーザー 岡崎康生 の写真

 道路は採算性のみで判断すべきでなく、経済社会的効果や地域開発の効果などを総合的に評価すべきだという、佐中さんの御意見に全面的に賛成します。
 私も、このサイトの中で昨年から、機会の有るごとに、同様の意見を申し上げてきました。漸く、私と全く同じ御意見を拝見して、嬉しい限りです。道路は、基本的な社会基盤施設だから、一般の企業のような採算性のみで判断すると、国の方向性を誤るという当然のことすら、最近の議論の中では忘れられているという点でも、私が申し上げてきたことと完全に一致します。
 このような、冷静な本質的な議論が、世の中でもっと広く行われることを、心より期待しています。

ユーザー ふくしま の写真

本サイトでは以下の記事で議論がなされています(ピックアップは意見交換広場からだけです)
道路は採算性だけでは判断できない【この記事】
道路公団民営化―採算性のみで議論してよいのか
高速道路の無料化について
道路関係四公団民営化推進委員会での議論について
高速道路に付加価値を付けるには

上記記事を読む限り、「道路は採算性だけで判断すべきではない」という認識は、このサイトで発言しているほとんどの人の共通認識であり、異論のないところでしょう。

また、「道路関係四公団民営化推進委員会での議論について」で紹介された土木学会誌2003年3月号の中村英夫氏の論説にあるとおり、

  • 路線の建設の必要性は可能な限り分析的に求めるべきであり、主観的あるいは政治的な評価によってその継続や中止が決められるべきではない
  • 分析的方法とは「経済的効果、財務的効率性、社会的効果を総合的に勘案して決定すること」
    ということについても、一般論として異論はないところだと思われます。

    これまで、本サイトでなされた議論をながめた私の感想は、「概ねどの意見にも賛成」というものです。
    採算性無視で道路公団が破綻、国民にツケが回るのはイヤですが、高規格道路は14000kmあるべきだと思います。
    通行料金は建設費や償還にまわした方が良いと思いますが、消費者的には料金無料化は魅力的です。
    国土交通省の新直轄方式と民主党の料金無料化の違いがよくわかりません。
    TDMとしての通行料金もケースバイケースだと思います。

    土木技術者としては、非常に無責任なコメントだと我ながら思いますが、こうなった理由は

  • 各意見はそれぞれで最適化理論でいう目的関数と制約条件を独自に想定している
  • 私が分析的・客観的なデータや国際的感覚を持ち合わせていない
    以上のようなことからだと考えます。

    経済的・財務的・社会的な観点で、様々な目的関数が世の中には存在することは明らかです。
    ではそれらをどうやって総合的に勘案して最適化するか、という議論があまりなされていない印象です。

    では、私の考えは?と言われれば「わからない」というのが本音です。
    客観的な分析データを一通りそろえて、それらの優劣についてひとつひとつ判断していくことになるのかと思います。
    が、様々な基準で評価されたものを、誰がどうやって比較して決定するのか、困難なことでアイデアがありません。

    本サイトでの文章の記述だけの議論には限界もありますし、問題の要因が多岐にわたることから、議論が発散してしまうことはあるかもしれません。そもそも、この場で収束させる必要もないのかもしれません。
    しかしながら、最終的には必要な議論であると考えています。

  • ユーザー 岡崎康生 の写真

     福島さんのご意見は誠にそのとうりであり、世間の大多数の国民の「感覚」を、代表するものであろうと思います。
     国民の大多数は、当然、道路整備はまだまだ必要だと思っていますし、その反面、出来れば「無料」にしてもらえれば有難いと思っています。また、税金は出来るだけ安くして欲しいと思うのも当然ですし、国の債務は少ないのが良いに決まっています。しかし、そんな国民の「願望」を、全て満足する「解」は絶対に存在しません。現在我々が置かれている、諸々の制約条件の中で、私たちは、何れかの「解」を選択しなくてはならないのだと思います。
     そこで、福島さんの御指摘の通り、「客観的データ」が重要になってくるのだと思います。役所の皆さんには、「客観的データ」をもっと解りやすくドンドン出して頂き、国民も、それを基に真剣に悩んで、「正しい解」に到達して欲しいものだと思います。
     私は、我が国の将来のため、今は歯を食いしばってでも、社会基盤整備を進めるべきだと、一貫して主張させて頂いています。